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熱い情熱よりも冷静な選択。利用者No.1のECになった拼多多の創業者が新入社員に語る5つのこと

アリババを抜いて利用者No.1のECとなった拼多多。その創業者の黄は40歳で引退をし、次の活躍の場を模索している。黄が新入社員に必ず語る5つのことがあると阿U説職場が報じた。

 

利用者No.1の座をアリババから奪った拼多多

2021年Q1時点のソーシャルEC「拼多多」(ピンドードー)の年間アクティブユーザー数は8.238億人。アリババ(淘宝網+天猫)の8.11億人に差をつけ始め、利用者No.1の座を快走し始めている。もはや、「中国で利用者No.1のEC」と尋ねられたら、拼多多と答えなければならない状況になっている。

さらに、2020年には、拼多多の株価が上昇し、創業者の黄(ホワン・ジャン)の資産が454億ドル(約5兆円)となり、アリババの創業者、馬雲(マー・ユイン、ジャック・マー)を一時的に抜いたこともある。

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▲2020年の年間アクティブユーザー数が7.884億人となり、初めてアリババを抜いた。2021Q1ではその差がさらに開きつつある。

 

40歳で引退をした創業者、黄

は現在41歳。昨年、ここまで拼多多を成長をさせたところで、40歳で引退をした。黄は本来、儀礼的な社交があまり好きではなく、忙しさもあり、人と会うことをあまりしてこなかった。これからはいろいろな人と会い、そして、自分が興味を持っている生命科学と食品科学の分野で何か活動していきたいとしている。

は小さな頃から優等生で、浙江大学卒業後は、米ウィスコンシン大学に留学、そのままグーグルに入社し、グーグル中国の立ち上げに伴い中国に帰国、その後創業したというスーパーエリートだ。しかし、黄自身によると、学生時代は勉強、社会に出てからは仕事以外には何もない人生で、自分には青春というものがなかったと語っている。黄は41歳になってからようやく青春を楽しめる時間を得ることができた。

その黄は、拼多多に入社した新入社員の前で必ず話す5つのことがあるという。

 

1:お金は道具。目的ではない

は、16歳の時にこの考えに至ったという。お金を稼ぐために何をすべきかと考えると、自分が本当にやるべきことが見つからなくなる。世の中というのは不確定なことが多く、しかもその不確実さが年々増している。こうやればお金を稼げるという確実なことなどどこにもない。儲かる業界というのも激しく入れ替わる。だから、「お金を稼ぐために何をすべきか」と考えると、答えは常に変わり続けてしまい、翻弄されてしまう。

しかし、世の中がどうなろうととも「自分がやるべきこと」は変わらない。自分の内面を見つめて、自分がやるべきことを見つけることが何よりも重要なのだという。

 

2:常識に向き合う勇気を持つ

若い間は、「常識を打破する」という考えを持っている人も多い。しかし、それは常識に向き合う勇気がないために逃げているだけかもしれない。常識を知った上で、それに抵抗し、打破していくのであればいいけど、常識と向き合ったこともないうちから常識を壊そうとしても、ただのデタラメになり、何も成し遂げることはできない。

の人生が大きく転換したのは、グーグル時代に投資家のウォーレン・バフェットと食事をしたことだ。ここで、現在の拼多多につながる起業アイディアを話したところ、バフェットから絶賛され、起業をする決断ができた。

は、この食事で、バフェットの持つ常識の素晴らしさを実感した。「バフェット氏の話は非常にわかりやすいのです。私の母が聞いても理解できるでしょう。常識に基づいて話をしてくれるので、誰にでもわかりやすい話になるのです」。

物事の背景を分析し、理解をするには知識や経験が必要だが、理解をしたら、常識と理性に基づいて判断をしなければならない。非凡な発想というのは、耳目を引きがちだが、そこには個人の思惑が本人にも気がつかないうちに入り込んでいて、正しくない決断をしてしまうことがある。常識を欠いていたら、正しい判断はできない。

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▲黄は、グーグル時代にウォーレン・バフェットと食事をしたことで、創業を決意することになった。

 

3:進歩し続け、学び続ける

の学生時代は、勉学以外の時間はまったくなかった。しかし、それが大学の中で「テクノロジーの達人」という異名で呼ばれるようになり、それが網易(ワンイー、ネットイース)の創業者、丁磊(ディン・レイ)と知り合うきっかけになった。丁磊がある技術的な問題に悩んでいた時に、たまたま黄が関連するブログを書いていていたことから、連絡を取り合うようになった。その丁磊が、「面白い学生がいる」と、歩歩高の創業者、段永平(ドワン・ヨンピン)に紹介し、段永平は黄の生涯の師ととなった。ウォーレン・バフェットとの食事会に連れていってくれたのも段永平だった。学び続けていれば、世界が広がり、道は開ける。

 

4:目の前のことを着実にこなす

星空を見上げるためには、足元をしっかりと確保する必要がある。若いうちは、高みを見ようとしても、まだ眼高手低の状態にあるので、失敗をしてしまう。高みに近づく最善の方法は、目の前のことを的確にこなし、一歩ずつ高みに近づいていくことだ。

拼多多が米ナスダック市場に上場をした時、黄は取引所の鐘を鳴らすために渡米することをしなかった。なぜ、そのような大きな記念式典に行かないのかと尋ねられて、黄はこう答えた。「大事なことだとは思わなかったからです。上場はひとつの結果にすぎず、上場したからといって、私の何かが変わるわけではありません」。

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▲米ナスダック市場に上場時に、黄は米国に行かなかった。上場はひとつの結果にすぎず、大事なことだとは思わなかったという。

 

5:情熱よりも選択が大切

間違った方向に全力疾走するのではなく、正しい方向に着実に歩んでいく。企業というのは、正確な事実を把握し、それに対して適切な判断をしていくことの繰り返しだ。解決できない問題に直面した時、四方八方に解決策を探し求める。それは仕事に対する情熱に見えることがあるが、正しい解決策を見つけた時には、すでに機会を失っていて、ただの時間の浪費になっていることが多い。

常に正しい選択をし続けていれば、解決策は自分の進む先に必ず見つかる。時間を無駄にすることなく、機会を逸することもない。