中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

TikTokのバイトダンスが始めた中古品取引サービスはブランド品専門。盛り上がる中古品取引サービス

バイトダンスが中古品取引サービス「二手好物」を始めている。扱う商品は、高級ブランド品が主体だ。以前の中国では、中古品を購入することを嫌う文化があったが、それを気にしないZ世代が利用をしていると媒体が報じた。

 

中古品売買サービスにバイトダンスも参入

「抖音」(ドウイン)、「TikTok」を運営するバイトダンスが、中古品を売買するサービス「二手好物」(アーショウハオウー)を始めている。

中古品の売買サービスは、アリババの「閑魚」(シエンユー、https://goofish.com)が先行をしており、続けてEC「京東」(ジンドン)が「拍拍鯨置」(パイパイジンジーhttps://apps.apple.com/cn/app/拍拍置/id1582170284)をスタート、さらには快手(クワイショウ)もライブコマースで中古品の扱いを始めている。さらには、「転転」(ジュワンジュワン)、「愛回収」(アイホイショウ)などの独立系もあり、バイドダンスの参入により、にわかに中古品取引サービスが賑やかになってきた。

▲バイトダンスが始めた「二手好物」。扱う商品はラグジュアリーブランド商品に限定されている。ライブコマースでの売上が好調だという。

 

二手好物は高級品の中古品が中心

現在、二手好物は専門の販売業者がライブコマースを中心に中古品を販売している。中古品と言っても、不用品ではなく、高級品が多い。ルイヴィトンやグッチといったブランドもの、高級腕時計、iPhone13などの中古品が主体になっている。

また、買取のサービスも行われていて、バッグ、腕時計、服飾品、宝飾品などは、宅配便で送ると査定が行われ、査定額に納得をすればそのまま買取となり、二手好物で販売されることになる。

アリババの閑魚は家具から日用品まで含み、不用品でも別の誰かにとっては価値があるというコンセプトでの中古品売買サービスだが、現在の二手好物は誰にとっても価値が感じられる高級品、デジタル製品などが主体になっている。

 

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中古品に対する抵抗がなくなっているZ世代

中国人は中古品を嫌うという文化がある。しかし、それは自分の使っている物を人にあげるということが特別な意味を持つからだ。よくあるのは、社長が従業員に自分の腕時計や自動車をあげるというもの。これは信頼の証になり、仲間として認めたという証になる。同時に、上下関係が確定をする。そのため、対等な人同士で、自分のものを相手にあげるという行為は、相手を下に見るということになり失礼にあたる。

このような文化であるため、中古品を利用する習慣が根づかないままにきた。しかし、それを変えたのが、95年以降生まれのZ世代だ。

Z世代は、社会課題に強い関心を持っているため、環境保護は当たり前のことになっている。まだ使えるものを捨ててしまうのは環境に負荷を与えることになる。木製家具などは補修をし、リデザインすることで、レトロ感という新しい価値を付加することもできる。服飾品なども古着をアレンジすることで新しい価値を与えることができる。このような感覚が広まり、中古品に対する抵抗感はなくなっている。

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オタク文化が不用品取引の感覚を産むきっかけになった

さらに大きいのが、Z世代に広がるオタク文化だ。程度の違いはあるものの、中国のZ世代ほぼ全員が、ACGN(アニメ、コミック、ゲーム、ノベル)に興味を持っている。オタクが特殊な趣味ではなく、若い世代の基本教養になっている。そのため、フィギュア、漢服、コスプレなどの中古品が取引されることも珍しくなく、フリーマケットサービスを通じて、欲しいものを購入し、不要なものを売却するということを普通に行なっている。中古品というより、自分が不要なものをシェアして、必要なものを手に入れるという感覚だ。

このようなことから、若い世代を中心に、中古品を購入する習慣が根づこうとしている。

 

不用品取引はC2B2Cビジネスモデルが主流

調査会社iResearchの調査によると、2015年の中国の中古品取引市場は3000億元に満たなかったが、2020年には1兆元を突破した。2025年には3兆元を突破すると予測されている。

中古品売買サービスはいくつも登場して、すでに過当競争気味になってきているが、スタイルがそれぞれに異なっている。アリババの閑魚はC2C型からスタートをした。消費者同士が中古品を売買するプラットフォームだ。しかし、品質や値付けの問題から、運営がいったん買い取り、修繕、洗浄などをして販売するC2B2C型に転換をしようとしている。

愛回収、回収宝などはC2B2B型だ。消費者から不用品を買い取り、それをリサイクルなどして必要な企業に売却をする。中古品売買というより、リサイクル買取サービスだ。

バイトダンスの二手好物は、最初からC2B2C型でスタートしている。

現在、シェアでは閑魚が圧倒的で、86.8%、次が転転で12.4%と、閑魚が市場の中心になっている。

▲中古品売買サービスでトップシェアを持っているアリババの「閑魚」。中国に中古品を購入するという習慣を根付かせることに成功した。

 

中古品サービスは新品の販売を加速する

二手好物がこのような中古品売買市場でシェアを取りに行こうとしているのかどうかはわからない。むしろ、新品を扱う通常のECの販売を加速するために、二手好物を始めたと見ている人もいる。

高級ブランドや高級腕時計は、普通の人は頻繁に購入するものではない。場合によっては、一生ものと考えて買うこともある。しかし、中古品市場があれば、購入をしてみて、気に入らなかったり、飽きたりしたら、中古品として売却をすればいいと考えるため、新品の購入頻度があがる。ここを期待しているのではないかと見られている。

そのため、二手好物は、価値が下がりづらい高級品やデジタル製品に限定されたままになる可能性がある。

バイトダンスの2022年は、ECの成長が大きなテーマになっていて、2022年の流通総額の目標は2兆元(約39兆円)となっている。抖音で1兆元、TikTokで1兆元の流通総額をねらう。

ただし、バイトダンス広報は、ECを加速するために中古品売買サービスを始めたという見方を否定している。いずれにしても、販売チャンネルとしてポテンシャルの高い抖音とTikTokが、今後のEC市場に大きなインパクトを与えることはもはや間違いのないことになっている。