中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

長沙市発の茶顔悦色が南京市に初出店。5時間並ぶ盛況ぶりの成功の鍵は「本土化」

長沙市発の中国茶カフェ「茶顔悦色」が南京市に初出店し、大盛況となった。しかし、茶顔悦色は南京に出店する前に、丁寧に南京市民に挨拶をするかのような事前プロモーションを行なってきた。この本土化が成功の鍵になったと飲品界が報じた。

 

長沙市の茶顔悦色が南京市に初出店

湖南省長沙市から始まった中国茶ドリンクチェーン「茶顔悦色」(チャーイエンユエスー、http://www.chayuanyuese.com/)が2022年9月30日に、江蘇省南京市に初出店をし、想像以上の盛況となった。

あまりの人気となり、朝4時から店舗前に並ぶ人が現れた他、1杯200元で行列に並ばなくても商品を転売するというダフ屋も登場した。行列に並ぶ人が商品を購入できるようになるまでは最大で5時間かかったという。

このあまりの盛況ぶりに、南京市公安局はウェイボーの公式アカウントで、行列の状況を発信し、現在警察が行列に整理にあたっているが、これから来ようと考えている人は日をあらためて欲しいと告知をした。

また、開店前からオーダーを取り始めたため、開店5分前にすでに売れ切れる商品が出る事態となり、開店後30分でいったん臨時閉店をするなどの混乱も生じた。

▲南京市の開店初日の様子。最大5時間並んだ人も。ダフ屋も現れ、南京市公安局はSNSで日を改めて来店してほしいという異例の呼びかけをすることになった。

▲あまりに行列が長くなったため、転売をするダフ屋も登場。転売商品を買わないようにお願いをする茶顔悦色の掲示も設置された。

▲南京公安局は、茶顔悦色の行列の整理にあたっているが、それでも人が増えるため、ウェイボーの公式アカウントで現場の写真を掲示して、日を改めて来店することを呼びかけた。

 

南京初出店で行った4つのこと

茶顔悦色が南京初出店ということもあったが、茶顔悦色は南京出店のためにさまざまな手を打っていた。南京の消費者とあらかじめ距離を縮める施策を行い、それが功を奏したため、過剰なまでの人気となった。

茶顔悦色がオープン前に行った施策は主に4つある。

▲南京市は江蘇省省都である1000万人都市。中国4大古都のひとつであり、南京人は地元にプライドを持っている。

 

1:地元の牛乳メーカーと提携

茶顔悦色は出店前に、南京市の牛乳メーカー「衛崗牛乳」と提携することを発表した。衛崗牛乳は、南京市では有名な牛乳メーカーで、南京市内のスーパーやコンビニでは必ず並んでいる商品だ。

食材として調達するというだけでなく、茶顔悦色と衛崗牛乳のコラボにより「茶顔悦色」の製品が生まれているというコンセプトでキャンペーンを展開した。また、茶顔悦色店内でも衛崗牛乳を販売し、茶顔悦色の茶葉と衛崗牛乳を購入すれば、自宅でDIYで茶顔悦色のドリンクがつくれるというキャンペーンも行った。

南京市民になじみのある飲料ブランドと提携をすることで、消費者の目を惹き、安心感を持つことにつながった。

▲南京で有名な牛乳メーカー「衛崗牛乳」。南京市民になじみのある牛乳を使うことをアピールした。

 

2:徹底した地元化

茶顔悦色は、南京に出店するにあたり、新参者として丁重な挨拶をしている。カップには「寧と知り合えて光栄です」というコピーを使った。寧というのは南京市の略称のことで、南京市民であれば誰でも知っている言い方だ。「南京と知り合えて」ではなく、「寧と知り合えて」と書くことで、南京の消費者は親しみを感じる。また、寧は「あなた」の丁寧な言い方と音が同じであるため、一種のしゃれ言葉にもなっている。

さらに、販売商品に入れる説明書などには、南京の名勝地のイラストを入れた。また南京の名勝地のイラストを使ったペーパーバッグ、マグカップ、扇子、マスクなどを限定販売した。このような南京グッズが欲しいがために、店舗の行列に並んだ人も多い。

カップも南京市民に対する挨拶のメッセージが入った特別パッケージが採用されている。

▲茶顔悦色は、販売商品に南京市の名勝地や文化を取り入れたカードを入れた。

▲茶顔悦色が配布をしたコラボグッズ。「知り合いになれて嬉しい」「いい友達になりたい」など、南京市民に対する礼儀正しい挨拶文が書かれている。

 

3:南京のことを理解した出店場所の選定

南京市に出店する際、茶顔悦色は新街口という場所にこだわった。南京市には現在、大きな繁華街が5ヶ所あるが、新街口はその中でも最も古い繁華街で、100年以上の歴史があり、かつては「中国でいちばん賑やかな繁華街」と言われたこともあった。

その南京市民の心に響く場所に出店をすることで、南京の消費者の心をつかんだ。

 

4:開店前からSNSで発信

茶顔悦色は、開店前からSNSの公式アカウントで発信をし続けた。その内容も、一方的な企業のプレスリリースのようなものではなく、茶顔悦色という1人の人格が思いを綴るとったスタイルで、多くの南京ネット民が好意的な反応をした。

例えば、最初の発信では、南京に出店することを、大学に入学にした時にいろいろな地方からきた同級生と同室になることになぞらえ、育った環境の異なる人同士が期待感と不安感の中で互いを理解しあっていくことに例えている。

担当者が個人の意見を述べているのではなく、クリエイティブチームが計画的に文章をつくってはいるが、読んだ人の心が動かされる内容になっている。

これにより、開店前には公式アカウントのフォロワー数は10万人を超えることになった。

▲茶顔悦色のSNSでの発信。公式の硬い文章ではなく、一人の人が語るような口調で南京への新規出店を伝えている。「南京に行くのは、大学に入学していろいろな場所の出身者と寮の同じ部屋で暮らすようなもの」と例え、不安と期待を表現している。

 

他都市展開に必要な「本土化」

茶顔悦色は武漢に出店する際にも、このような「本土化」施策を行い、出店を成功させている。中国は都市によって文化が異なり、飲食習慣も大きく異なっている。また、多くの市民が自分の都市を愛し、プライドを持っている。そこに「北京で人気の」「上海では誰もが利用する」という入り方では、関心を持ってもらうことが難しい。

茶顔悦色の手法は、古代の中国人のように礼儀をつくし、丁寧に挨拶をしてから、門をくぐるようなやり方だ。この手法が成功した。