内モンゴル自治区の大草原は、日照時間が長く遮るものがない。風も強く、太陽光、風力といった再生可能エネルギー発電に向いている。これを利用して、断熱素材、バッテリー設置の移動式住宅「ゲル」が開発されている。住宅内では電気製品を使うことができ、モンゴル遊牧民の生活も大きく変わることになると内モンゴル日報が報じた。
断熱素材、太陽光発電つきの移動式住宅「ゲル」
新エネルギーの普及が、モンゴル遊牧民の生活を一変させるかもしれない。モンゴル特有の組み立て式移動式住宅「ゲル」も、断熱素材のものが登場し、中には太陽光発電で蓄電したバッテリーが備えられる。冬でも内部は16度以上に保たれ、夏には10立方mの容量で8度に保てる太陽光冷蔵庫に牛や羊の肉が保存できる。
移動する時には、太陽光と風力で発電ができる牽引車により、バッテリーに充電をしておける。
内モンゴル自治区フフホト市の博洋可再生エネルギー社が、このような製品を製造して、遊牧民の生活を変えようとしている。
▲断熱素材で作られた移動式住宅「ゲル」。太陽光と風力発電で電力を供給し、生活は大きく電化される。
草原は太陽光発電と風力発電に適している
同社の技術責任者は内モンゴル日報の取材に応えた。「草原は日光が注ぎ、遮るものがありません。それに風も強いのです。新エネルギーには有利な条件がそろっています。太陽光発電と風力発電が効果的であるばかりでなく、コストも安く、手間もかからず、環境にも優しく、設置や使用も簡単なのです」。
この発電により、水の汲み上げポンプ、羊の毛刈り機、粉砕機など、遊牧民の生活に必要な電気機器が使えるようになり、それまで手作業を強いられていた遊牧民の生活は大きく変わることになる。
▲車で牽引できる太陽光、風力発電ユニット。ゲルの移動中にも充電ができ、バッテリーに蓄電をする。
シリコンが産出し、広い草原がある内モンゴル自治区
ウラド草原には、太陽光発電パネルの海原がある。約800ムー(約53.3ha、東京ドーム11個分)の太陽光発電パネルが敷き詰められている。内モンゴル自治区の内モンゴル衆曜電力が設置したものだ。40MWpの発電能力があり、2.5万KWhの電力を供給している。内モンゴル自治区はシリコンの産出量が多いことを利用して、太陽光発電産業が成長している。
太陽光発電基地は、1時間から2時間に1回は人が巡回をする必要があったが、インターネットやドローン、人工知能を活用することで、巡回の負担は減少し、現在、この太陽光発電基地は2人の巡回員で運用できている。コストが下がるばかりでなく、トラブル率も減少している。
▲ウラド草原に建設された太陽光発電基地。広さは東京ドーム11個分。ドローンが巡回をするため、2人の巡回員で運用できている。
内モンゴル自治区の特産品はポリシリコンと再生可能エネルギー
中国の「再生可能エネルギー中長期発展計画」によると、2050年までに太陽光発電を600GWにまでする計画だ。2050年には、25%が再生可能エネルギーとなり、その中でも5%分が太陽光発電となる予定だ。
内モンゴル自治区のポリシリコンの生産能力は2.2万トンであり、10万トンの生産能力まで拡大する計画が進んでいる。また、内モンゴル自治区は、太陽光発電基地を設置するのに適した土地が多いため、太陽光発電が内モンゴル自治区の大きな産業になっていくことになる。
これまでは、漢方薬やきのこが内モンゴル自治区の特産物だったが、それに太陽光発電の電気が加わることになる。電気が豊富な内モンゴル自治区では、伝統的な遊牧民の生活も電化され、生活も大きく変わっていくことになる。