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「ワタシ学生」カタコト中国語で価格交渉。タオバオ、閑魚で商品を購入するベトナム人たち

ネットで「ワタシ学生」というカタコト中国語が流行をしている。ベトナム人がフリマサービスなどで、グーグル翻訳を使ってベトナム語を中国語に直して価格交渉をするからだ。しかも、大胆すぎる値引きをしてくる。タオバオなどでもベトナム人の需要が急増していると品玩が報じた。

 

ネットで流行するカタコト中国語「ワタシ学生」

ネットでちょっとした流行語になり、ネタとして楽しまれているフレーズが「ワタシ学生」だ。フリーマーケットサービス「閑魚」(シエンユー)で、「ワタシ学生、200元にまけてください」など、つたない中国語で常識外れの価格交渉をしてくる人が増えているのだ。これがネット民に面白がられて、「ワタシ学生」というフレーズがあちこちで使われるようになっている。

この「ワタシ学生」の正体はベトナム人だ。中国に住んでいるベトナム人もいれば、ベトナムにいるベトナム人もいる。豊かになったベトナム人が、中国の「淘宝網」(タオバオ)、「京東」(ジンドン)などのECや、閑魚などのフリマーサービスで買い物をすることが目立つようになってきている。

価格交渉をするときに、いきなり「ワタシ学生」と名乗るのは、普通の中国人にとっては唐突な印象を受ける。しかし、ベトナム人の間には「私は学生でお金がない」と伝えれば価格を負けてくれたり、優しくしてもらえると思っているようだ。ここが中国人に面白がられている。

ベトナム人だと思われる人の価格交渉。2200元のバッグを「ワタシ学生。送料込みで200元でいいですか?」と大胆すぎる価格交渉をしている。売る方は「お前のようなxxにはダメ」とかなり強い言葉で断っている。

 

以前から存在したベトナム人による代理購入

ベトナム人によるベトナム人向けのタオバオの代理購入は、タオバオの黎明期から始まっている。中国内にいるベトナム人が、本国の消費者から注文を受け、商品をタオバオで購入。商品をリヤカーに山積みにして、雲南省河口市からベトナム側のラオカイ市に運び込み、ベトナム側のスタッフに渡して購入者に配送をする。

中国語が話せるベトナム人は代理購入の事務を行い、中国語が話せないベトナム人は国境の荷運びをする。ベトナムが豊かになったとは言え、まだまだ正規の中国製品は高い。そのため、タオバオで携帯電話、家電、中国茶、衣類などを安く購入するのだ。

タオバオで代理購入された商品は、雲南省からベトナム側のラオカイ市に運び込まれる。ベトナム内ではShoppeeで転売をされることが多い。

 

タオバオで購入し、Shoppeeで転売

ベトナム向けの代理購入が続いている理由は、やはり言葉の壁だ。ベトナムでも翻訳サービス「DeepL」はよく知られているが、ベトナム語には対応をしていない。多くの人が対応される日を待ち望んでいる。グーグル翻訳はベトナム語に対応しているが、中国語とベトナム語の翻訳は品質の点で問題があり、ECでの購入にはほとんど使えないと見なされている。それでも使おうとしたベトナム人が「ワタシ学生」のようなおかしな中国語で価格交渉をしてくることになる。

そのため、多くのベトナム人は、ベトナム人による代理購入を頼ることになる。ベトナムで人気のあるECサイト「Shopee」(ショッピー)で、「order taobao」で検索をすると大量の商品が見つかる。このような商品を出品しているのが代理購入業者だ。在庫は持たずに、注文が入ると、中国のタオバオで商品を購入し、それをショッピーの物流に乗せる。そのため、多くの商品が「予約注文。15日後に発送」などのように時間がかかるが、それでも購入をする人がたくさんいる。

▲Shoppeeで「order taobao」(タオバオに注文)で検索をするとさまざまな商品が見つかる。タオバオで購入した商品がベトナム国内でShoppeeを通じて販売されている。

 

近年はフリマサービスで直接購入をする人が増えている

この数年は、若い世代を中心に、このような代理購入を使わずに、自分で直接「閑魚」などのフリマサービスで商品を購入しようとするベトナム人が増え始めている。個人取引であれば、交渉次第で、国際発送をしてもらえるからだ。人気になっているのは、K-Popの関連グッズだ。ベトナムでもK-Popが女性を中心として人気になっているが、音楽そのものは国内サービスで聞けるものの、周辺グッズはほとんど手に入れることができない。そこで、中国のフリマサービスから直接購入をしようとする人が増えている。

ベトナムで人気のあるのはK-Pop関連グッズ。音楽や映像はサブスクなどで見ることができるが、グッズの販売は大々的に行われていないために希少価値がある。ファンはShoppeeで購入するのが普通のことになっている。

 

ベトナムでたびたびアリペイが禁止に

ここで、大きな働きをしているのがスマホ決済「支付宝」(ジーフーバオ、アリペイ)だ。2018年からベトナムにもアリペイが進出をし、タオバオや閑魚はベトナムでもダウンロードができるため、中国語の問題と国際発送の問題がクリアできれば直接購入をすることができる。

しかし、ベトナム政府はアリペイにたびたび使用禁止令を出している。ベトナムを訪れる中国人旅行客の多くが、アリペイでの決済を好むが、ベトナム国内でも中国人が経営するホテル、飲食店、小売店が増えている。このような場合は、人民元で決済をすることもでき、ベトナム政府が把握ができない取引となり、脱税をされる可能性が高くなる。そのため、政府は禁止措置を出しているが、観光業界からはアリペイ禁止は死活問題だとして反対の声があがり、再開をするということを繰り返している。

 

ベトナムからの購入量は増え続けている

しかし、ベトナムは人口増加による人口ボーナスの時期にあたっている。さらに中国のEMS(委託製造)企業がベトナムに次々と進出するなど、製造業も急成長をし、2022年のGPD成長率は+8.02%という高いものになった。ベトナム人のショッピング熱は止まることがない。「ワタシ学生…」で始まるベトナム人のフリマサービスでの価格交渉は今後もますます増えていくことになる。