中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

食堂の店主でも生成AIでポスター制作。アリペイが生成AIポスター制作機能をリリース

スマホ決済「アリペイ」が生成AIで簡単にポスターがつくれる機能をリリースし、個人経営の食堂の店主がポスターを作り始めている。技術がなくても、お金がなくても、時間がなくてもつくれるということから広く利用され始めていると中国網が報じた。

 

食堂の主人が生成AIでつくるポスター

2023年11月7日から、浙江省烏鎮の烏鎮インターネット国際展示センターで、「2023インターネットの光」博覧会(WICExpo、https://expro.wicwuzhen.cn/)が開催された。この博覧会で話題になったのが、杭州市の大馬弄で30年前から煮込み料理の食堂を営む徐おばあちゃんが、生成AIを使って作成したポスターだ。

朝4時に起きて、料理の仕込みを始める徐さんには、ポスターなどつくっている時間もお金もない。つくり方もわからない。しかし、息子から生成AIでポスターをつくれるサービスを教えてもらって、自分のスマホで撮影した料理の写真を使って、ポスターをつくり、これを店頭に貼ったところ、評判となったのだ。

▲話題になった徐おばあちゃん。古い食堂を営んでいるが、生成AIでポスターをつくり評判となった。

▲徐おばあちゃんがつくったポスター。スマホで料理の写真を撮り、アリペイの機能で制作した。

▲WICExpoのアントグループのブース。アリペイの生成AIを使って制作された飲食店のポスターが掲示され話題となった。

 

郷土料理の小さな食堂も生成AIでポスターをつくる

今年60歳になる沈志華さんは、杭州市の西湖のほとりで「糟味館」を営んでいるが、やはり生成AIを使ってポスターをつくり、店頭に貼り出したところ、評判になっている。

糟味館で出している糟肉は、もち米を発酵させた調味料に漬けた肉のこと。独特の臭いがきついが、味が染みて美味しく、紹興酒に合うと評判だ。その伝統的な郷土料理を出す飲食店が、生成AIを使ったポスターを貼り出すというギャップが面白がられている。

▲沈志華さんが生成AIを使ってつくったポスター。

▲糟味館を経営する沈志華さん。アリペイの生成AIを使ってポスターを制作した。

 

聴力を失った店主は生成AIポスターでお客さんとコミュニケーション

もちろん、若い世代も生成AIを使ってポスターをつくっている。杭州市で「無声雑糧煎餅」を経営する張先進さんも、生成AIでポスターをつくり、店頭で使っている。張先進さんは聴力を失っているため、お客さんと会話をすることができない。そこで、生成AIのポスターにメッセージを書くことで、お客さんと会話をしようとしている。例えば、「人生でチャンスと出会ったら、煎餅をつかむように、しっかりと握りしめてください」など、伝えたいメッセージをポスターに記載をしている。

▲聴覚を失っている張先進さん。生成AIでつくったポスターにお客さんに伝えたいメッセージを書いて、お客さんとコミュニケーションをとっている。

 

アリペイの生成AI機能でポスターがつくれる

ある調査によると、消費者は同じポスターを3回見るだけで、その商品の購入率が60%増加をすると言う。飲食店では特定の料理のポスターを貼ると、その料理の注文数が30%あがると言われている。

しかし、ポスターを制作するには、プロに頼むと、200元から500元はかかる。これは小さな飲食店にとってはかなりの負担になる。

このような課題を解決するため、アリババのスマホ決済「支付宝」(アリペイ)では、ミニプログラム「創意海報」を2018年から提供している。当初はポスター用のデザインツールだったが、2023年に生成AI機能が搭載され、プロンプトでポスターの内容を指定すると、生成AIがポスターをつくってくれ、さらにテキストを変えられる機能を提供している。自分や自分の店、料理の写真も使うことができ、誰でも簡単にポスターがつくれるようになっている。すでに1000万人以上の人が、この「創意海報」でポスターをつくっている。

小さな料理店でも生成AIによるポスターを掲示しているところはもはや珍しくなくなっている。

▲アリペイのミニプログラムにある生成AIによるポスター制作機能。ゼロからつくることもできるが、サンプルを選んでつくるのが簡単。文字などを変えて、あとはコンビニのプリンターで印刷をすればポスターができあがる。