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頭打ちになる中国カフェ業界に新たな商品が登場。中国茶とコーヒーをブレンドした「茶咖」が人気に

スターバックスのようなカフェ、喜茶のような中国茶カフェが伸び悩みを見せる中で、中国茶とコーヒーをブレンドした新たな飲料が人気になっている。コーヒーの酸味や苦味を中和させ、季節の香りを楽しめる茶咖飲料だ。伸び悩むカフェ業界の突破口になる可能性があると珈門が報じた。

 

激化をするカフェチェーン競争

中国のドリンクチェーンに新しい流れが生まれている。コーヒーを中心にしたカフェチェーンは、常にスターバックスがリードをし、そこにモバイルオーダーを基本をした瑞幸珈琲(ルイシン、ラッキンコーヒー)が急成長をし、激しい競争をしている。現在、ラッキンコーヒーが7846店舗(2022年9月末時点)、スターバックスが6019店舗(2022年末時点)だが、スターバックスは2025年までに300都市9000店舗の規模の布陣にすると宣言し、さらに出店競争が進む。

また、北京や上海の大都市には、スペシャルティコーヒーを提供する高級カフェが続々と登場している。価格はスターバックスの2倍ほどし、高級品質の豆を使うために大量調達ができず、チェーンとしては大きくすることは難しいものの、多数の高級カフェが登場したことにより、スターバックスの顧客が奪われている。

また、街中では、ケンタッキーフライドチキン(KFC)、マクドナルドなどのファストフードチェーンがコーヒーを低価格で提供し、コンビニも低価格でコーヒーを提供している。

コーヒーは、高価格帯から低価格帯まで、プレイヤーが多すぎて過当競争の時代に入っている。

 

カフェに新しい流れ。中国茶+コーヒーのミックス飲料

一方、中国茶をベースにしたタピオカミルクティーなどの新中国茶カフェも競争が激化をしている。喜茶(シーチャー、HEY TEA)、奈雪的茶(ナイシュエ)などを筆頭に、タピオカだけでなく、フルーツやクリームチーズなどとアレンジをした中国茶ベースのドリンクが人気になっている。

ところが、このコーヒーと中国茶という2つの流れが融合しようとしている。コーヒーに中国茶をフレーバーとしてミックスした新しいドリンクが人気になってきているのだ。

スターバックスが発売した「山茶花カフェラテ」。カフェラテに山茶花烏龍茶がブレンドしてある。これが茶咖飲料のブームに火をつけた。

 

香港で飲まれていた中国茶コーヒーミックス

香港では、以前から中国茶とコーヒーをブレンドした「鴛鴦茶」という飲料が親しまれている。鴛鴦とはオシドリのことだ。東洋人は、コーヒーの旨みは好きだが、酸味が苦手な人が多く、また苦味も苦手にする人がいる。中国茶ブレンドすることにより、このような酸味と苦味が中和され、さらに香りもよくなる。

昨2022年3月には、スターバックスが「山茶花カフェラテ」の提供を始めた。山茶花烏龍茶とカフェラテをブレンドしたもので、これが話題となり、さまざまなカフェチェーンでコーヒーと中国茶ブレンドしたメニューが提供されるようになっている。

また、中国茶ドリンクチェーンの「茶顔悦色」(チャーイエンユエスー)は、中国茶+コーヒーのサブブランド「鴛央珈琲」(ユエンヤン)を立ち上げ、湖南省長沙市に12店舗を展開している。この他、多くのカフェチェーンが中国茶+コーヒーの新飲料を提供するようになっている。

このような中国茶とコーヒーをブレンドした飲料は「茶咖」(チャーカー)と呼ばれる。茶は中国茶、咖は珈琲(コーヒー、中国では口へんの咖啡を使う)のことだ。

▲茶顔悦色のサブブランド「鴛央珈琲」の店舗。長沙市で12店舗を展開。コーヒーを中国式にアレンジをした飲料が、コーヒー+中国茶の茶咖飲料だ。

▲茶顔悦色のサブブランド「鴛央珈琲」のコーヒー+中国茶の茶咖飲料。スターバックスと鴛央珈琲が茶咖飲料のブームに火をつけた。

 

