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若者の間に流行る位置情報ゲーム「猫から隠れる」ゲーム。社交恐怖症の若者が参加

若者の間で「猫から隠れる」というゲームが流行している。公園などで数十人から数百人の規模で行われる位置情報を使った鬼ごっこ+隠れんぼだ。このゲームが流行る背後には、若者の間に広がる社交恐怖症が関係していると極客公園が報じた。

 

若者の間で流行る位置情報鬼ごっこ

若者の間で「猫猫」(猫から隠れる)という遊びが流行している。一言で言えば、大規模な鬼ごっこと隠れんぼを合わせたような遊びだ。SNSで参加者を募り、公園などに集まり、位置情報がグループ共有できるマップアプリ「高徳地図」などで参加登録をする。この時、抽選で猫かネズミに割り振られ、役割を示すブレスレットをもらい、それを装着する。ゲームがスタートすると、全員の位置が共有されるため、ネズミは猫の位置情報を見て逃げる、猫はネズミの位置情報を見て捕まえるという単純なゲームだ。

ゲームフィールドは多くの場合、公園内に限られ、ネズミは走って逃げてもかまわないし、木の上やゴミ箱の中に隠れてもかまわない。捕まったネズミは、猫に役割が変わり、最後の一匹となるまで逃げ切ったネズミが優勝ということになる。

▲位置情報のマップを見て、ネズミ役の人は猫から逃げ、猫役の人はネズミを捕まえる。

 

社交恐怖症の若者が集まるゲーム

プレイヤーはSNSで連絡を取り合うことができるため、単なる鬼ごっこ+隠れんぼよりも戦略性があがる。猫は、協力をして、ネズミを追い込んで捕まえることが可能になるからだ。

とはいえ、基本的には鬼ごっこだ。学生や社会人といった20代がなぜ夢中になるのだろうか。社会科学者たちは「社恐症」との関係を論じている。社恐とは社交恐怖症のことで、人付き合いがうまくできない人たちのことだ。人と話そうとしても、うまく話をすることができず、おかしな対応をしてしまう。一人になるとその体験が自己嫌悪を呼び起こし、人と会うのがどんどん怖くなっていってしまう。これは一部の内向的な人に限られた話ではなく、大人になるために人付き合いの経験を重ねなければならない学生に共通した感覚になっている。

また、最近は「e人、i人」という言葉も流行している。心理学の性格分析などでextrovert(外向型)と判断された人がe人、Introvert(内向型)と判断された人がi人ということになる。日本のネット用語の「陽キャ陰キャ」という言葉に近い。

ただし、中国の感覚が異なるのは、社恐症は大人になる前に克服をしなければならないことだと考えられていることだ。そのため、i人という自覚がある人はさまざまな集まりに顔を出して、社交に慣れていこうとするが、なかなかうまくいかない。ところが、猫猫のような自由参加のゲームであれば、人と話さなくてもかまわないし、ゲームを進める中で自然に人と話ができるようになる。

日本でも、お見合い形式の合コンは敷居が高いが、料理をつくるとか登山をするという目的型合コンには人が集まるのと同じだ。

▲全員に蛍光のブレスレットが渡され、ゲームの参加者であるか、ネズミ役か猫役かがわかるようになる。

▲木の上に隠れるのは定番で、マンホールの中に隠れる強者もいる。

 

地図アプリも対応機能を提供

位置情報のグループ共有機能を提供するマップアプリ「高徳地図」では、2023年の上半期にすでにこのような遊びのために利用されていることに気がついた。2023年の1月にはグループ共有機能による遊びが行われたデータがあり、7月と8月は屋外で遊ぶのに気候も適しているため、利用が爆発的に伸びたという。

この遊びは、2023年2月にはすでにショートムービー「抖音」(ドウイン)のムービが投稿され、関連動画を含め3000万回以上再生されている。もともとは仲間同士の5人程度で遊ぶゲームだが、SNSでの拡散とともに参加人数が増えていき、数百人規模で行われるようにもなり、ここから社恐族の参加が目立つようになっていった。

また、大規模なイベントになると、ブレスレットなどの用意もあるため、イベント会社が主催をし、参加料を徴収するようにもなっていった。当初は9.9元というものが多かったが、29.9元というもの登場し、終わった後に賞品や軽食が提供されるイベントにもなっている。

▲捕まったネズミは猫役に変わるため、最後にはこのような状況になる。最後まで生き残ったネズミが優勝。