EVの発火事故のニュースはたびたび報道される。バッテリーが発火を始めると、噴流が出てくることもあり、手がつけられなくなるのか。実際のところ、EVの発火事故は燃料車に比べて多いのか、電動知家が報じた。
報道が続くEVの発火事故
中国では、電気自動車(EV)が自然発火する火災事故のニュースが頻繁に報道される。一度発火をすると、消火の手立てはほぼなく、自然鎮火を待つしかない。状況によっては、炎がジェット噴射にように噴き出すこともあるため、消防隊員もうかつに近づけない事態となる。中国人の中にも「EVは怖いから買わない」という人はけっこういる。
いったい、EVの発火事故はどのくらいあるのか。
EVの発火事故は燃料車よりも少ない
2024年3月16日、北京市で開催された「中国EV百人会フォーラム2024」で、中国EV百人会副理事、中国科学院士の欧陽明高氏が、「新エネルギー車(NEV)のさまざまな疑問に答える」という発表を行なった。その中で、「EVの発火事故は燃料車に比べて多いのか」という疑問に答えた。
欧陽明高氏は、国家消防救援局の2023年第1四半期の統計を引用して、発火事故の割合は、燃料車が保有台数1万台当たり0.58で、NEVが0.44であり、発火事故は燃料車の方が多いと結論づけた。
多くの人が、「EVは発火事故が多い」と認識しているのは、メディアがEVの発火事故については報道をするが、燃料車の発火事故についてはいちいち報道をしないことによるものではないかとした。
米国でもEVの発火事故は相対的に少ない
同様の統計は、米国でも公開されている。保険比較サイト「AutoinsuranceEZ」(https://www.autoinsuranceez.com/gas-vs-electric-car-fires/)は、米運輸安全局の統計を整理して、EVの発火事故の発生率は保有台数10万台あたり25.1台であるのに対して、ガソリン車は1529.9台、さらにハイブリッド車では3474.5台になるとしている。
安直に比較するのが難しい統計データ
ただし、この統計だけから、EVの発火事故は少ないと結論づけることはできない。ネットではすでに欧陽明高氏の提出した統計に対して、計算ミスが指摘されているからだ。燃料車の発火事故件数1万8360件は、燃料自動車だけの発火事故件数ではなく、電動自転車、バイク、船なども含んだものだった。そのため、実際の燃料車の発火事故件数は、この数値よりも少なく、最大で1万4583件であると考えられる。これで計算し直すと0.45となり、EVの0.44とほぼ変わらなくなる。
さらに、この統計でも米国の統計でも共通をしているが、発火事故は古い車ほど起きやすいということだ。EVが本格的に普及をしたのは2015年頃からで、まだ10年経っていない。一方、燃料車は10年以上の古い車が走っていることは珍しくなく、20年以上の車も見かける。そのため、年数を揃えた統計を取れば、EVの方が発火事故の率は大きくなる可能性が高い。
火災事故の被害の大きさも異なる
また、発火事故の被害度合いも燃料車とEVでは大きく異なる。燃料車の発火事故で、ガソリンタンクが爆発するなどという事故が起きるのはきわめて稀なことで、多くは漏れ出したオイルに着火をする、ホースから漏れた燃料に着火をするというもので、運転手が消火器で対応できるものがほとんどになる。
一方、EVの発火事故はほぼ全焼で手がつけられない。この違いがあるために、メディアはEVの発火事故は報道をするのに、燃料車の発火事故はいちいち報道をしない。
古いEVは車両保険料が大幅にあがるケースも
燃料車とEVの発火事故はどちらが多いのか。それは、これから古いEVが走るようになっていかないと正確な統計は出てこない。車両保険会社の中には、年数のたったEVの保険料を大幅に値上げするところも出てきている。EVが社会に定着をするかどうか、重要な問題になってきている。