中国のさまざまな都市で薬局が急増している。統計によると62.3万店となり、これは中国茶カフェの店舗数よりも多い。医薬品はオンラインでも購入できるのに、いまだに多くの人が店舗で買っていると華商韜略が報じた。
薬局が急増中の「なぜ」?
現在、中国のあちこちで、薬局が増加をしている。ある人が、SNSに、自宅の近所の通りにはわずか500mの間に7軒もの薬局があると投稿すると、あちこちからうちの町でもそうだという投稿が相次いだ。
それはデータでも裏付けられている。2012年に中国の薬局数は44.3万店だった。それが2022年には62.3万店にまで増えている。わずか10年で18万店も増えているのだ。あるネット民は「中国茶カフェよりも多いのではないか」と述べたが、それも間違いではなく、中国茶カフェはさまざまなチェーンを合計すると48.6万店でしかない。医薬品は、もはやタピオカミルクティーよりも買いやすいのだ。
新型コロナにより薬局の出店制限が大幅緩和
この薬局の急増の背景にあるのは、薬局の出店制限が2021年に緩和をされたことがある。従来は、薬局が過当競争に陥って、その地域から薬局が消えてしまうということを防ぐために、各都市によって「半径500m以内に3店舗まで」「薬局間の距離は350m以上なければならない」など、さまざまな出店規制があった。
これが新型コロナの感染拡大で、当初はマスクから始まり、解熱剤などの需要が高まり、薬局での在庫不足が深刻となった。これにより、多くの都市で、出店規制を緩和させ、新規出店が急増をしている。
進まないオンライン医薬品販売
しかし、モバイルインターネットが進んだ中国では、わざわざ薬局に行かなくても、オンラインで薬を買うことができるのではないか。
ところが、オンラインで薬を買う人は極めて少ない。2014年、中央電子台はニュース番組の特集で、オンライン薬局で購入する医薬品には偽物や低品質のものが多いことを警告した。2023年にテンセントが行った偽医薬品の調査でも、自分や親戚、友人が偽医薬品をオンライン薬局で買ってしまった経験がある人は60%以上にものぼることがわかった。中には、偽医薬品と気づかずに服用し続けている人もいるはずだ。
厳しすぎる免許基準が違法販売を生んでしまった
中央政府は、オンラインでの医薬品販売については、服用方法の告知などに問題が生じ、低品質の医薬品が販売されてしまうリスクがあるために、営業免許の発行に厳しい基準を設けている。このため、2021年3月現在で、正式に認可されたオンライン医薬品販売業者は693社しかない。しかし、オンライン薬局を検索してみると、すぐに1000以上の業者が見つかる。
医薬品のオンライン販売に厳しい基準を設けたため、かえって違法販売をする業者が増加をしてしまった。公安も積極的に取り締まりを行っているが、健康被害が明らかになった業者を優先せざるを得ず、取り締まりがなかなか追いつかないのが現状だ。
特に、忌避がある処方薬の販売は取り締まりが難しい。医薬品の中には、特定の持病がある人は服用してはならないものがある。薬局であれば、対面で確認をしたり、医師の処方箋を求めるなどができるが、オンライン販売ではしばしば自分でチェックを入れるだけで買えてしまう。これで問題が生じても、チェックを入れた本人の責任も重く、販売業社の責任を問うことは難しい。
増えすぎた増えすぎた薬局の淘汰整理が始まる
国家市場監督管理総局は、2022年12月に「薬品オンライン販売監督管理法」を施行した。販売責任を明確にし、処方薬の販売の管理を厳格化するという内容だ。これにより、医師に処方箋を書いてもらい、認可されているオンライン販売チェーンで医薬品を購入する分には、ほぼ安心ができる体制となった。
しかし、人々の習慣はすぐには変わらない。「オンライン薬局は怖い」「オンライン薬局は見極めが面倒」というイメージがあり、多くの人がオフラインの薬局で医薬品を買い求めようとする。このため、店舗型の薬局が増えているのだ。
しかし、すでに過当競争となり、販売額を下げるなどの価格競争が始まっている地域も多い。遠からず、薬局の淘汰整理が始まると見られている。