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商品を送り返すことなく返品ができる「返金のみ」返品。拼多多の新しいルールに販売業者たちは猛反発

拼多多の新しいルールに販売業者たちが猛反発をしている。それは返品をしたい時に、申告をすれば返金がされ、商品はそのまま送り返さなくていいというものだ。一部の販売業者たちは不満を爆発させ、拼多多直営店に焼き討ちという嫌がらせをする事態になっていると伯虎財経が報じた。

 

EC店舗が「焼き討ち」に会う

アリババの淘宝網タオバオ)、京東(ジンドン)に迫り、EC3強のひとつと呼ばれるようになったソーシャルEC「拼多多」(ピンドードー)が揺れている。拼多多が自社プラットフォーム内に出店した自営店舗「多多福祉社」が消費者からの焼き討ちにあい、開店からわずか4時間で閉店するという事態になった。さらに、創業者の黄(ホワン・ジャン)の関連会社である楽其科技が運営に携わる数十の店舗も同様の焼き討ちに遭っている。

この焼き討ちとは、大量の注文を入れ、新疆ウイグル自治区などのでたらめの遠方の住所を指定し、その後、返品処理をするというもの。そして、レビュー欄に商品に対するネガティブなコメントを残す。やっているのは、拼多多に参加をする販売業者たちだ。拼多多に対する不満が爆発して、このような行動に出たものと見られ、拼多多運営では公安に被害届を出すとコメントするなど対立が続いている。

▲2022年の各ECの流通総額(GMV)。各社はGMVの公表をしないところが増えているため、調査会社、メディアによる推定値。アリババ、京東、拼多多の3つが「三大EC」と呼ばれる。

 

行き過ぎた消費者保護の返品ルール

この販売業者たちの不満は、拼多多の返品ルールをめぐってものだった。今、多くのEC店舗で、「7日間理由なしの返品」「返送費保険」などの保障サービスが標準になっている。到着後7日間であれば、理由を問わず返品が可能になる。商品に問題があるという場合だけでなく、気に入らない、やっぱりやめるなど消費者側の勝手な都合でもかまわない。さらに、返品するための宅配便代は、販売業者側が保険に入っているため無料で返品できるというものだ。

ECでの購入はいまだに不安がつきまとう。スマホの写真だけでは、サイズ感と質感がなかなかわからない。ECで椅子を買ってみたら、思ったよりも大きかった、小さかったということはいくらでも起きる。素敵に見えたワンピースを買ってみたら、実際には非常に安っぽい質感だったということも起きる。このような理由で、多くの販売業者が無料返品の保障をつけている。これであれば、買ってみて、実物を見て判断ができるからだ。

さらに進んで、洋服や靴などのサイズがあるものは、3サイズぐらいをまとめて注文し、合わせてみて、不要なものを返品するという買い方も定着をしている。

このような仕組みだと、ECで購入をしていつも返品するという嫌がらせや暇つぶしをするおかしな人も現れてくる。しかし、販売業者はこのような不良顧客を把握をすると、EC運営に通報をし、その顧客から注文が入ると「在庫切れのお詫び」のメールを送る。それでその消費者が騒ぎ出し、EC運営にクレームを入れると、内容次第でアカウントを凍結されることになる。こうして、不良な顧客は排除され、消費者はECで買い物がしやすくなり、販売業者は商品が売れるようになり、うまく回っていた。

▲拼多多のある店舗の保障条件。「7日間理由を問わず返品」「返品送料負担」などはほぼどの店舗も採用する標準保障条件になっている。

 

商品を返送しなくていい「返金のみ」返品

拼多多では、この返品の仕組みをさらに進めて、「返金のみ」制度を全販売業者に採用するように求めた(事実上の強制)。「返品のみ」とは、消費者が返品をしたいと思ったら、そのことを販売業者に通知をするだけで返金がしてもらえる。そして、手元の商品は送り返さなくていいというものだ。

誰もが心配になるのは、この仕組みでは返金を受けて商品だけを使う、取り込み詐欺のようなことができてしまうのではないかということだ。しかし、その心配はそれほどない。販売業者は「返金のみ」を利用した人のリストをつくり、拼多多運営に通報をし、頻繁に「返金のみ」を利用されるようであれば、「在庫切れのお詫び」のメールを送り、その消費者には販売をしないようにする。拼多多運営ではそのような情報が複数あれば、その消費者のアカウントを停止する。

