中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

東南アジアで広まりライブコマース。TikTok Shoppingの東南アジアでの現在

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今回は、TikTok Shoppingの東南アジアでの現状についてご紹介します。

 

もはや世界中でなくてはならないショートムービーSNSとなったTikTok。その本家版が「抖音」(ドウイン)であり、開発をしたのは字節跳動(バイトダンス)であることはもはや説明するまでもないと思います。

バイトダンスと創業者の張一鳴(ジャン・イーミン)の軌跡については、「vol.058:再び成長を始めたTik Tok。テンセントのWeChatと正面から激突」でご紹介しています。

バイトダンスの中核技術はAIで、ChatGPTによりAIがブームになる以前から、「AIリコメンド」(AIによるコンテンツの推薦)という分野を追求してきました。そのAIリコメンドがあることで、抖音は「無名の少女が、一夜で有名人に」という爆発的な拡散力を持つようになりました。このリコメンドシステムについては「vol.094:機械学習によるリコメンドがトレンド。EC「京東」、音楽サービス、TikTokのリコメンドシステム(下)」でご紹介しています。

また、ディープラーニング技術も追求をし、今日の生成AIに近い技術で、ショートムービーをほぼリアルタイムで加工し、特殊効果をかけるという機能を多数搭載し、これも抖音が人気になった大きな要因になっています。このような特殊効果技術に関しては、「vol.102:TikTokに使われるAIテクノロジー。最先端テックを惜しげもなく注ぎ込むバイトダンスの戦略」でご紹介しています。

 

素晴らしすぎる企業としか言いようがありませんが、この数年のバイトダンスは少し様子がおかしくなっています。漏れ伝え聞くところによると、大企業病が蔓延をし出し、スタートアップの頃の情熱が失われているというのです。

このような話は、いわゆる関係者の内訳話のようなもので、主観的な見方であり、話半分程度に聞いておくべきですが、バイトダンスが次の成長戦略を描けなくなっているということは事実です。

バイトダンスは中核技術であるAIリコメンド技術を活かして、最初のヒットサービスである「今日頭条」というニュースキュレーションアプリを開発しました。私も使っていますが、読みたいと思うニュースが無限に出てくる感じで、これ以上優れたニュースアプリは見たことがありません。特に素晴らしいのが、あるトピックに興味を持ち、関連ニュースまで読み始めると、AIが「この人はこのトピックに興味があるのだな」と判断をするらしく、別の角度の記事、深掘りをした記事が山ほど出てくるのです。中国で情勢分析系の仕事をする人で、「今日頭条」を使っていないというのはモグリだと言うことができます。それほど素晴らしいのです。

この今日頭条はあっという間にヒットをし、バイトダンスに莫大な広告収入をもたらすようになりました。そして、次にAIリコメンド技術を適用したのがショートムービーで、それが抖音、TikTokとなりました。抖音も自分が見たいと思うムービーが無限に出てくる感覚です。

ところが、このAI技術を、次は何に適用していくのか。適した対象がなかなか見つかりません。バイトダンスは、次の題材を見つけられなくなっているのです。

 

2019年には、バイトダンスは明らかに教育市場にフォーカスをしていました。20以上ものオンライン教育サービスを買収し、オンライン教育企業にも投資をし、それを統合して、AIを活用したサービスへ改造していく動きを見せました。

教育にAIを活用するのは極めて筋のいい発想です。生徒の理解度を機械学習し、AIがカリキュラムを生成するようにすれば、学習効果が大きく向上することは確実です。

ところが2021年7月に、国務院は通称「双減政策」を打ち出します。学校が出す宿題の量を減らす、課外勉強の時間を減らすことを目的とし、営利の塾とオンライン補習サービスを禁止するという厳しいものでした。生徒たちの負荷を減らして、芸術やスポーツなどの素養教育の時間を生み出し、人間的な成長を促すというものですが、民間の教育産業は壊滅状態となりました。これでバイトダンスの教育事業が頓挫をしてしまいます。

バイトダンスは、次はゲーム市場にフォーカスをしました。2021年3月には、ゲームプラットフォーム「朝夕光年」(https://www.nvsgames.cn/)を開設し、ゲーム企業を買収、投資をし、ゲームのリリースを始めました。

ところが今度は、2021年9月に、国家新聞出版署が18歳未満の未成年に対する規制を発表します。平日は禁止、週末の金土日に1時間ずつという厳しいものです。これでゲームビジネスも暗礁に乗り上げてしまいました。

運が悪いということもできますし、社会状況をうまく分析できていないと言うこともできますが、いずれにせよ、バイトダンスは「次の事業」が見えない状況になっています。

 

それでも業績が悪化をしていないのは、抖音のECが順調すぎるほどに成長をしているからです。バイトダンスは流通総額(GMV)を公開していませんが、報道によると2022年が1.5兆元、2023年は2.7兆元(約56.2兆円)となりました。アマゾンの日本事業が2.5兆円程度ですから、その20倍以上にもなります。それどころか、第3位のECである拼多多(ピンドードー)の2023年のGMVが3.2兆元ですから、かなり迫ってきています。中国のECは、アリババ、京東、拼多多、抖音の4強時代を迎えています。

さらに海外では、TikTokをベースに、TikTok Shoppingを米英、東南アジアでスタートさせ、まだまだ規模は小さいとは言え、成長軌道に乗り始めています。次のコア事業が見つからないという状況の中で、ECが大きな収入をもたらしてくれています。

 

そこで、今回は、

1)なぜ抖音、TikTokのECが強いのか

2)東南アジアのTikTok Shoppingの現状はどうなっているのか

3)ライブコマースは、中国以外でも広がっているのか

4)これから東南アジアのTikTok Shoppingに参入する余地はあるのか

という4つの観点で、東南アジアのTikTok Shoppingの現状を統計数字を使いながらご紹介します。

東南アジアのTikTok Shoppingについては、「vol.200:インドネシアTikTok Shoppingが禁止。浮かび上がった国内産業vs中国のせめぎ合い」でもご紹介しましたが、この時はインドネシアTikTok Shoppingが一時的に禁止になった状況を中心にご紹介をしたため、どの程度TikTok Shoppingが広まっているのかについては、詳しくご紹介できませんでした。今回は、その広がりについてご紹介をしていきます。

今回は、東南アジアでTikTok Shoppingがどのくらい広がっているのかについてご紹介します。

 

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