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国内旅行は回復したものの、旅行社の業績は回復しない。苦しい旅行業界の事情

2023年、国内旅行に関してはほぼ回復をした。しかし、旅行社の業績は苦しいままだという。旅行が回復をしたことで、投資資金が流れ込み、新たに起業する旅行社が増えているからだと国家旅業が報じた。

 

数年ぶりに沸いている旅行業界

2023年は、中国の国内旅行、海外旅行が回復をし、旅行業界は盛り上がっている。海外旅行に関してはまだまだ弱含みの面があるが、国内旅行に関してはコロナ前にかなり近づいている。大型連休の時の旅行者数は2019年を超えるケースもあるが、通常の時期の旅行者数がまだ回復しきっていないという状況だ。

これに伴い、旅行業が、投資、起業のホットスポットになっている。中には「空中旅行社」と呼ばれるものまで現れた。空中旅行社は、旅行業の資格がない人でも始められるビジネスで、WeChatなどのSNSを使って旅行する人を募り、やり取りをしながら旅行の計画を組み上げていき、手配をするというものだ。つまり、旅行商品の代理購入という建て付けであるため、旅行業の資格がなくても手数料を取ることができる。ただし、個人が開業するため、人によっては質の高い旅行商品が格安で購入できることもあれば、お金だけ送らせておいて旅行商品が手配できないというトラブルも起きている。

それほど旅行業界は沸いている。

 

国内旅行はほぼ回復

旅行業界はどこまで回復をしているのか。2019年上半期と2023年上半期のデータを比較してみよう。

国内旅行の旅行者数は30.80億人だったものが、23.84億人となり、回復率は77.4%となった。

また、旅行収入は2.78億元だったものが、2.30億元となり、回復率は82.7%となった。

2023年下半期の国慶節などでは、2019年以上の旅行者数となったため、2023年通年の統計が出てくれば、ほぼ回復か、場合によっては2019年を上回る可能性もある。国内旅行はほぼ回復をした。

▲国内旅行者数は、下半期の連休では2019年以上になった時期もあるため、ほぼ回復をしていると考えられる。

▲旅行収入もほぼ同じ状況で、回復をしている。

 

旅行業界も回復へ

旅行業界も好調だ。2019年上半期、旅行社は7773.36万人の団体旅行を扱った。延べにすると2.27844億人日になる。また、7812.08万人の旅行者にガイドがつき、延べにすると1.872104億人日となる。

これが、2023年上半期には、団体旅行は5841.91万人、延べ1.425805億人日、ガイドは6922.26万人、延べ1.476984億人日となる。回復率は、団体旅行で62.6%、ガイドで78.9%になる。

これも2023年下半期は好調であったことから、ガイドに関してはほぼ2019年に戻っていると考えられる。団体旅行に関しては、多くの人が個人旅行を好むようになっているため、やや厳しい数字になっている。

▲団体旅行の利用者数は回復が弱い。団体旅行から個人旅行へのシフトがより進んだ。

▲ガイドの利用者数もほぼ回復傾向にある。個人グループ旅行でガイドをつけるというケースが増えている。

 

業界は好調でも各企業の業績は苦しい

しかし、旅行業界は3年ぶりの盛況に沸いているが、各旅行社は厳しい状況に追い込まれている。なぜなら、2023年になってチャンスがあるということから、旅行社の数が激増しているからだ。

2019年6月末の登録旅行社数は3万7794社だった。しかし、2023年6月末時点では5万780社と、34%も増加をしている。つまり、業界の規模はコロナ前と同じかやや少ない程度であるのに、ライバルが増えているために、1社あたりの業績は苦しくなっているのだ。

▲旅行業が回復をしたことにより、新規参入する旅行社が増えている。

 

一社あたりの団体旅行者数は減少

団体旅行利用者数とガイド利用者数を、旅行社1社あたりの人数に換算をしてみると、旅行社の苦境がよくわかる。団体旅行利用者数は2019年上半期に1社あたり2056.8人であったものが、2023年上半期には1150.4人まで減少している。55.9%にまで減少をしている。半減に近い。

また、ガイド利用者数も2067.0人から1363.2人となり、65.9%にまで減少をしている。

▲1社あたりの旅行社数を計算すると、大幅に減少している。これが旅行社の苦しさの原因となっている。

▲1社あたりガイド利用者数も大きく減少をしている。

 

コロナ禍により旅行社のあり方が変わる

オンライン旅行社やネットの発達で、家族旅行、友人同士の旅行で、団体旅行やガイドを利用する人は少なくなっている。オンライン旅行社で、交通機関とホテルのパッケージ商品を購入し、現地ではSNS「小紅書」(シャオホンシュー)で行く場所を探すというのが常識になってきている。

コロナ禍により、旅行をする消費者の意識が、旅行社頼りから個人旅行にシフトしている。旅行社は、団体旅行とガイドという伝統的なサービスだけでなく、現在の感覚に合う新たなサービスを開発しなければ生き残れなくなっている。