中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

苦しむ燃料車を販売する4S店。その古い販売スタイルにも若者離れが

2024年4月上旬、新車販売に占めるNEVの販売台数が50%を突破した。燃料車は年々販売台数が減少しているが、販売店の販売スタイルにも若者離れが起きている。価格が不明、値引き交渉をしなければならない、納車式。そういうスタイルが古いと思われるようになっていると品牌界が報じた。

 

販売数が落ち込む燃料車

新エネルギー車(NEV)が普及するにつれ、燃料車(非NEV)の販売数が落ち込んでいる。中国では2021年以降、乗用車の販売台数は年々増加をしているものの、その増加分はNEVによるもので、燃料車の販売台数は完全に下降基調にある。2024年4月上旬には、ついにNEV比率が50%を突破した。

▲新エネルギー車(NEV)と燃料車(非NEV)の販売台数の推移。燃料車は年々販売台数が減少をしている。

 

販売チャンネルも異なる燃料車と新エネルギー車

この燃料車の販売台数の低下により、大きな打撃を受けているのが4S店だ。中国の自動車販売店(ディーラー)は4S店と呼ばれる。4SとはSale(販売)、Spare Parts(部品、修理)、Service(アフターサービス)、Survey(情報収集)の4つのことで、日本の正規ディーラーに近い。一般的には、製造メーカーとは別会社(子会社のこともある)で、メーカーから自動車を仕入れ、販売をし、修理も行なう。

ところが、NEVの新興自動車メーカーは、既存の4S店での販売を行なわない。独自に2S店(Sale、Service)の2つを提供する店舗を直営やフランチャイズで展開をし、販売をしている。そのため、4S店の多くが燃料車のみを販売することになり、燃料車の減少とともに経営が苦しくなっている。

▲典型的な4S店。その古い販売手法が若者離れを招いている。

 

相見積もり、値引き交渉といった古い販売方法

なぜ、新興NEVメーカーは4S店を使わないのか。販売方法が古すぎて、今の時代に合わないのだ。燃料車の自動車メーカーは指導価格(希望小売価格)を公表する。しかし、実際の4S店でその価格で販売されることは少ない。いったん仕入れた自動車をいくらで売るかは4S店が決められるからだ。多くの場合は、指導価格よりも割り引いて販売されるが、その割引率は交渉次第。何度も買ってくれたり、大量に買ってくれる顧客には大幅割引をするが、新顔の顧客は価格交渉をしなければ安くならない。そのため、複数の4S店を回って見積もりを取り、購入する4S店を選ばなければならない。

現在の消費者、特に若い世代は、こういうことがバカバカしいと感じるようになっている。一方で、新興NEVメーカーでは、価格は表示価格に統一されており、どの店舗で買っても同じ値段。ウェブやアプリから試乗の申し込みをし、最も近い2S店に行き試乗をして、気に入ったら表示価格で購入する。それだけだ。故障が発生したら、ウェブから申し込むと認定修理工場が指示されるので、そこに持ち込めば統一価格で修理をしてもらえる。スマートフォンを買うのと同じ感覚だ。

4S店=燃料車が人気だった時代は、自動車は一生に数回の大きな買い物だった。そのため、4S店に行き、担当者との人間関係をつけ、じっくりと検討するというのが主流だった。納車では、リボンや大きな鍵の模型を使った納車式も行なわれる。

しかし、今では、自動車は日常のツールになっている。大型連休の前に、カメラやスーツケースを買うような感覚で自動車を買うようになっている。メディアの情報も豊富で、2S店にいく前から、ほぼ購入したい車種を決めている。燃料車かNEVかということだけでなく、購入スタイルとして4S店は避けられ始めているのだ。

▲4S店で行われる納車式。派手好きの中国では盛大に行なわれるが、若者はこういう儀式が面倒、恥ずかしいと感じるようになっている。

 

苦しむ燃料車販売店

4S店の閉店、倒産も相次いでいる。4S店は、自動車を仕入れて売るというビジネスで、その差額が利益になる。しかし、NEVメーカーが価格攻勢をかけているために、すでにNEVの60%が同レベルの燃料車よりも低価格になっている。それに対抗するために、4S店では値引き販売をしなければならなくなり、利益率が大きく減っている。生き残れるのは、高級車を扱う4S店だけではないかと見られている。

一方、2S店は、価格がすでに決まっていて、販売手数料が利益の源泉であるため、低価格攻勢が始まっても、大きな影響は受けない。在庫も持たないため、利益は少なくても安定した経営が可能になっている。

▲高級車を扱う4S店では、ジムを併設するなど、来店してもらうための工夫をしている。

▲4S店には修理ピットが併設され、点検、メンテナンス、修理なども行ってくれる。

 

中古車取引に活路を見出そうとする4S店

経営が苦しくなっている4S店では、中古車取引に活路を見出そうとしている。中古車販売は上昇基調にあり、2023年には1841.33万台にも達した。2023年の新車販売台数は2169.9万台で、つまりは新車販売に近い市場が存在をしている。NEVの欠点のひとつは再販価値が低いことであるため、中古車市場では精彩を欠き、燃料車が中心となっている。4S店は、生き延びるために、中古車の扱いを拡大しようとしている。