続々登場する茶咖専門カフェ

例えば、四川省成都市の「加飲」(ジャーイン、Plus In)では、四川省に10店舗を展開し、売上の半分以上は茶咖メニューになっている。シングルオリジンのコーヒー豆を使ったエスプレッソとブレンドをするため、味がいいと評判になっている。

加飲の「成都鴛鴦ラテ」は、成都産のジャスミンティーを使い、1日に1店舗で300杯以上が売れ、合計20万杯がすでに売れた。

加飲の研究ディレクターの鄒倩蓮氏は、珈門の取材に応えた。「2017年に提供を始めた成都鴛鴦ラテが非常に好評だったため、その後、バンコク鴛鴦、凍齢鴛鴦、プーアールラテなどの茶咖飲料も人気になっています」。

湖南省長沙市では、藍嘴獣珈琲(ランズイショウ)が8店舗を展開し、売上の4割が茶咖飲料になっている。人気なのは「白桃茶咖」で、白桃烏龍茶をベースにしたもので、最高で1店舗318杯が売れている。また、ダージリン茶咖も桜の花のような香りがすると人気になっている。

また、陝西省西安市には茶咖飲料専門の「素珈琲」(スーコーヒー)も登場している。中国茶アメリカン、中国茶とカフェラテ、中国茶とドリップコーヒーを合わせたメニューが用意され、多くのメニューが20元台で販売されている。

▲藍嘴獣珈琲の茶咖飲料。花びらなどをトッピングし、コーヒーをベースにしながら中国茶などの香りを楽しむ飲料になっている。

▲加飲の茶咖飲料。通常のコーヒーも出しているが、売上の半分以上は茶咖飲料になっている。

▲茶咖飲料専門の「素珈琲」のメニュー。すべてのメニューが、アメリカン、エスプレッソ、ハンドドリップコーヒーと中国茶とのミックス飲料になっている。価格も20元台でありカフェとしては標準的。

 

カフェの次の成長商品として期待される茶咖

この茶咖飲料は、今後のカフェチェーンの主力商品になると業界関係者から期待をされている。コーヒーに関しては過当競争となり、中国茶に関しては値上げによる客離れが起き、どこのチェーンも苦境に立たされている。そこに、多くの人にとって味わったことのないテイストの新飲料が登場することは、カフェチェーンの次の成長曲線を描く起爆剤になってくれるかもしれない。

元々、中国茶は味ではなく、香りを楽しむ飲み物で、中国人は食べ物や飲料の香りにこだわる人が多い。茶咖飲料は中国茶、ミルク、コーヒーの香りを同時に楽しめる飲料で、うまく調和をさせることができれば、広く受け入れられる可能性が高い。そのため多くの茶咖飲料が、烏龍茶やジャスミン茶などの爽やかな香りがする中国茶をベースとし、コーヒーの重たい香りとブレンドさせることを狙っている。

 

若い世代に定着する早C午Tスタイル

若い世代では、「早C午T」という飲料習慣が根づこうとしている。中高年の飲料習慣は「早C晩A」と呼ばれていた。午前中にコーヒーを飲み、夜になるとアルコールを飲むという意味だ。午前中に1杯か2杯のコーヒーを飲めば満足をしてしまう。

しかし、若い世代は「早C午C」で、朝から晩までコーヒーを何倍も飲み、夜はアルコールを飲まないという習慣になっていった。しかし、最近は、1日に何杯もコーヒーを飲むと胃が重くなるといった感覚や健康上も問題があるという意識が広がり、「早C午T」で、午前中はコーヒー、午後は中国茶という習慣が広がり始めている。その中で、茶咖飲料は、コーヒーや中国茶飲料のサブメニューではなく、主力のメニューになる可能性もある。

また、コーヒーは季節による変化は少ないが、中国茶は季節による香りの違いがある。季節により、適切な中国茶ブレンドすることにより、茶咖飲料は季節を感じることができる飲料にもなる。

業界関係者は、タピオカミルクティー以来の大型トレンドになるのではないかと期待をしている。