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アリババが新小売事業を売却か?業績好調な新小売を売却する理由とは

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今回は、アリババの新小売事業売却についてご紹介します。

 

アリババが、新小売系事業である新小売スーパー「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)、新小売百貨店「銀泰百貨」(インタイ、Intime)、スーパー「大潤発」(ダールンファー、RTマート)などを売却するという報道が続いています。これが事実だとすれば、アリババは、2016年以来推し進めてきた新小売戦略を放棄することになります。

アリババは昨年3月に大きな組織改革を行いました。分社化をして「1+6+N」体制にするというものです。主要6事業、その他の事業(N)をすべて分社化し、ホールディングカンパニー(1)の下で、それぞれが株式公開を目指します。フーマなどの新小売系事業はNに属しています。

▲アリババの新体制「1+6+N」。ホールディングの下に主要6事業が分社化。さらにその下に独立事業体となっていたNも独立。すべてが株式公開を目指すというもの。CEO、事業などは発表時のもので、現在は変更されている部分がある。

 

ところが、アリババは投資会社を設立し、そこに新小売系株式の管理を移管しました。これは、金庫にしまってあった株券を財布の中に移したということで、売却の可能性があるのではないかという観測記事が出るのは当然です。アリババ、フーマ、その他の事業部は、もちろん、肯定も否定もしないノーコメントを貫いています。

 

アリババの2023年9月期の四半期報告書に付属する電話会議の中で、蔡崇信(ツァイ・チョンシン、ジョセフ・ツァイ)会長が、この件に触れました。株主に対する利益還元策としてアリババはどのような策を考えているかという質問に対する回答として、ジョセフ・ツァイ会長は4つの施策を答えています。その中のひとつとして、次のように発言しました。

「非コア事業資産を現金化します。資本の結びつきはあるものの、低成長しかしていない事業があります。これらは、私たちのコア事業ではなく、戦略的な事業でもありません。株主のみなさまに還元ができるように、このような事業を現金化する創造的な方法を評価している最中です」。

この非コア事業とは新小売系現業であると見るのが妥当で、新小売の売却はほぼ確定的となりました。つまり、アリババは新小売戦略から撤退をすることになります。

 

新小売戦略は、2016年に創業者の馬雲(マー・ユイン、ジャック・マー)が高らかに宣言をしたものです。「純粋なECはすでに死んでいる。オンライン小売とオフライン小売は深く融合し、すべての小売業は新小売となっていく」と語り、翌2017年には新小売スーパー「フーマフレッシュ」の展開を始め、さらに2014年に買収していた百貨店「銀泰百貨」の新小売改造を始めます。

ご承知の通り、この2つの新小売は大成功でした。フーマは坪効率(単位面積あたりの販売額)が一般的なスーパーの4倍以上という強い収益力を見せつけました。銀泰百貨はEC+即時配送、ライブコマースを組み合わせ、オンラインでも店舗でも購入できる体制を整え、2020年の新型コロナ感染拡大による店舗営業休止では「お店は閉まっていても、オンラインで開いているクラウド百貨店」と大きな話題になりました。他の百貨店が営業休止していることもあり、銀泰百貨のECには、それまでの店舗来客数以上の人がアクセスをしてきたほどです。その後も、百貨店が軒並み売上が前年割れしていく中で、唯一と言ってもいいほど、毎年成長している百貨店チェーンになっています。

つまり、新小売戦略は華々しい成果をあげました。では、なぜ、アリババは新小売戦略を放棄するのでしょうか。ここをご説明するのが、今回のテーマになります。

 

昨年3月、アリババが大規模な組織改変をして、一言で言えば「すべての事業部が株式公開を目指す」となった時、最も早く株式公開に到達できるのは、フーマと菜鳥物流(ツァイニャオ)だと言われていました。実際、この2社はすぐに上場準備に入ります。菜鳥に関しては順調で、現在でも引き続き上場準備作業が続いています。

しかし、フーマには問題が発生しました。フーマ側はでは上場時の企業価値を60億ドルから100億ドルという想定で準備を進めていました。しかし、香港の投資家たちが内示をしたのは40億ドルという低いものだったのです。評価額が大きくズレるということは、上場計画に狂いが生じることになります。

これにより、2023年9月期の四半期報告書には、正式に「新規株主の価値を拡大できるよう、市場の条件や要因を再評価するため、フーマの上場計画は一時停止をしている」と記述されました。

では、なぜフーマに対する投資家の評価が想定外に低かったのでしょうか。これがアリババが新小売戦略を放棄する大きな原因になっています。

今回は、なぜ投資家は新小売を低く評価するのか、そしてアリババはなぜ新小売戦略を放棄しようとしているのかについてご紹介します。

 

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