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旅行需要の回復に伴い生まれた新ビジネス「付き添いカメラマン」

旅行需要が回復をし、陪拍という新しいビジネスが生まれている。旅行先の現地で落ち合い、プロレベルの写真を撮影してくれるカメラマンだ。しかし、その多くがSNSで見つける個人間取引であるためトラブルも増加していると法治網が報じた。

 

旅行に付き添い撮影してくれる陪拍

旅行需要が回復をする中で、注目をされているのが「陪拍」(ペイパイ)と呼ばれるビジネスだ。観光地で同行をして、写真を撮ってくれるというものだ。いわゆる観光地で待っていて、団体さんの集合写真を撮るような昔風のカメラマンは絶滅している。みな、自分のスマートフォンを持っているので、単なる記念写真なら人にとってもらう必要はないからだ。

しかし、陪拍は契約した時間だけ同行してさまざまな写真を撮ってくれる。機材もスマホから一眼レフ、さらには昔のCCDカメラなども用意し、オプションで照明や衣装、小道具なども用意して、プロならではの写真を撮ってくれるというものだ。

この陪拍と契約をするには、SNS「小紅書」(シャオホンシュー)で検索をしてみるのが一般的だ。1時間あたり45元から100元程度で、その間、写真を撮ってくれ、最後にはデータを送信してもらえる。この他、入園料、交通費などの必要経費を支払う必要があり、またレタッチ、メイク、照明などのオプションサービスを希望する場合は追加料金を支払う必要がある。

▲旅行に同行をして、プロレベルの写真を撮ってくれる陪拍。衣装や小道具なども用意してくれることもある。

 

カメラマン兼旅行のお供である陪拍

このような陪拍の多くは若い女性で、学生がアルバイトとしてやっていたり、通常はカメラマンとして働いている人、陪拍が儲かるのでもはや専業になった人などがいる。

注文をするのも、やはり若い世代が多く、グループ旅行でも利用されるが、目立つのが一人旅の若者だ。1人で旅行をすれば、すべての時間を自分のために使える自由を満喫することができる。しかし、同時に、一人旅は寂しい。そこで、陪拍を1時間とか2時間雇用し、一緒に旅行を楽しみ写真を撮ってもらうのだ。

そのため、多くの陪拍が、募集広告に自分自身の写真を掲載している。陪拍を注文する時は、写真の腕前だけでなく、どんな感じの人なのかも重要になっているからだ。

▲陪拍のSNSでの広告。陪拍をする本人の写真が掲載されることが多い。ただ写真を撮るだけでなく、旅行を一緒に楽しむ面もあるからだ。

 

トラブルが起きるとネットでの応酬

一方で、陪拍が流行をすると、それに比例してトラブルも増加をする。最も多いのは、陪拍を予約したら、現地で雨が降ってきたという場合だ。機転の効く陪拍であれば、室内での撮影に切り替えて注文主を満足させるが、注文主が希望した写真が撮れなかったという不満を持つこともある。その場合、料金を割引けというようなトラブルになる。さらに、陪拍が待ち合わせ場所に遅刻をしてくる、態度が悪いなどさまざまなトラブルが発生する。

このようなトラブルは、他のサービスでも起こりがちだが、陪拍の場合は、その後が違う。トラブルが拗れた場合、陪拍の中には、撮影した写真をネットでさらしてしまい、こんな酷い目にあったと投稿するケースがある。逆に注文主もスマホを持っているため、陪拍の写真を撮り、こんな酷い目にあったとネットにさらしてしまう。

これは肖像権やプライバシー権を侵害する行為であり、さらに陪拍側は連絡用のアカウントや電話番号も公開をしているため、不快に思ったネット民から心ない攻撃を受けることもあり、弁護士を間に入れた話し合い、警察への通報といった事態にまで発展する例もある。

SNSでは、機材、価格など詳しい情報が記載されている。SNSを通じて注文を入れ、旅行先の現地で落ち合い写真を撮影してもらう。

 

ゲームのお供をしてくれる「陪玩」も人気に

陪拍のようなサービスは他にもあり、エスコート経済と呼ばれるようになっている。最も広く知られているのは、陪玩(ペイワン)だ。オンラインゲームをする時に、一緒のチームに入ってもらい、ゲームテクニックを教えてもらうというものだ。陪玩をするのも若い女性が多く、男性が注文をすることが多い。ゲームのテクニックを教えてもらうだけでなく、女性との会話も楽しむことができる。しかし、そこから恋愛感情を持ってしまう男性もいて、ストーキング行為に発展するというトラブルもある。

 

エスコート経済が広まるとともにトラブルも増加中

このようなエスコート経済は、「1人でいる自由を楽しみたいが、ずっと1人では寂しい」という若者特有の感覚から生まれたもので、食事、買い物、勉強などさまざまなエスコート経済が生まれている。そのほとんどが、SNSに広告を出して、それを見つけた人が注文するという個人取引になっており、管理をするプラットフォームがないために、トラブルになった場合は問題が必要以上に深刻になるケースが目立つようになっている。

法治網の法律の専門家は、公的機関が所管をして、苦情、通報の窓口を設置し、紛争解決メカニズムを運用するなど、公的機関の管理が必要な段階にきていると提案している。