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二軸マトリクスで整理をするECの進化。小売業のポジション取りの考え方

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今回は、ECの進化史についてご紹介します。

進化史と言っても、「××年、アリババとテンセントのECサイトがライバルとして激しい競争の末、アリババが勝利した」のような編年体ではなく、マーケティング的な見地から、小売業がどのように進化をしてきたかをご紹介します。

例えば、アリババの淘宝網タオバオ)のようなECであれば、構造としては日本の楽天市場とほぼ同じであるために理解をしやすいと思います。しかし、コンテンツECと呼ばれる「小紅書」(シャオホンシュー、RED)やソーシャルECと呼ばれる「ピンドードー」などは、似たものが日本にないために、説明をされてもピンとこない方も多いのではないかと思います。

ましてやライブコマースとなると、日本でもある程度は行われていますが、なぜ中国でライブコマースであれだけ大量の商品が売れるのか、これもなかなかピンとこないのではないでしょうか。

もちろん、日本と中国では国民性も違いますし、社会体制も違います。小紅書やピンドードーとそっくりのECサービスを始めても、日本でうまくいくとは思えません。

しかし、重要なのは、中国のECは驚くほど多様化しているということです。意外に思う方もいるかもしれませんが、中国人は人真似を嫌います。嫌うというよりも人と同じことをすることに価値を見出しません。新しいことを始める時は、人真似からスタートするのは当然ですが、積極的に差別化を図っていきます。

 

騰訊(タンシュン、テンセント)はかつて2005年にアリババのタオバオそっくりのECサイト「拍拍網」(パイパイ)をスタートさせたことがあります。しかし、アリババの創業者、馬雲(マー・ユイン、ジャック・マー)はこうコメントしました。「コピーをするだけの人にイノベーションは起こせない。テンセントの拍拍網の最大の問題はイノベーションがまったくないことです。すべては真似なのです。競争は一種のゲームです。それが、ビジネス競争の味わいというものなのです。拍拍網は数年後に苦いものを飲み込まなければならなくなるでしょう。ポニー・マーもその結果を受け入れなければならなくなるでしょう」。

人真似が倫理的にいけないことだという感覚よりも、人真似ではうまくいかないという感覚が強いのだと思います。実際、拍拍網はほとんどいいところがなく、最終的にEC「京東」(ジンドン)に売却をされました。テンセントはこれ以来、京東やピンドードーなどのECに出資はするけど、自分たちでは運営をしなくなります。オンライン小売をサポートすることにビジネスを見出すようになりました。

 

このような事情があるため、タオバオの登場以後に生まれたECは、タオバオとはまったく異なったポジション取りになっています。もちろん、タオバオは非常に強いECなので、タオバオと同じことをしていたら、誰も使ってくれないということもあったと思います。結果として、中国にはさまざまなタイプのECが生まれてきました。今回は、これをどのような差別化が行われてきたかということをご紹介したいと思います。お読みいただくことで、「小紅書」「ピンドードー」、さらにはショートムービープラットフォームである「抖音」「快手」のECなどにどのような違いがあるのかがはっきりとするのではないかと思います。

 

今回、このECのポジショニングの話をご紹介したいと思ったのには、もうひとつ理由があります。それはテンセントのSNS微信」(ウェイシン、WeChat)に、ショートムービーの「視頻号」(WeChatチャネルズ)という機能と、「微信小商店」(WeChatスモールストア)という機能が追加されています。

これでWeChatは、ショートムービーEC、ライブコマースの機能を持つことになり、さらにSNSを組み合わせることができる体制が整いました。今のところ、WeChatのECが活発になっているという話はまだ聞こえてきません。しかし、なにしろ月間アクティブーユーザ数(MAU)が12.5億人というモンスターアプリです。商品の流通が活発になれば、すべてのECの強力なライバルになることは間違いありません。

もちろん、WeChatのECがうまくいくかどうかは未知数です。しかし、他のECのポジションと重ね合わせることで、うまくいくかどうかも予想できるかもしれません。オンライン小売関係者の間では、このWeChatのEC機能が大きな話題になっています。

ということで、今回はポジションから見たECの進化史をご紹介します。

 

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