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店内モバイルオーダーのQRコードをSNSにあげたら、勝手に大量注文が。誰が料金を負担すべきなのか、専門家の見解もわかれる

ある飲食店の客が、不用意に店内モバイルオーダーの写真をSNSに公開したところ、さまざまな人が勝手に注文をしてしまい、料金が5000万円を超えるという事件が起きた。この料金を誰が負担すべきか、法律家の間でも見解がわかれていると新聞晨報が報じた。

 

飲食店に広がる店内モバイルオーダー

レストランに行くと、スタッフが席に案内してくれて、メニューを見ながらスタッフに注文を伝える。そのような伝統的な光景は、すでに高級レストランのみになっている。

普通の飲食店では店内モバイルオーダーを導入するところが増えている。テーブルにあるQRコードスマートフォンでスキャンすると、WeChatミニプログラムやウェブページにメニューが表示される。そこから注文をする。飲食店側からすると、注文業務の負担が減ること、注文ミスが減少することなどだけでなく、来店客が気軽に追加注文をし、客単価が上昇するというメリットもある。

決済に関しては運用するシステムによって異なっている。WeChatミニプログラムの場合は、注文時にWeChatペイによる決済まで行われてしまい、すべての料理が運ばれてくると、レシートやプレートなどが渡される。これが精算済みの目印となり、帰る時はレジに見せるか、渡すかをすればいい。ウェブページを利用している場合は、注文のみで、決済は通常通り、帰りにレジで行う。

▲店内モバイルオーダー用のQRコード。テーブルにあるQRコードスマホでスキャンをすると、メニューが表示され、注文ができ、WeChatペイで決済も行われる。

 

SNSに投稿したら、勝手に5000万円以上の注文が

2月18日、北京のある人が飲食店に食事にきて、面白いことに気がついた。たまたま自分が座った席のテーブル番号が「202-B2」というもので、「2」がたくさん並んでいる。これを面白がって、SNS「ウェイボー」に「今日の食事のテーブル番号。2がいっぱいある」と投稿した。投稿にはテーブル番号がわかる注文用QRコードが印刷されたプレートの写真をつけた。

すると、自分は頼んでもいないのに、なぜかウォッカ68本、デザートのティラミス1000個などの注文が入り、合計金額が300万元(約5700万円)を超えてしまった。

▲被害にあった注文客がSNSに上げた写真。テーブル番号に「2」が並んでいることを面白がってモバイルオーダーのQRコードの写真を上げてしまった。オリジナルはQRコードにモザイクはなく、誰でもスキャンできる状態になっていた。

 

SNSの写真をスキャンして勝手に注文

QRコードは非常によくできていて、紙に印刷をしなければならないということはない。写真や画像のQRコードでもスマホは問題なくスキャンできる。さらにはQRコードの画像ファイルを直接読み込んでスキャンができるQRコードアプリもある。

この人がウェイボーに注文用のQRコードの写真を載せてしまったために、これが拡散をし、いたずらで注文されてしまったのだ。

▲いたずらで注文されてしまった202テーブルのレシート。注文金額は300万元を超えてしまった。

 

いたずら注文の料金を誰が負担するのかトラブルに

しかし、飲食店側も被害を受けた。注文は飲食店側のシステムに伝わり、厨房のシステムには「何をいくつつくればいいか」が表示される。そのため、料理をつくり始めてしまった。途中でいくらなんでもおかしいと思い、テーブル番号202の客に確認をしたことでいたずらが発覚をした。

飲食店側は注文の入った300万元すべてではなくても、料理をつくってしまった分については支払ってほしいと主張した。しかし、注文主は自分で注文をしたものではないので支払えない、自分が注文した分だけ支払うと主張した。結局、注文主は北京市海淀区万寿路派出所に相談に行き、被害届を出した。

 

店舗は、位置情報を照合するように改修

その後も、いたずらによる注文が相次いだため、飲食店側はモバイルオーダーのシステムを停止した。さらに改修を行い、注文時にはスマホの位置情報を照合し、店外から注文をしようとすると「店内からご注文をお願いします」という表示が出て、注文ができないようにした。

しかし、位置情報は簡単に偽装ができるため、店内モバイルオーダーの脆弱性が根本的に解決をされたわけではない。

 

QRコードスキャンを契約の成立とみなすかどうか

元々は、この注文主がモバイルオーダー用QRコードを不用意にSNSに公開したことが原因だ。

小さくない被害が現実に起きていて、それを誰が負担すべきなのか、法律家の間でも意見がわかれている。いたずらで注文をした犯人に責任があることは明白だが、現実に捜査をして逮捕をすることは難しい。さらに、いたずら犯は1人ではなく、大量にいることも想像がつく。

北京市常鴻弁護士事務所の彭艶軍弁護士は、QRコードをスキャンした段階で、飲食店と来店客の契約が成立しており、来店客の落ち度により問題が発生したのだから、すでに提供をした料理分の料金は来店客が飲食店に支払いを行い、来店客は犯人に対して賠償請求をすることになる可能性があると言う。

ただし、QRコードのスキャンで、契約が成立したとみなすかどうかについては議論があるという。スキャンが契約の成立になるという意識が、飲食店、来店客にあったかどうか、そこが問題になる。契約が成立をしていないというのであれば、飲食店側にも注文内容を来店客に確認しなかったという落ち度があり、一定部分を飲食店側が負担することになる可能性もあるという。

このような事件が起きると、モバイルオーダーの画面には、注文画面の前にさまざまな法律的な同意条件が表示され、「同意する」ボタンを押さないと、注文ができないようになっていくのかもしれない。

ネット民たちのコメントでは、「QRコードの写真をSNSにあげるマヌケは滅多にいない」という声であふれている。