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スターバックスで開催される囲碁大会。上海の囲碁好きがスターバックスに集まる理由

スターバックス上海市中遠両湾城店は、週に3回、囲碁愛好者が集まり、囲碁大会が行われる。自然発生的に生まれた囲碁の会だが、スターバックスとも良好な関係を築き、売上も増加していると長江日報が報じた。

 

囲碁会館となったスターバックス

上海市北部の住宅地区の中にあるスターバックス中遠両湾城店は、毎週、月、木、土の午後は、囲碁会館となる。30人から40人ほどの囲碁愛好者が集まり、対戦を楽しむ。

この集まりのきっかけになったのは韓軍(ハン・ジュン)さんという1人の囲碁愛好者だった。中国ではプロ棋士には優れた環境が与えられるが、アマチュアには囲碁を楽しむ環境が身近にはない。中国独特の中国将棋の方が一般的に人気があり、囲碁は高級さがあり敷居が高いため、愛好者の数が少ないからだ。そのため、日本のような囲碁会館、囲碁会所も少なく、多くの囲碁愛好者が対戦相手を見つけ、囲碁を楽しむ場所の確保に苦労をしている。

若い世代はオンライン対戦をするようになったが、強くなるよりも対戦を楽しみたい愛好者はやはり実際に会って対戦をしたい。

囲碁会館のようになったスターバックス。愛好者たちはルールを守るため、スターバックス側も歓迎をしている。

 

一人の囲碁愛好者が始めた囲碁大会

そこで、韓軍さんはSNS「WeChat」で囲碁仲間を募り、近所のベーカリーで囲碁を楽しむようになった。このベーカリーにはイートインコーナーが用意されていたが、パンは多くの人が買って帰り、その場で食べるという人は少ないために、イートインコーナーはいつも空いていた。そこで囲碁を楽しんだのだ。ベーカリーで買い物をする、混雑をしてきたら席を空けるというルールを自分たちで課したために、ベーカリー側も黙認をしていた。

ところが、このベーカリーが閉店をしてしまった。そこで、しかたなく近所のスターバックスに移動をしたところ、この活動が評判となった。韓軍さんの囲碁愛好グループのアカウントは瞬く間に400名を超え、集まりにも30人から40人は集まるようになった。

さらには、SNSでの評判を聞いて飛び込みでやってくる人などもいる。韓軍さんは、新顔がやってくると棋力を聞いた上で、適切な対戦相手を探し、この会の幹事を務めるようになった。

スターバックス中遠両湾城店。ここは週に3日、囲碁好きが集まって、囲碁を楽しむ場所になっている。

 

スターバックスとも良好な関係を築く

この活動がSNSで知られるようになると、ネットでは賛否両方の声が聞かれるようになった。賛の方は、とてもいい時間がすごせる素晴らしい活動だと褒めるもの。否の方は、長時間席を占有して他のお客さんの迷惑になるのではないかというものだ。

この活動の規模が大きくなると、韓軍さんはスターバックスと交渉をし、2つのことを決めた。ひとつは、大声をあげるなど、他の客の迷惑になるようなことはしないということ。もうひとつは、参加者は最低でもひとつ以上のメニューを注文することだ。スターバックスは決して安くはないが、それで昼から夕方まで囲碁を楽しむことができるため、場所代としては決して高くない。

囲碁愛好者たちは、他の客に迷惑にならないように静かに囲碁を楽しんでいる。

 

スターバックスの売上も増加

ひとつの注文で大人数が長時間居座られてしまうと、スターバックスの売上が下がってしまうのではないかと心配する声もあるが、実際はむしろ売上はあがっているようだ。この中遠両湾城店は背後に大型の公園があるという絶好のロケーションになる。店舗が囲碁活動に使われていることが評判になると、それを見にやってくる客が増えた。見学客はテイクアウトの飲み物を買って、しばらく店内で囲碁の会の様子を見た後、公園に行ってゆっくりと飲み物を楽しむ。

スターバックスのコンセプトは、サードプレイス(第三空間)。自宅、職場や学校の次の居場所を提供することだ。この囲碁活動は、そのサードプレイスのコンセプトにそったもので、今後、他の都市でも同様の活動が行われるようになるかもしれない。

SNSでこの集まりが伝えられると、ますます多くの囲碁愛好者が集まるようになっている。