中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

広がる食品のブラックテクノロジー。食品添加物を拒否し始めた市民たち

食品添加物の使用が広がっている。法的に許されたもので、人体に対する悪影響はないとはいうものの、これをブラックテクノジー、ヘクステクノロジーと呼び、避ける市民が増えている。合法であっても、店主の誠実さに問題を感じるからだと琳琳奇聞説が報じた。

 

歩かない鳥の肉を食べている

「あなたの食べた鳥は、一生のうち3mも歩いていない」という言葉がネットを飛び交っている。近年は中国でもケージの中で飼われたブロイラーの鶏肉が出回るようになったことを皮肉っている。以前の中国では、鶏と言えば放し飼いが基本で、いわゆる地鶏しかいなかった。そのため、KFC(ケンタッキーフライドチキン)ですら、他国のKFCと比べて美味しいと言われていた。

このような状況が消え始めている。食品業界も進化をして、さまざまな技術が使われるようになっていっているからだ。このような食品の技術は「ブラックテクノロジー」「ヘクステクノロジー」(ゲームのLoLから由来する言葉)などと呼ばれる。このテクノロジーはさまざまな場所で見られるようになっている。

 

白すぎてふわふわすぎるアルミ饅頭

中国の朝食で定番となっている饅頭。小麦の生地にさまざまな具を入れ、蒸したものだ。せいろを開けると、湯気が立ち上り、食欲をそそる香りが広がり、湯気の中から真っ白で美しい饅頭が出てくる。しかし、普通につくると、ここまで白く、ふわふわにはならないのだ。家庭でつくると、饅頭はやや黄色味を帯び、生地もつまった重たい感じになってしまう。

お店で出す饅頭は、白く美しく、ふわふわ。人々はそれは職人の技によるものだと思っていた。しかし、それは化学合成された膨張剤を入れたものだった。この膨張剤は、消化を著しく悪くするため、大量に饅頭を食べると、消化不良を起こすことになる。このような膨張剤にはアルミニウムが含まれているため、人々はこのような饅頭を「アルミ饅頭」と呼ぶようになっている。

現在では、市場監督局が違法な添加物を使っていないかどうか定期的に検査をするようになっており、添加物を使わないことをアピールする饅頭店も登場しているが、まだ隠れて使っている店は存在している。あまりにも低価格で販売されているのに、白くて美しくてふわふわの饅頭だったら、食べるのを避けた方が賢明だ。

▲白くてふわふわの饅頭。しかし、普通につくると色は黄ばみ、食感はぼってりとするのが普通。技術で白くふわふわにするのは簡単ではない。そのため、ベーキングパウダーがよく使われる。

▲ベーキングパウダーを使うと、饅頭が白くふわふわになる。現在ではアルミ無添加のパウダーが販売されるようになっている。

 

羊の頭を掲げて鴨の肉を売る飲食店

羊頭狗肉=羊の頭を掲げて犬の肉を売るという古事成語は今でも生きている。使われるのは安価な鴨肉だ。昨年2023年9月、ある火鍋屋が市場監督局から指導を受けた。火鍋の具材として提供されていた羊肉ロールのDNA検査をしたところ、鴨肉の成分が検出をされたのだ。

チェーン「張亮マーラータン」でも、羊肉から鴨肉の成分が検出されている。さらに問題なのは、内モンゴル大学の食堂でも羊肉から鴨肉の成分が検出をされたことだ。内モンゴル自治区には回教徒が多く、戒律により食べられる食材が決まっている。鴨肉を回教徒は食べることはできるものの、ハラールによって鴨肉の処理方法が厳格に定められている。このような偽造羊肉に使われた鴨肉は正しい処理方法がとられているかは不明で、回教徒にとっては、知らない間に戒律を犯していたかもしれないのだ。

ネットでは羊肉と鴨肉の見分け方などが出回っているが、専門家は、色や質感は簡単な処理で偽装することができるため、自分の感覚だけに頼ることは推奨していない。怪しいと思ったら、市場監督局などに通報、相談をして、科学的な調査をしてもらう必要があるとしている。

▲羊肉串の店では、高価な羊肉ではなく、安価な鴨肉が混ざっていることがある。

 

コンデンスミルクで白濁させる牛骨スープ

牛骨スープは真っ白で、食欲をそそる香りがして、味わいも深い。しかし、牛骨スープが真っ白になるまでは、長時間牛骨を煮込まなければならない。その間、調理師は鍋に気を配っていなければならないし、朝早く起きて、開店に間に合うように仕込みをしなければならない。

そこで、賢い方法が蔓延をしている。それは牛骨を煮込んだ後に、スプーン一杯のコンデンスミルクを入れるという方法だ。このミルクがきっかけになり、牛骨スープは一瞬で白濁をする。まるで化学の実験を見ているようだ。

ミルクを入れるだけなので、人体に有害ということはないにしても、煮込みが不十分な牛骨スープを飲まされることになる。

▲牛骨スープが白濁するには時間がかかる。コンデンスミルクを入れると、透明な牛骨スープが一瞬で白濁する。

 

食品添加物を使った地ビール

中国のビールと言えば、青島ビールが有名で、これはドイツ人が主体となって設立したビール醸造所が元になっている。また、もうひとつ有名なのがハルピンビールでこちらはロシア人が主体となって設立したビール醸造所が元になっている。

中国のビールはこのような海外由来のものが多かったが、近年増えているのが小さな醸造所で製造するクラフトビールだ。各地に醸造所が設立され、いわゆる「地ビール」が人気になっている。

ビールと呼べるのは、水、麦芽、ホップ、酵母の4つの食材だけから醸造したものだが、食品添加物を使った偽ビールがクラフトビールとして出回っている。難しいのは価格だ。クラフトビールは1本20元ほどで販売されているが、製造原価は10元以上になるために利益は非常に薄い商品となる。しかし、偽ビールは3元ほどの原価しかかからないのに18元前後で販売されている。多くの人が、価格から、ちゃんとしたビールの割引販売、あるいはちゃんとしたビールでコストダウンにがんばったビールと認識してしまう。

地ビールがブームになっているが、食品添加物が使われたビールが多く出回っている。

 

食品添加物の表示義務を望む声があがっている

この問題が根深いのは、食品添加物の多くが合法であるということだ。そのため、大手食品メーカーは使用している食品添加物の情報をウェブなどで開示をしている。しかし、現場で食品をつくる食堂などの場合は、店主が「使っていない」と言えば、調査をしても添加物を検出することは非常に難しい。隠し撮りでもして、添加物を入れている瞬間を撮影でもしない限り、摘発することも難しい。健康の問題よりは、飲食店の顧客に対する誠実さの問題なのだ。そのため、監督官庁も、表示義務違反程度でしか摘発をするすべがない。

市民の間から、食品添加物のすべてをウェブなどで表示することを義務づける法律を制定してほしいという声があがっている。