▲拼多多は、低価格をウリにしたEC。特に日用品は考えられない安さで販売されている。

 

悪質な業者を排除する仕組みでもある「返金のみ」

問題は、販売業者の損失だ。商品代金は返金をしてしまうのに、商品は戻ってこない。大きな損失を被ることになる。

しかし、拼多多運営の考えでは、これは販売業者にもメリットの多い仕組みになる。なぜなら、返品送料を負担しなくてよくなるからだ。拼多多で販売する商品は低価格帯のものが多い。商品の仕入れ値よりも、返品送料の方が高くつくことも多い。そのため、「返金のみ」にした方が、販売業者の負担するコストは下がるというのが拼多多運営の考えだ。

さらに、拼多多は、この施策により、販売業者と商品の質を向上させようとしている。商品に品質的な問題がなければ「返金のみ」を利用する人の割合は少なくなるはずだからだ。

特に問題が大きいのが誇大広告だ。販売業者は少しでもたくさん売ろうとして、商品ページには美しい写真を使い、耳障りのいい広告コピーを使う。嘘にはならないが、消費者の誤解を誘発するようなぎりぎりのことをする業者もいる。しかし、これが消費者にとっては「ECの商品ページは信用できない」という不安につながる。

拼多多できちんと商品を販売し、ビジネスを継続させていきたいという販売業者は、商品の質を向上させ、商品ページの表現を誠実なものにしていけば「返金のみ」による被害はほとんど受けない。しかし、一気に売り切ってしまって儲けたいとしか考えない不良業者は、誤解を誘う商品紹介で大量に売れたとしても、消費者が「返金のみ」を使うため、大きな損をすることになる。拼多多としては、このような不良販売業者を排除したいというねらいがあるようだ。

 

タオバオから排除された業者を育ててきた拼多多

ECは常にこのような悪質な販売業者と戦ってきた。2003年にスタートしたアリババのECタオバオも、低品質、偽ブランド品を誇大広告で販売する悪質な販売業者をいかに排除するかが大きなテーマになっていた。タオバオは、1000元の保証金を支払えば、誰でも出店ができ、出店料、販売手数料などはかからない。そのため、悪質な販売業者が入り込み、当初は偽ブランド品と低品質商品に悩まされた。

アリババは、タオバオとは別に出店料や販売手数料の支払いを必要とする淘宝商城(後の天猫)を新設し、消費者が安心をして買い物ができるEC環境を整えた。タオバオも管理基準を厳格化し、不誠実な行為をする悪質な販売業者の排除に乗り出した。

2015年に創業した拼多多は、このようなタオバオから排除されて行き場を失っていた販売業者の受け皿となった。拼多多は、このような行き場を失った業者たちを丁寧に育てることを行なった。ビジネスを継続させるには消費者の信頼を得ることが重要で、商品の品質をどのようにあげていけばいいか、どのように消費者に伝えればいいかをセミナーを開催して教えていったのだ。それでも、当初の拼多多は低品質と偽物が多く販売され、都市の消費者からは相手にもされなかった。しかし、2018年頃から成果が出始め、その価格の安さから地方都市で火がつき、2019年には拼多多が補助金を出す形で実質的な大幅割引販売をする「百億補助」キャンペーンを行い、最新のiPhone11を500元近く割引することで、都市消費者の心をつかみ、タオバオ、京東と肩を並べるECに成長をした。

▲拼多多が米国と日本などで展開をする越境EC「TEMU」(ティームー)。日本のECとは次元の異なる低価格ぶりで多くの商品が販売されている。

 

消費者は歓迎をしている「返金のみ」

拼多多のおかげで、弱小販売業者から大きく成長できた販売業者もたくさんいる。しかし、タオバオ時代から弱小のままの販売業者もたくさんいる。そのような業者にとっては「返金のみ」は、もはや生きていくことができない決定打となってしまった。

そのような業者たちは、拼多多の直営店に対して、報復のような嫌がらせをして、不満を爆発させた。

しかし、多くの消費者は、拼多多の「返金のみ」施策を歓迎している。買い物がしやすくなる上に、悪質な業者が淘汰されることになり、安心をして買い物ができるようになるからだ。

拼多多はTemuという名称で、米国や日本での販売も始めた。海外での販売を始めるためにも、質の悪い販売業者の排除は必要なことだった。拼多多が販売業者を育てる時代は終わった。これからは、誠実なビジネスをする販売業者しか生き残っていくことができない。