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都市は人間のためだけのものではない。テンセント本社がバードストライクを防ぐためにしたこと

微信」(ウェイシン、WeChat)などを開発運営する騰訊(タンシュン、テンセント)の深圳市にある本部ビル「濱海ビル」のガラス一面に特殊なフィルムが貼られる改修が行われた。そのフィルムは、水玉模様で、装飾ではなく、バードストライクを防ぐものだと封面新聞が報じた。

 

鳥にとって危険な高層ビル

大都市は人間だけのものではなく、野生の動物も暮らしている。その中で、高層ビルは鳥にとって非常に見づらい障害物となる。ガラス窓には、空や風景が反射をして写っている。鳥はそれが向こう側にある風景だと思ってガラス窓に衝突をするバードストライクが起こる。また、向こう側の風景が透けている場合も、鳥はガラス窓の存在に気づかず衝突してしまう。

また、夜間は高層ビルの照明により、鳥は混乱をし、光のある方に飛ぼうとし、やはりバードストライクを起こしてしまう。特に繁殖期には、まだ飛行に慣れていない雛鳥が多く衝突するという。春と秋の渡りの季節には、多くの鳥がビルに衝突をして死んでしまうことが観察されている。

▲テンセント濱海ビル。ガラスが多用されており、鳥にとっては危険な障害物となっていた。

 

バードストライク防止フィルムを貼る

2023年5月、テンセントは、崑山デューク大学生物多様性・持続可能性研究所、全国バードストライク防止ネットワークと協働して、北京市と深圳市の自社ビル付近で、調査ボランティア活動を行った。

これによると、深圳市の濱海ビルで、6羽の鳥が死んでいるのが発見された。そのすべてが打撲症状があり、バードストライクによる死亡だと推定された。ボランティアチームは、鳥が見やすいフィルムを貼るべきだという結論を出した。直径1cm以上の水玉が5cm以下の間隔で並ぶシートで、多くのバードストライクを防止できるとした。

▲確認された鳥の死亡例。打撲症状があり、高層ビルに激突したことが原因であると推定される。

▲改修が進められる深圳市のテンセント濱海ビル。水玉のシートを貼ることで、バードストライクを防止する。

 

人間と動物が共生できる都市づくり

バードストライクの問題は、深圳市だけで起きているのではない。2023年4月、四川省成都市の昆虫研究者が、都江堰のショッピングモール付近で、国家二級保護野生動物であるソウシチョウが大量に死亡しているのを報告している。2022年11月には、貴州省貴陽市の恒大センター付近でバートストライクが原因で死亡したと思われる鳥が多数発見された。

このような状況を受けて、テンセントの濱海ビルでは、バードストライク防止シートを全面に貼ることになった。崑山デューク大学環境研究センターの李斌斌教授は封面新聞の取材に応えた。「テンセントがガラス窓を改修したことは、中国で鳥に優しい建築デザインに改修した最初の例となるかもしれません」。

李斌斌教授は、現在の防止フィルムのデザインは、過去の経験から基づいており、バードストライクを完全に回避することはできないかもしれないが、大きな効果をあげるはずだとした。これは非常に重要な一歩であり、今後も調査研究を行うことが大切だとした。

李斌斌教授は、高層ビルを建築する時に、人間だけでなく、鳥などの野生動物にも配慮されたデザインが採用されることが理想的だとも言う。近年の都市の高層ビルでは、一面ガラスで空が鏡のように映っているデザインが好まれる傾向にあるが、そのようなビルは今後減っていくことになるかもしれない。都市の景観デザインが大きく変わることになるかもしれない。

▲窓に貼られたバードストライク防止シート。小さな水玉がついている。これで完全に防げるかどうかは不明だが、今後状況を見て改良されていくという。