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コロナ禍で苦境に立たされる飲食店。回復の鍵は「効率化」「地元密着」「デリバリー対応」

2022年に新型コロナの感染が再拡大し、飲食店は客流不足に悩まされている。その中で売上を落とさずに済んでいるのが地元密着店だ。また、ファストフードは効率をさらにあげるため小型店舗の出店を試みていると餐飲老板内参が報じた。

 

ショッピングモールは小売店から飲食店へ

飲食店が危機に瀕している。大きな要因になっているのがショッピングモールの不調だ。中国のショッピングモールは都市型が多く、小売店が入居していたが、ECの浸透により小売店が撤退をし始め、空き店舗が目立つようになった。そこで、ショッピングモール運営は飲食店を誘致し、ショッピングモールからグルメモールへの転換を図ってきた。

従来のショッピングモールは小売店が9割で、飲食はバフェテリア方式で提供するのみというところも多かったが、小売店の撤退により、飲食店が増え、さらにゲームコーナーや脱出ゲームなどの体験店舗も増え、小売:飲食:娯楽の比率は、最近では5:4:1が黄金比率だと言われるようになっている。

 

頼みの飲食店もモールからの撤退が始まっている

しかし、その飲食店もショッピングモールからの撤退が始まっている。贏商網の統計によると、今年2022年1月から4月の成都、上海の主要ショッピングモールの空き店舗率はそれぞれ8.7%、9.8%となり、また、広州市の主要ショッピングモールの空き店舗率は14.1%まで上昇をした。5%か6%前後が、モール運営の危険ラインと言われていて、それを割り込んでしまっている。

 

2022年の感染再拡大により客流が減少

その原因は客流の現象だ。今年2022年1月から4月のショッピングモールの来場数は、昨年同時期から19%も減少した。2021年は、コロナ禍が終息をした兆しがあり、経済が回復基調に乗ったが、2022年に入り、再び感染拡大が始まり、人流が大きく減った。小規模のロックダウンが続くためだ。多くのロックダウンは、社区(町内会)、施設単位で行われ、予告なく突然閉鎖をされる。たまたまそこに居合わせただけで1週間以上、外に出られるなく。このような面倒を避けるため、外出することを避ける空気感が生まれている。

▲店内モバイルオーダーとデリバリーの売上比。コロナ禍以降、店内モバイルオーダーによる注文は伸び悩み、デリバリーが大きく伸びている。単位:億元。「中国生活サービス業デジタル化報告」(中国チェーンストア協会)より作成。

 

地元密着でコロナ禍を乗り切った紫光園

その中で、比較的安定した経営をしているのが地元密着店だ。近所の客流を見込んでいるため、売上としては大きくなく、成長の余地も少ないとコロナ禍以前は、取り残された飲食ビジネスだったが、中国のコロナ禍が「感染の不安」よりも「ロックダウンの不安」が大きくなるとともに、近所の客流が再び回復をしている。

地元密着をコンセプトに50店舗を展開する「紫光園」(http://www.ziguangyuanqzc.com/)は、このコロナ禍を乗り切っている。本格レストラン25店舗あるが、周辺1kmから3kmのホワイトカラーを対象にしたスタンド形式(テイクアウト専門)の店舗70店舗、若者を対象にしたファストフード店舗40店舗も展開している。このようなファストフード、スタンド形式の店舗が好調だった。朝食や昼食をさっと食べて帰ることができる、あるいはテイクアウトをすることで店舗での滞留時間が短くて済むからだ。また、本格レストランも地元密着であるために、感染が落ち着くと客流の戻りが早い。

老舗の「東来順」や火鍋の「海底撈」も、同様の地元密着店の展開を始めている。

▲紫光園のスタンド形式の店舗。テイクアウト専門で、自宅やオフィスなどで食べることができるため、コロナ禍でも売上がほとんど落ちなかった。

 

飲食店に求められる「効率」「地元密着」「デリバリー対応」

コロナ禍後の飲食店に起こるのは次の3つの変化だと言われる。

1:効率の競争になる

人手不足、コストの上昇により経営が圧迫をされている。人件費などのコストを圧縮し、効率の高い経営が求められるようになっている。特に坪効果(単位面積あたりの売上)が重視されるようになっている。

2:地元密着

ショッピングモールや繁華街など客流の多い場所ではなく、リピーターが育成できる地元密着店に注目が集まっている。ただし、市場が大きくないため、現在はブルーオーシャンに見えているが、あっという間にレッドオーシャンになる可能性がある。

3:デリバリーとの連携が必須

ファストフードなどはデリバリー対応が進んでいたが、いよいよ伝統的な中華料理飲食店でもデリバリー対応店舗が50%を超えた。もはやどの飲食店でもデリバリー対応が必須となる。

▲店内モバイルオーダーとデリバリーの売上比。コロナ禍以降、店内モバイルオーダーによる注文は伸び悩み、デリバリーが大きく伸びている。単位:億元。「中国生活サービス業デジタル化報告」(中国チェーンストア協会)より作成。

 

小型店舗の出店を試みるディコス

この状況下で、小型店舗の出店を進めているのがハンバーガーなどのファストフード「徳克士」(ディコス) だ。現在2600店舗を展開し、マクドナルドやケンタッキーフライドチキンを追いかけているが、小型店舗の出店を急いでいる。

杭州市で複数店舗のディコスのオーナーである朱暁俊氏は、餐飲老板内参の取材に応えた。「以前は200平米以上の店舗に300万元の初期投資が必要でした。スタッフも15人から17人は必要になります。しかし、今出店しているのは130平米です。家賃も半分程度になり、スタッフも9名で間に合います。常時、4名から5名が出勤していれば、高い水準の品質を保つことができます」。

しかし、朱暁俊氏も130平米はじゅうぶん小さいとは言えないという。そこで、店舗に倉庫、冷凍庫などを入れ、配送回数を減らし、配送コストを下げ、いわゆる店舗面積を70平米程度に抑えた「精巧店」に改装をした。

メニューも80%程度に削減し、効率化を図っている。

▲ディコス精巧店。精巧店とは小型店舗の名称。テーブル席を減らしてカウンター席を増やした。また、デリバリー専用ロッカーも用意をした。

 

若い世代はテーブルよりもカウンター席を好むようになっている

小型店舗に転換をしていくと、客席が削られることになり、居心地は悪くなる。しかし、ファストフードの主要客である若者層にとって、テーブル席よりもカウンター席の方が居心地がいいと感じる人も多いという。

業界人の感触では、いわゆるテーブル席中心のレストランの回復率は昨年の3割程度で多くの店舗が厳しい経営状況にある。カジュアルレストランは50%-60%程度、ファストフードは70-80%の回復率という感覚だという。一人で行けて、短時間で食事が済むファストフードに人気が集まり、家族や友人と大人数で食事を楽しむときはレストランではなくデリバリーをし自宅で楽しむという傾向が出てきている。

しばらくの間は、ファストフードの小型店舗が増えていくことになりそうだ。