各市政府がコロナ禍からの経済回復の決め手としているのが、市主催のバーゲンセールだ。しかし、セールは長期化をし、効果が薄まり、効果が薄いのでさらに長期化をするという悪いスパイラルに入り始めていているとCBNData消費駅が報じた。
5月5日のセールが延期をされ7月末に開催
今年2022年7月末に、上海市は第3回「上海五五購物節」を開催した。購物節はバーゲンセールのこと。上海市政府が中心となり、各小売業、ECが参加をしてセールを行う。
五五節は、本来は5月5日に開催されるはずだったが、新型コロナの感染再拡大などがあり、7月末に延期となっていた。全体で十二の活動、市内の16ヶ所でさまざまなイベント、セールが行われる。
例えば、そのひとつである上海コーヒー文化ウィークでは、静安寺と南京西路の商業地区に、上海のカフェの出店が集合し、さまざまなコーヒー関連のイベントが開催された。その中で、手頃な価格で美味しいコーヒーが飲めると人気になっている「Manner」は無料でコーヒーを振る舞った。
セールを行う都市には小売店が集まる
このような市全体で行うセールは、開催中の小売店売上を押し上げる効果もあるが、市全体の経済を浮揚させる効果がある。
上海市が五五節を始めて3年目になるが、その効果は着実に表れている。2021年、上海には各ブランドの初出店旗艦店が1078店舗あった。その中でアジア初出店が14店、中国初出店が167店になる。2022年上半期にはこのような初出店が366店舗増え、特に五五節が開催される7月には1カ月で130のブランドが初出店旗艦店を出店した。
変わるセールの伝統
しかし、一方で、セールの効果は確実に薄れている。なぜなら、セールの数が増え、しかも1つのセールの期間も長くなってきているため、多くの消費者が一年中毎日どこかでセールをやっている感覚になってきているからだ。
中国のこのようなセールは、すでに唐の時代には存在した。寺院の縁日にお店が集まる「廟会」「廟市」と呼ばれるものだ。そのため、近代になっても、セールというのは暦に基づいて行われるのが常識だった。春節、元宵節、端午節、七夕、中秋節などの時期にセールが行われる。
しかし、21世紀に入ってECが台頭をしてくると、このような暦の伝統とは無関係な時期にセールが行われるようになった。最も有名なのはアリババの11月11日の独身の日セールで、この日に定められた理由はさまざまあるが、同期間に他のセールがなく、効果が高いというのが最も大きな理由だ。京東(ジンドン)が始めた6月18日のセールも、京東の創立記念日ではあるものの、その期間に他のセールがなく効果が期待できるということが大きかった。
ECの台頭、コロナ禍で長期化をするセール
これに対抗するように、路面店が主体となるセールは長期化をしていった。当初は○○ウィークと称して1週間程度だったものが、ひと月になるのが常態化をし、3カ月というものも珍しくなくなり、中には6カ月というものまである。例えば、「約恵北京楽享生活」は2022年の3月1日にスタートし、12月末で続くセールだ。また、南京国際消費節は、春、秋、冬の3回あり、それぞれが1カ月から2カ月続く。
特に2021年からは、コロナ禍からの経済回復を目指す有力な手段としてセールが各都市で多用されている。
毎日がセールの中国
上海の五五節では、市内を16の区域に分け、その区域ごとに特色のある商品、テーマを設定した。これにより、ある区域ではコーヒー、ある区域では化粧品など異なるセールが行われ、多くの市民が上海市内のあちこちに出かけ、イベントと買い物を楽しんだ。
セールそのものが「毎日セールをやっている」状態に近づいてきている今、このような地理的な区分も取り入れて、「今週末はここ、来週末はあそこ」という形でのセールの状態化を考えていく必要がある。
いずれにせよ、セールは年中行われる常態化の状態にすでになっている。本来は、「その時だけ特別安い価格で提供する」ということで消費を刺激していたのだから、常態化をすれば効果がなくなるのは当然のことだ。EC、路面店ともに、セールの形をもう一度考えなければならない時期になっている。