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ひとつの都市に集中出店することで、全国的な認知度をあげる中国茶カフェ「茶顔悦色」

中国茶カフェ「茶顔悦色」は湖南省長沙市の顔となるほど、全国でも知られるようになっている。長沙市に集中出店することで希少価値があがり、他都市に出店をすると長い行列ができる。その茶顔悦色がいつ全国展開をするのかが注目されていると熱門科技彙が報じた。

 

ひとつの都市に集中出店することで全国的認知度をあげる

中国茶ドリンクのチェーンでは、「喜茶」(シーチャー、HEY TEA)、「奈雪的茶」(ナイシュエ)などの高級系カフェ、「古茗」(グーミン、Good Me)、「茶百道」(チャーバイダオ)、「Coco奶茶」などのコストパフォーマンス系カフェ、「蜜雪氷城」(ミーシュエ)などの激安系カフェがひしめき合っている。

その中で、独特のポジションを保っているのが「茶顔悦色」(チャーイエンユエスー)だ。

茶顔悦色は、2013年に湖南省長沙市で創業をした。多くのチェーンが、全国展開を目指す中で、茶顔悦色はなかなか長沙市の外に出ず、長沙市の中で集中出店をしていった。現在では重慶市湖北省江蘇省などにも展開をしているが、華中地区に限定をされており、長沙市中心であることは変えていない。しかも、長沙市ではいまだに朝方の開店前から行列ができるほどの人気を保ち、湖南省を訪れた観光客も一度は行く店になっている。沿岸の大都市の人は、近所に店舗がないために飲んだことのある人は少ないものの、若い世代は茶顔悦色の名前を知っている。地域チェーンながら、全国的な認知度は非常に高い。茶顔悦色は、全国区に進出せず、華中地区に意図的に集中出店している。

長沙市の茶顔悦色の店舗。週末には行列ができるのが普通。地元民から愛されているほか、わざわざ茶顔悦色を利用するために旅行をしてくる人多い。

 

長沙市の中でも高密度出店をする

長沙市の中でも、集中出店をしている。現在、総店舗数は542店舗で、長沙市には270店舗がある。しかも、高密度出店が行われている。繁華街には1つの通りに10店が出店されている。コンビニ並みの集中出店なのだ。

これは2つの意味を持っている。ひとつは長沙市に特化をしたチェーンであることは知られているため、長沙市の顔としての存在感を示すためだ。長沙市民は、地元愛から他のチェーンよりも茶顔悦色を好むようになっている。

もうひとつはサプライチェーンの効率向上だ。茶顔悦色は個人経営の茶館から始まっている。このような個人経営の店舗が支店を広げようとすると、まずつまづくのがサプライチェーンだ。長沙市内では仕入れ先を確保しているもの、例えば遠く離れた北京市に出店をしたら、北京市で新たな仕入れ先を見つける必要がある。多くのチェーンは、この段階で、こだわりのある原材料から標準品質の原料へと切り替え、効率化を図るためブランドの個性を失っていくことになる。茶顔悦色は、集中出店をすることにより、品質の高い原材料、サプライチェーンの効率、適正価格での販売のバランスを保っている。

▲茶顔悦色の出店状況。湖北省重慶などにも出店しているが、基本は湖南省長沙市の外には出ない。これが希少価値となり、全国での認知度は高い。

 

中国茶に中国文化を合わせる王道で成功

茶顔悦色のもうひとつの特色が、中国要素を全面に取り入れたことだ。中国茶カフェは、扱っている商品は中国茶であるものの、チェーンのイメージは海外に頼っていることが多い。HEY TEAは香港であり、Cocoは台湾であり(台湾生まれのチェーン)、奈雪的茶は日本のイメージを取り入れていた。中国茶に海外文化のイメージを掛け合わせることで、ブランドの特色を出している。

一方、茶顔悦色は中国茶×中国文化で、モダンチャイニーズというコンセプトを打ち出して成功をしている。カップでも、多くの中国茶カフェがモダンなデザインのものだったり、楽しいコミック風のデザインであるところを、茶顔悦色のカップには水墨画など中国の伝統絵画のイメージが採用されている。

これが、若い世代に起きているトレンドである「国潮」ともマッチをした。国潮は、中国製品への回帰のことで、そこに行き過ぎた愛国心からくる海外製品排斥のような感覚はない。中国製品の品質が上がってきているため、多くの世代で、ごく自然に中国製品を選ぶようになっている。さらに、若い世代では、伝統文化を再発見する動きも加わる。中国は、1970年前後に文化大革命という暗い時代があり、封建主義と資本主義が目の敵にされたため、貴重な文化遺産の多くが破壊され、伝統文化の断絶が生じている。そのため、若い世代にとっては中国の伝統文化は、ある意味新鮮に感じられた。中国の伝統衣装である漢服なども日用に着られるようになったり、骨董品、伝統ブランドなどに人気が出ている。

茶顔悦色は、中国伝統文化を新しい視点で再評価するブランドとして根強い人気が出ている。

▲茶顔悦色は、中国茶×中国文化という盲点になっていたブランド構築を行い、これが若い世代に受けた。

▲店舗も中国風を基本にしている。中国の伝統文化を知らない若い世代にとっては新鮮に映っている。

 

注目される茶顔悦色の全国展開

茶顔悦色は、価格帯としては中級チェーンに属している。しかし、集中出店によるコスト削減により、お茶の品質は高級チェーンに肩を並べている。これにより、高級チェーンに対しては価格、低価格チェーンに対しては品質という強みを発揮することができている。

中国茶チェーンの中では、最も強いブランド構築ができているのが茶顔悦色だと言われる。問題は、茶顔悦色が華中地区を出て、全国展開をどのような形で進めるのかだ。全国に店舗展開をしていくという手法は、茶顔悦色の個性を失わせてしまうことになる。しかし、その強いブランド力を活かして、食品系のEC販売をすることはじゅうぶんに考えられる。中国茶カフェ業界では、茶顔悦色がどのような形で全国展開をするのかが注目の的になっている。

江蘇省南京市に初出店をした時は、警察が行列の整理にくるほど人が殺到した。最大5時間待ちとなった。