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若者のセール離れが起きている。一方、中高年はEC利用が急増

若者のECセール離れが起きている。SNSでは「不買年」という活動が注目を浴びている。あるジャンルの商品を買わないと決めて、何日間持続できるかを報告し合うというものだ。一方で、中高年の間ではEC利用が大きく伸びている。EC利用者の世代構成が大きく変わろうとしていると半島都市報が報じた。

 

セールに背を向ける若年層、熱くなる中高年

アリババが始めた11月11日のビッグセール「独身の日」(ダブルイレブン)も14年目となり、大きな変化が生まれている。数年前までは、市民全員がこの日を楽しみにし、11月11日の午前0時から一斉に注文を入れるというお祭りの日だったが、コロナ禍もあり、多くの消費者が冷静さを取り戻し、理性的消費をするようになっている。

しかし、その変化は世代によって大きく異なっている。90后(90年代生まれ、30歳前後)は、「割引戦略が複雑すぎて考えたくない、午前0時には買い物をするより早く寝たい」というものだ。一方、60歳以上の銀髪族は「買えないものはない」とスマートフォンの小さな字を読むために拡大鏡を使い、午前0時から買い物に夢中になるようになっている。

 

Z世代に流行する「不買年」

さらにZ世代の間には奇妙な流行が起きている。「不買年」というもので、あるジャンルの商品を1年買わずにすごすことに挑戦をするというものだ。若い世代に人気のSNS「小紅書」(シャオホンシュー、RED)では、このような投稿が770万件を超えている。

お金の節約というよりも、モノの節約に目覚めている人が増えている。例えば、靴もすでにいくつか持っていれば、それが履けなくなるほどくたびれなければ新しいものを買わない。カバンも3つ持っていれば、それがだめになるまで新しいものを買わない。スマートフォンも故障するまで買い替えない。こうすることで、モノを大切にするようになり、新しいものを買う時にはじっくりと考えるようになり、買い物の楽しみも大きくなるのだという。

このような「買わない」報告をSNSにあげることで、同じ思いを持った人との交流が生まれている。

SNS「小紅書」には、不買年に関する投稿が770万件を超えている。あるジャンルの商品を1年間買わないことに挑戦をするというものだ。

 

セール疲れを起こしている若者世代

このような「買わない」行動が生まれたのは、ライブコマースが常態化をして、セールも一年中どこかで行われているという状況に嫌気がさしているということがあるかもしれない。常にどこからから「買わないと損をする」という圧力がかかっているのだ。

しかも、大幅割引されると言っても、よく考えないと損をすることも増えている。例えば、あるブランドの化粧水135mlセット(オリジナル75ml+サンプル60ml)が1150元で販売されている。オリジナル75mlの通常価格そのままで、サンプル品がつくのでお得だというものだ。しかし、近所のショップでは100ml×2が1398元で通常販売されていて、海外系のECでは1279元で販売されている。ブランドショップは元々の価格が高く、大幅割引をしても、他のショップよりも割高なのだ。

 

不買年を始めると時間という報酬が得られる

このような煩わしさから、昨年2022年の11月11日、セールを無視して寝る若者が続出した。翌日になり、ショッピングカートが空であり、支払い履歴も空であることに開放感を感じたという若者が少なくない。これを機に「不買年計画」を始める人もいる。

特に引越しの時に、自分の生活を顧みる人が多いようだ。引越しの準備で荷物の整理をすると、使わなかったものや自分でどうしてこんなものを買ってしまったのかと不思議になるようなものが大量に出てきて、それを捨てなければならない。このようなものを買って、貯金をすることもなく、買った商品を使うこともなく、いったい自分は何をしているのかと呆然となるのだという。

不買年を始めると、生活が大きく変わる。宅配便の受け取りにあれこれ連絡をする必要もなくなり、そもそもスマホを使う時間が大幅に減る。空いた時間に本を読んだり、散歩をしたりすることで、人生が豊かになったように感じることができる。ネットショッピングの泥沼から抜け出したような爽快な気分になれる。

▲「1日にひとつモノを捨てる」ということを指南したシンプルライフ入門書。記録ノートつき。このような断捨離系の書籍が好調に売れている。

 

反消費者活動者の拠点「消費主義の逆行者」

ネット掲示板「豆弁」(ドウバン)には「買ってはいけない。消費主義の逆行者」というグループがある。2020年10月に設立をされ、34万人以上が参加をしている。ここでは、販売業者がセールで行うさまざまな悪徳手口が紹介されている。例えば、あるケーブルは平常時339元で販売されていたが、11月11日のセールの直前になぜか389元に値上げをされ、そこから大幅割引をされ294元で販売された。

ある椰子の実は9個入りの箱が平常時では69.9元で販売されていた。しかし、セールの前に99.9元に値上げされ、セールでは「3箱で239.76元」で販売された。1箱あたり79.92元で一見20元も割引されたように見えるが、セール前の価格から見ると10元も高くなっているのだ。そもそも3箱の椰子の実=27個など食べ切れる人はどれだけいるのだろうか?セールはお買い得ではなく、浪費を促しているのだ。

ネット掲示板「豆弁」では、消費主義の逆行者というグループが生まれている。ここでは、販売業者がセールで行うさまざまな悪徳手口の情報が交換されている。

 

一方、中高年はセールを楽しむ世代ギャップ

一方で、中高年は以前よりもECを使うようになっている。「第49次中国インターネット発展状況統計報告」によると、2021年の60歳以上のインターネットユーザーは1.19億人となり、自分一人でECで買い物をすることができると答えた人の割合は52.1%となった。

「2021年中高年利用者オンライン消費報告」によると、コロナ禍の影響もあり、中高年のEC利用額は2020年の5.8倍となった。中高年にとって不便な外出をすることなく、買い物ができるECの利用が拡大をしている。

中高年はどうしても買い物をする店が固定化をしてしまう。そのため、いつも販売されているものしか買うことができなくなっている。しかし、ECであれば、売っているのを見たこともないような商品が簡単に買える。

ECの売上は現在のところ大きな変化はないように見えるが、その顧客の年齢構成は大きく変わってきている可能性がある。