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欧州で進む後払い決済。ECのコンバージョンを改善するツールとして注目をされ拡大中

欧州でBNPL(Buy Now Pay Later、後払い決済)が急速に拡大をしている。ZARA、セフォラ、イケア、アディダス、ナイキ、ダイソンといったなじみのあるブランドがECでの販売にBNPLを適用し、アマゾンも後払い決済を提供するようになった。中国ブランドであるSHEIN(シーイン)、DJI、小米(シャオミ)などもBNPLに対応し、欧州での販売を拡大していると人人都是産品経理が報じた。

 

欧州で進むECの後払い決済

BNPLとはBuy Now Pay Later、いわゆる後払い決済だ。実際は、短期借り入れになるが、利息は非常に小さいか、0の場合もある。

Worldpayのデータによると、2020年の世界でのECの決済の2.1%がBNPLによるものだという。また、2024年には4.2%まで増加すると予測されている。欧州で最もシェアをとっているのはKlarnaで、シェアは13.6%。また、英国ではBNPLに利用が進んでいて、Finder.comの調査によると、4割の消費者がBNPLを利用したことがある。

▲後払い決済の最大手Klarnaはすでに日本にも進出し、主要ブランドの直販サイトなどで利用されるようになっている。

https://www.klarna.com/jp/

 

後払い決済が拡大する理由1:新型コロナの感染拡大の影響

BNPLが欧米で拡大している理由として挙げられるのは次の5つだ。

1つはやはりコロナ禍の影響だ。米国の場合、労働省労働統計局の年報によると、コロナ禍により、米国市民の可処分所得は9.5%低下をした。手持ちの現金が少なくなったため、BNPLが受け入れられている。

 

理由2:消費者の主力世代の若年化

BNPLの利用者を世代別に見ると、Z世代(95年以降生まれ、20代後半以下)のBNPL利用者は2019年には6%だったが、2021年には36%と急拡大をしている。ミレニアル世代(Y世代、80-95年生まれ、30代)が41%となっている。

このような若い世代は、社会信用も薄く、収入も低い傾向がある。そのため、クレジットカードが取得できない、取得できてもショッピング枠が少ないという問題がある。また、分割払いやリボ払いの利息が高い。決済事故を起こすと、銀行ローンなど広範囲に悪い影響を及ぼしてしまうなどの問題から、クレジットカードではなく、BNPLを利用する人が増えている。

 

理由3:気軽に利用ができるBNPL

BNPLの魅力はなんといっても利用開始が簡単だということだ。スマートフォンから申し込みをするだけですぐに利用ができる。また、個人の信用情報とは紐づけられないため、利用のハードルも低い。これにより、販売業者から見るとリピート購入に結びつけやすい。

 

理由4:支払いのプレッシャーが小さい

一般的なクレジットカードの場合は、引き落とし日に残高不足が起きると、カード会社から連絡がきて、話し合いの結果、再引き落とし日が設定され、その日に再び残高不足であると決済事故となる。個人の信用情報に記録をされ、他のローンや信用決済にも影響をしてくる。

しかし、BNPLの場合、引き落としができない、支払いを忘れたという場合でも猶予期間が与えられる。この場合、猶予手数料として7ドルから10ドル程度が必要となるが、信用情報に影響することはない。このため、気楽に利用ができる。

 

理由5:後払いなのに利息が0、または小さい

BNPLは後払いという信用決済であるのに、分割払い、リボ払いなどを使っても、利息がほぼ0、または極めて小さな手数料しか取られない。そのため、クレジットカードよりもお得であり、なおかつ手元の現金を減らさずに買い物をすることができる。

 

後払い決済が利息を取らない理由

BNPLが短期の信用決済であるのに、利息を取らずに運営できる理由は、EC側にとって大きなメリットがあるからだ。

世界のECで、商品を購入カートに入れたのに結局購入しないという「カゴ落ち」率は、平均して86%にもなる。これは消費者がいったんは購入しようと考えたのに、途中で購入を断念をしたもので、ECにとっては大きな改善ポイントだ。この高いカゴ落ち率を改善するのに、BNPLが有効だと考えられている。

SimilarWebの調査によると、米国の上位100のアパレルECサイトで、BNPLを採用しているのがちょうど50サイト、採用していないのが50サイトになる。それぞれでコンバージョンを調べてみると、BNPLを採用しているサイトでは平均4.5%、未採用のサイトでは平均2.4%となり、ほぼ2倍の違いがあった。

つまり、販売業者にしてみれば、手数料、利息を負担して、消費者に負担0の後払いを提供することで、コンバージョンを大きく上昇させることができる。

 

後払い決済のリーダー企業Klarna

米国でBNPLユーザーの48.6%を握り、欧州ではBNPLアプリダウンロードシェア64%を握る世界最大のBNPL企業Klarnaは、ナイキ、H&M、セフォラ、サムスン、イケア、スポティファイなど25万社にBNPLサービスを提供している。

最もBNPLを利用しているのはアパレル企業だ。Klarnaの利用企業のうち25%を占める。また、化粧品、旅行、ホテルなどの業種も利用が伸びている。

Klarnaはスウェーデン発のフィンテック企業で、PayPalのライバルになりつつある。最高4回まで分割払いをすることができ、2週間に1回支払いをする必要があるが、利息手数料は一切かからない。

支払いが遅れると、10日の猶予期間の後、2回電子メールで督促が行われ、それでも支払いがなされない場合は、7ドルの手数料が徴収されることになる。

また、アパレル企業と提携し、30日後支払いのサービスも始めている。服を購入して、支払いは30日後。商品が届いたら試着をして、気に入らなければ返品をする。当然支払いも発生しない。手数料などは一切取られない。クレジットカードの場合は、煩雑な返金手続きが必要になる(仕組みに関しては、サービス提供国、提供ブランドにより異なる)。

後払い決済は、便利な決済ソリューションでありながら、ECのコンバージョンを改善するマーケティングツールとして注目をされるようになっている。