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解答を教えるのではなく、考え方を教えるAI先生。対話型AIを搭載した学習タブレット「有道X20」

対話型AIを搭載した学習タブレットが登場した。問題の解答をいきなり教えるのではなく、考え方をステップバイステップで示していき、生徒に考えさせるAI先生「小P先生」が搭載されているとCCTV財経が報じた。

 

対話型AIが先生の学習タブレット

教育用デジタルデバイスを開発している網易有道(ワンイー・ヨウダオ)は、2024年1月3日に、学習用タブレット「有道X20」の発売を発表した。このX20には対話型AI大規模言語モデル「子曰」(ズーユエ)が搭載され、そのアプリケーションとしてAI家庭教師「小P先生」が搭載されている。対話型AIにステップバイステップで教わりながら演習問題に挑戦ができるというものだ。

このような対話型AIを使った自習教材は、すでにいくつも存在するが、そのほとんどは中国語や英語などの言語学習に特化されていた。しかし、小P先生は英語、中国語だけでなく、数学、物理、化学、生物学、歴史、地理、情報、総合科学など、主要10科目に対応をしている。また、学年は幼稚園から高校までをカバーしている。

▲学習タブレット「有道X20」の製品発表会。考え方を教え導く対話型AI「小P先生」が搭載されている。

▲学習用タブレット「有道X20」。幼稚園から高校までの主要10科目の演習問題が内蔵されている。



ステップバイステップで教えてくれる「小P先生」

問題は、対話型AIの教え方だ。宿題の中でわからない問題を尋ねて、一気に解答と解法を教えてしまうのであれば、単なるアンチョコになってしまい、生徒は次第に考えることをしなくなり、対話型AIの回答を丸写しするようになってしまう。

小P先生はここが工夫をされている。例えば、次のような算数の問題を例に、小P先生がどう回答し、どう指導するかを見てみよう。

 

問:赤いビーズ2個、緑のビーズ3個、黄色のビーズ4個をこの順番で糸につなげていきます。600個目にくるビーズは何色ですか?

回答:この問題を解くには、ビーズの繋ぎ方にくり返しがあることに注目しましょう。最初に何個のビーズの組み合わせが繰り返していくのかを数え、それから600個の中に何回のくり返しがあるのかを考え、最後に600個目のビーズがこの繰り返しの中の何番目にあるのかを考えます。

繰り返しは赤2緑3黄色4ですから、繰り返しの数は2+3+4=9となり、9個のビーズの並びが繰り返していきます。次に600を9で割ると、600個目のビーズが何回目の繰り返しの中のどの位置であるかが求まります。このような方法で、600個目のビーズの色を決めることができます。

このような考え方で計算をしてみて、途中でわからなくなったり、もっと詳しく知りたくなったら、いつでも聞いてください。アドバイスをします。

おわかりだと思うが、全部を解説するのではなく、考え方しか解説をしない。ここが小P先生の最大の特徴になっている。

 

問:600個目のビーズになるまで何回繰り返しがあるのかはどうやって計算しますか?

回答:600個目のビーズまでに何回ビーズの繰り返しがあるかは、600を繰り返しの個数で割ることで求めることができます。

繰り返しの数は、2+3+4=9で9個でした。つまり、600を9で割ると繰り返しの数を求めることができます。

600÷9=66余り6

この計算結果から、600個目のビーズは67回目の繰り返しの中の6個目のビーズであることがわかります。9個のビーズの並びが繰り返していくのですから、66回目の繰り返しのところで、66×9=594個のビーズが並んでいることになります。次の67回目の繰り返しの6番目が600個目のビーズになります。

このような計算方法で、600個目のビーズの色を決めてください。途中で疑問があればいつでも質問してください。

 

問:600個目のビーズは黄色だと思います。正解ですか?

回答:この答えがあっているかどうかを確かめてみましょう。

これまでに繰り返しのビーズの数は9個であり、600を9で割ると答えは66で余り6ということから、600個目のビーズは67回目の繰り返しの6個目であるということがわかっています。

この繰り返しは、「赤赤緑緑緑黄黄黄黄」ですから、1個目から2個目は赤、3個目から5個目までが緑、6個目から9個目までが黄色になります。ここから、600個目のビーズは67回目の繰り返しの6個目ですから、黄色であるということが言えます。

あなたの回答した黄色は正解です。あなたの計算方法と考え方は正確です、素晴らしいです。別の問題にも挑戦したい場合は、いつでも私に尋ねてください。

問:ありがとうございます、先生。

回答:礼には及びません。他の問題に挑戦したかったり、助けが必要な時はいつでも尋ねてください。楽しく勉強できることを願っています。さようなら!

▲高校数学などについても、このような考え方を中心にした教え方をしてくれる。

 

対話型AIにより、考えさせるAI先生が登場した

おわかりの通り、いきなり解答まで示すのではなく、考え方や計算方法だけを示して、生徒に実際に考えさせ、手を動かさせる仕組みになっている。2年ほど前、「AI先生」と呼ばれるサービスが流行し、社会問題となったことがあった。それは、宿題の課題の写真を撮影すると、それを解析して、解法と回答を示してくれるというサービスだった。そのため、子どもたちは、その解答を丸写しして宿題を提出するようになり、学習の妨げになっていると教育界、親などから強い批判を浴びた。

この小P先生は、そこを踏まえて、いかに生徒に考えさせるかの工夫をしている。もちろん、宿題や問題集の問題をカメラで撮影して、その問題の解き方を教わることもできるようになっている。

この小P先生が搭載されたX20は、7126元(約14.9万円)という価格ながら、発売2ヶ月で15万台が売れるというヒット商品になっている。幼稚園から高校卒業まで使える学習デバイスと考えれば、親たちは決して高くないと考えているようだ。

▲すでに発売されていて、淘宝網などでは5999元(約12.4万円)で購入可能。