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110番通報はショートメッセージで。聴覚障害者、音が出せない状況で活用

中国公安局は2015年からショートメッセージによる公益通報システムを運用している。指定された電話番号のショートメッセージを送ると、それが110番通報と同じように対応してもらえる。このシステムは聴覚障害者を中心に活用されていると光明網が報じた。

 

ショートメッセージによる110番通報

2024年1月3日午前3時、浙江省嘉興市の公安110センターは、一通のショートメッセージを受け取った。そのメッセージにはこう書いてあった。

「音声が聞こえないと思いますが、現在、バリアフリー通報システムを使って通報をしていています。すぐに応答できませんがお許しください。私の住所は浙江省嘉興市桐郷市文華路x-x-xです。救助をお願いします。もうだめです」。

110センターのオペレーターには、このメッセージの読み上げ音声が聞こえるようになっている。オペレーターは、通報者が聴覚障害者だと判断し、すぐに通報者の地区を担当している武通警察署に連絡がいき、2人の警察官が現場に急行した。

▲市民からショートメッセージで送られてきた緊急通報。聴覚障害のある人などはショートメッセージで110番通報ができるようになっている。

 

食中毒で倒れていた聴覚障害者を発見

警察官は、通報された住所の家で、ソファーに横たわる中年女性を発見した。その女性は大量に汗をかき、ぐったりとしている。近くにあった紙に「病院に連れて行ってください。食中毒のようです」と書いてあった。警察官はすぐに救急救命の連絡をとり、救急チームが駆けつけ、病院に搬送された。

女性は夕方に骨付き肉の煮込みとヨーグルトを食べた。その時、味に違和感を感じたが食べてしまったという。その後、夫が夜勤に出かけたため、女性は就寝した。しかし、午前2時頃、頭痛とめまいが激しく目が覚めてしまった。しばらく様子を見ていたが、体調は悪化をし、どうにもならないと感じて110番通報をした。

▲警察官が急行すると、聴覚障害の中年女性が自宅で倒れていた。食中毒のようだった。

▲警察官がテーブルの上を見ると、「医者に連れて行ってください。食中毒のようです」というメモがあった。

▲警察官は救命チームに連絡を取り、無事病院に連れていくことができた。

 

2015年からスタートしているショートメッセージによる110番通報

女性は聴覚障害があるために、警察や救急の通報の電話ができない。中国の公安局では、2015年からショートメッセージによる公益通報システムを導入している。それは、フィーチャーフォンスマートフォンのショートメッセージを利用して、「12110」+「地域局番」のアドレスにメッセージで通報できるというものだ。

各地公安では、110センターでこのメッセージを受け、電話による緊急通報と同じ手順で対応をする。

▲救出した後、警察官のスマートフォンに送られてきたメッセージ。感謝の言葉が述べられている。

 

音が出せない状況での通報にも活用

公安によると、このショートメッセージ通報「12110」は、主に3つの目的で運用されているという。

ひとつは、聴覚障害などがあり、電話での通報ができない場合だ。2つ目は、状況が逼迫をしていて音が出せない状況にある場合。3つ目は、市民が写真、URLなどの捜査に必要な証拠を提供したい場合だ。

聴覚障害のある人が通報する時以外にも、たとえば深夜に泥棒が自宅に侵入をして声を出せない状況、犯人が近くにいて電話ができない状況などでも利用されている。また、警察官が現場に急行する間に、現場の状況を知るために、通報者に写真やビデオの撮影を依頼することもあるという。この場合、この12110でやりとりが行われる。

日本でもアプリから110番通報ができる「110番アプリシステム」(https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/jiken_jiko/110/110site.html#:~:text=聴覚や言語に障害,を開設しています。)が運用されている。