東南アジアのECが急成長をしている。中国の4つの資本が入り、競争も激しくなる中、市場規模は16.7兆円、成長率は18.6%となっている。特に今年はさらに大きな成長が期待できる”黄金の一年”になると見る人が多いと21世紀経済報道が報じた。
東南アジアECの成長率は18.6%
中国の東南アジアに対する投資はこの数年、過熱気味にもなっている。2024年は、その成果が出て、東南アジアのECにとっては黄金の一年になるかもしれない。
調査会社eMarketerが公開した「Global Ecommerce Forecast & Growth Projections」(グローバルECの予測と成長予測)によると、東南アジアのEC市場の規模は2023年には1139億ドル(約16.7兆円)に達したと見られ、成長率は18.6%となり、世界平均の8.9%を大きく上回ると見られる。
主要なプレイヤーは4つに絞られてきている。シンガポールを拠点にする地元系のShopee(ショッピー)、アリババが傘下に収めたLazada(ラザダ)、そこに中国系のTikTok Shopping、Temu(ティームー)が加わる。Shopeeの親会社であるSEAはテンセントの資本が入っており、結局、中国のテンセント、アリババ、バイトダンス、拼多多(ピンドードー)の代理戦争のような形になっている。
TikTokは3倍の成長、GMVは1.9兆円
特に目立つのがTikTok Shoppingの急成長と2023年上半期から東南アジア展開を始めたTemuだ。2023年、TikTokの東南アジアでの流通総額(GMV)は130億ドル(約1.9兆円)を超え、2022年の3倍以上となった。TikTokの周受資(ジョウ・ショウズー、チュー・ショウ)CEOは、TikTokの影響力を強化するために、今後3年から5年で数十億ドルを投資すると述べている。
インドネシアで、国内小売業を保護するため、一時期TikTok Shoppingが禁止になるという問題も発生したが、結局、禁止をしたところで国内小売業を守ることはできず、むしろTikTokに関わる国内業者の収益を奪うことになることから、この問題も解決をした。
アリババも2023年12月には、ラザダに6.34億ドルを投資した。アリババはこれまでラザダに対して累計で74億ドル以上を投資している。
Temuが東南アジア市場に参入をしたのは2023年下半期からだが、すでにその低価格が受け、利用者数を大きく伸ばしている。
受けて立つ形となるショッピーの親会社SEAの創業者である李小冬(フォレスト・リー)は、社内メールで「ショッピーは高次元の敵からの強い挑戦に直面している」と述べ、従業員に総力戦モードに入ることを呼びかけた。
実体店舗への影響を不安する声もある
東南アジアで激しいプラットフォームの競争が始まるのは確実だが、実体店舗が受ける影響を不安視する見方もある。なぜなら、東南アジアではこれまで基本的に商品が常に不足をしていたため、小売店は消費者を獲得する競争をあまりしてこなかった。店頭に商品を陳列すれば、それは確実に売れてしまうのだ。そのため、マーケティングや広告ということが発達せずに、小売店はいかに仕入れ先を確保するかの競争をしてきた。
それがECによって、中国から大量の商品が流れ込むようになっている。小売店も消費者も「モノが有り余るほどある」という初めての体験をして、そこでの競争が始まろうとしている。