中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

若者は「お店」を開きたがる。タオバオネイティブ世代の起業に対する考え方

まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。

明日、vol. 172が発行になります。

登録はこちらから。

https://www.mag2.com/m/0001690218.html

 

今回は、タオバオネイティブ世代についてご紹介します。

 

タオバオネイティブ世代というのは、アリババのEC「淘宝網」(タオバオ)が物心ついた頃にはあったという世代です。タオバオが登場したのは2003年なので、20代前半以下の世代を指します。世間でよく言われるZ世代とほぼ重なる世代です。

タオバオネイティブ世代の大きな特徴は3つあります。

1)ECが小売チャンネルとしてあたりまえの世代

物心がついた時にはECがあり、ECで商品を買うのがあたりまえになっています。私たちが「商品はお店で売っている」と考えるのと同じくらい自然に「商品はネットで買える」と考えています。

2)人生の成功はお金ではなく、自由になる時間の多さ

これはZ世代に共通する考え方ですが、人生の成功とはお金持ちになることではなく、好きなことができる時間の多さだと考えています。と言っても、お金が欲しくないということではありません。高級車に乗る、別荘を持つといった生活を実現するのに、1年365日、強いプレッシャーだけでなく上司のパワハラにも耐えて働くことに価値を見出せないということです。最も理想なのは、好きなことを商売にし、楽しい時間をすごし、それで余裕のある生活が送れる程度のお金を稼ぐという状態です。つまり、物よりも時間、物質よりも精神を重視しています。

3)起業志向が強い

正確な統計があるわけではありませんが、大学生の間ではかつてないほどの起業ブームになっています。ただし、起業といっても、日本の「起業」とはずいぶん趣きが違います。日本の起業は、いまだに、ベンチャーキャピタル(VC)の人か、成功した経営者とつながり、資金を調達し、株式公開をねらうというものです。もちろん、これは悪いことではなく、素晴らしいことです。しかし、そのような起業で成功できるのは、時間のすべてを起業に注ぎ込んだ人のうち、ごくわずかな運にも恵まれた人だけです。大半の人は毎日パーティーセミナーに出席して、集めた名刺の数やSNSでつながった著名人の数を競い合うだけのサークル活動で終わってしまいます。

タオバオネイティブ世代の起業は「お店を開く」です。それは実店舗でもタオバオ店舗でもかまいません。そして、上場できるほどの売上をあげるのではなく、余裕のある生活ができる程度の売上を目指します。

 

日本の起業志向の方々と、中国のタオバオネイティブ世代の起業の最大の違いは、どのビジネスをするかという問題です。日本の起業を目指している人に「どのようなビジネスを考えているのですか?」と尋ねると、90%以上の人が「今、効率のいいビジネスを探している最中です」と答えます。つまり、起業が先にあり、ビジネスは後で考えるという発想です(ただし、現在の大学生の中には、環境や社会問題で課題を感じ、それを解決する方法としてNPOではなく起業を考える人たちも増えてきています)。

一方、タオバオネイティブ世代は、先にビジネスがあります。ビジネスというよりも自分の好きなものがあります。例えば、コロナ前に大量に登場したのが、漢服、JK制服、ロリータ服の販売です。アニメやゲームの影響で、この3つの衣料は、コスプレ用やパーティー用を超えて、室内着や外出着としても広がりを見せています。この辺りの事情は、「vol.085:成長するオタク市場の「三坑アパレル」。JK制服、漢服、ロリータが人気の中心」でもご紹介しました。

このような二次元アパレルは、ファン世代の人がタオバオなどに店舗を盛んに開くことで広がっていきました。販売業者である前に、自分もファンであるために、購入者とのコミュニケーションも活発になります。それで二次元アパレルのファンが増えていき、ビジネスが軌道に乗るということが起こりました。このような人たちがたくさんいたため、現在では二次元アパレルは大きな産業に成長をしています。

今回は、タオバオネイティブ世代の起業例をご紹介し、起業に対する考え方が大きく変わってきたことをご紹介します。

 

続きはメルマガでお読みいただけます。

毎週月曜日発行で、月額は税込み550円となりますが、最初の月は無料です。月の途中で購読登録をしても、その月のメルマガすべてが届きます。無料期間だけでもお試しください。

 

今月、発行したのは、以下のメルマガです。

vol.170:米国議会はTikTokの何を問題視したのか。張一鳴の発想とUGCの衝突vol.171:中国はChatGPTに負けてしまうのか。中国の生成AIの実力はどの程度なのか