ECなどのサービスに、虚偽の高評価レビューを書き込み、商品を過剰によく見せるサクラレビュー。このようなサクラレビューを担当する業者が無数に存在し、最近では月額契約のサブスクまで登場している。当局や各サービスは対策を講じているが限界に達していると騰訊網が報じた。
大量に存在するサクラレビュー運営業者
消費者がECを使う上で悩まされるサクラレビュー。中国ではこのサクラ行為が産業化をし、業者同士での競争も起きている。淘宝網(タオバオ)で「口コミ運営」「代理運営」などで検索をすると大量の業者が見つかる。
ただし、これ自体はまったく問題のないビジネスだ。口コミ運営とは企業のレビュー評価を高める手法を教えてくれるコンサルタントであり、代理運営とはECでの運営を一手に引き受けてくれる代理業者だ。
しかし、内容をよく見ると、「レビュー1000件を確約」「ネガティブなレビューが1件もないことを保証」など、正常な運営では難しい条件あるいは不可能な条件を確約している業者が目立つ。
いわゆるサクラを雇ってレビューを捏造しているから可能なのだと考えるのが普通だ。
市場監管局の対策も効果は限定的
2021年から、中央ネット安全情報化委員会、市場監督管理総局などが中心となって、虚偽レビューを排除する活動を行い、抖音(ドウイン)、小紅書、大衆点評などに協力を求めてきたが、効果があがっているとは言えない。「野火が焼き尽くすことはなく、風が吹けば再び燃え盛る」状態で、正当な購入者が正当なレビューを書いても、サクラレビューに埋もれてしまう状況が続いている。
月3000元のサブスクも登場
あるタオバオに出店をしている業者によると、多くの業者が、抖音,タオバオ、ウーラマ、美団(メイトワン)などに対応していて、商品の写真も撮影したレビューの場合は1本80元(約1500円)、リアルな購入者が書いたような精密なレビューは150元(約2800円)と特別料金になっている。また、リアルな消費者から悪い評価がつくと、それを下位に落とすまで、高評価を大量追加するサービスも用意されている。
このようなサービスがサブスク化されていて、月3000元、半年で8000元、1年で14000元(約26.2万円)あたりが相場になっている。
購入者限定のレビューも効果はなし
このようなサクラレビューは、情報を歪め、消費者の知る権利を損なう行為だが、法的に追及をすることは難しい。正当な消費者であっても、誤解に基づいて誤ったレビューを書いてしまうことはあり得るし、消費者が偏った考え方を持っていて特定の商品を過剰に褒めたり、過剰に貶したりすることもある。
そこでレビューを書けるのは購入者のみに限定する対策も行われたが、ほとんど効果はあがっていない。サクラ業者が実際に商品を購入し、その商品を業者に戻して購入代金を補填してもらうということが行われるからだ。さらに、最近では、多くの販売業者が宅配企業と包括契約(月額料金方式、いわゆるサブスク)を交わしていることもあり、サクラレビューライターには空箱を発送して、購入者として偽装をすることもある。
販売業者にとっても、商品の販売数が増えるため、EC内での検索順位が上がるなど好都合だった。
結局は問題のある販売業者の排除しかない
結局、各プラットフォームがガイドラインをつくり、問題のある販売業者は排除をしていくという方法以外にない。当局は各プラットフォームにそのような対策をとることを求め、2021年12月には小紅書は、実体のないアカウントからのレビューが大量にある81の販売業者のアカウントを凍結し、業者の投稿17.26万本を削除した。また、身分証などの登録がなく、実体がなく、レビューを書く行動を主体にしている不審なアカウント5.36万件を凍結した。
また、大衆点評では、高評価を異常な頻度で書き込んでいるアカウント5万件を凍結し、その不審なレビューが集中している飲食店1万件の掲載を一時停止した。また、各地の市場監督管理局もこのようなプラットフォームの動きと連動し、サクラレビューを運営していた27社を摘発し、罰金を課した。
ECが個々に対策をするのは限界に達している
しかし、効果は決して高くない。高評価を書くというのはそれがたとえ虚偽だとしても社会に対する悪影響は小さい。虚偽で低評価を書いた場合とは異なり、販売業社やメーカーから訴えられることもない。プラットフォームが特定のサクラ運営業者と取引のある販売業社を排除しようとしても、サクラ運営業者は会社を解散して、新しい会社をつくって戻ってくる。
この問題に詳しい北京大学法学院の薛軍教授は、各プラットフォーム間で情報共有をする必要性を唱えている。各プラットフォームが、共同して、サクラレビュー業者を利用する販売業者のアカウントを一斉に凍結をするようになれば、販売業者にとっては死活問題となるため、容易にはサクラレビュー業者を利用しなくなる。利用する人がいなくなれば、このようなグレーな産業は、別のビジネスを探して用意に崩壊すると言う。
すでに、ECが個別に対策をすることは限界になっており、オンライン小売業界として対策を講じる必要が出てきていることは確かだ。