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広がる後払い「BNPL」。東南アジアでの普及は、ECプラットフォームとの連携が鍵になる

ECとオフライン小売のシステムを構築できるパッケージサービス「SHOPLINE」が、シンガポールのBNPL「Atome」と提携した。東南アジアでは、銀行口座やクレジットカードの普及率が低いため、BNPLとの提携が大きな鍵になるとSHOPLINEが報じた。

 

欧州で広がるBNPL、東南アジアにも波及

クレジットカードやスマホ決済に続く、第3の決済手段であるBNPL(Buy Now Pay Later、後払い)が広がりを見せている。BNPLは、簡単な審査ですぐに利用をすることができ、クレジットカードの分割払いやリボ払いに相当するサービスを受けることができる。多くの場合、年会費、分割手数料、利子などはかからないか、きわめて低額だ。

「The Global Payments Report」(worldpay)によると、最もBNPLの利用が進んでいる欧州ではすでにオンライン決済の7.4%を占めるようになり、2024年には13.6%にまで増えると予測されている。

東南アジアでは、このBNPLが期待を集めている。BNPLはオンラインアカウントのみで利用を開始することができ、銀行口座を持たない人の割合が高い東南アジアの若年層での利用が期待をされている。

▲BNPLが最も浸透している欧州では、ECでの決済の7.4%がすでにBNPLになっている。すでに欧州では、EC決済で最もよく使われるのはクレジットカードではなく、スマホ決済になっている。「The Global Payments Report」(worldpay)より引用。

 

簡便な信用審査で使えるBNPL

なぜ、BNPLは、簡単な審査で利用ができるのか。クレジットカードのように信用情報を調査しないと焦げ付きという決済事故が頻発するのではないか。もちろん、その危険性はあるが、当初は利用できるショッピング枠を小さく設定し、使ってもらいながら、利用履歴という最も信頼できる信用情報を分析して、ショッピング枠を大きくしていく。これにより、決済事故が起きても、初期の小さな損害で済む。

決済手数料は販売をする加盟店側から徴収をする。どのくらいの料率であるかは公開されていないが、クレジットカードなどの料率よりも高いと見られている。

 

店舗側に業績使用改善の大きなメリット

では、加盟店側は、なぜ手数料の高い決済手段に対応をするのか。店舗の業績指標が大きく改善をするからだ。多くのEC利用者が、手元にお金がないという理由で購入をあきらめている。ローンを申し込むのは手続きが煩わしい、クレジットカードの分割払いなどでは高額の手数料が必要になる。さらにはクレジットカードなどのオンライン決済手段を持たない/持てない人もいる。そういう理由からあきらめてしまう。しかし、BNPLであれば、アカウントを作成するだけですぐに利用ができ、なおかつ分割手数料は必要がない。

このようなことからEC加盟店の業績指標が大きく改善される。BNPLで最大手のKlama(https://www.klarna.com)では、BNPLを導入すると「コンバージョン(購入率)が30%上昇」「平均客単価が41%上昇」するとアナウンスしている。EC加盟店にとっては、高い手数料を支払っても、それ以上の効果が得られることになる。

▲東南アジアは、銀行口座、クレジットカードの所有率は高くない。BNPLが有力なオンライン決済手段になると期待されている。シンガポール地下鉄でのAtomeの広告。

 

ECプラットフォームとBNPLの連携が始まっている

このBNPLを利用して、香港発のEC/オフライン販売サービスを提供するSHOPLINE(https://shopline.hk/)と、シンガポール発の領創集団(Advance Intelligence Group)のBNPLサービス「Atome」が提携をして、東南アジアに進出をしようとしている。

SHOPLINEは小規模から中規模の事業者に対して、ECの構築を容易にするパッケージを提供している。提供されているテンプレートに、商品情報などを入力していけば簡単にECが開設できるというサービスだ。また、オフライン小売の販売管理システムも提供され、オンラインとオフラインの販売を一括管理することができるようになる。

SHOPLINEの現在の顧客企業は、そのほとんどが香港と台湾だ。東南アジアに市場を拡大するためには、利用しやすい決済手段を提供する必要がある。香港と台湾では、銀行口座もクレジットカードも普及をしているため問題はなかったが、東南ジアに進出をするにはBNPLが必要になる。そのような理由でAtomeと提携することになった。

すでにAtomeは1万社以上に採用され、対応EC店舗は3万軒を突破した。SHOPLINEとAtomeの連合は、シンガポールインドネシア、マレーシア、ベトナム、フィリピン、タイ、日本、中国などに進出をし、これと香港と台湾を合わせて、アジアの10代市場をカバーしようとしている。