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地下鉄に導入される「大小交路」運行方式。混雑する部分だけ折り返し運転をして混雑を緩和

中国の地下鉄の混雑度は限界に達している。90秒間隔での運転をしても乗客を乗せきれない。そこで、混雑する部分だけ折り返し運転をする大小交路と呼ばれる運行方式が各都市の地下鉄に導入されていると財経雑誌が報じた。

 

中国の地下鉄は90秒間隔で運行

中国の大都市の地下鉄は常に混雑をしている。運行ダイヤは設定されているが、それを気にする人はほとんどいない。ホームの液晶掲示板も、日本のような「13:26次発」という発車時刻を案内するのではなく、「現在3分間隔で運行中」などのような表示をする。そして、ピーク時には90秒間隔で運行が行われる。それでも、乗客を運びきれないことがある。

2022年、広州地下鉄は23.61億人、上海地下鉄は22.88億人、北京地下鉄は22.63億人、深圳地下鉄は17.50億人の乗客を運んだ。

成都地下鉄の1号線の朝の混雑。どの都市でも似たような状況になる。

 

路線乗客数の不均衡が駅の混雑につながる

広州地下鉄の乗客を、路線別に見ると、最も多いのが3号線で、1日の乗客数は139.10万人にも達する。この3号線の乗客数が多いのも問題だが、さらに問題なのが、その他の路線と大きな差があることだ。広州地下鉄で2番目に乗客が多いのは2号線で79.54万人と2/3程度で“死亡路線”3号線とは大きな差がある。これが乗り換え駅などで乗り換え客の渋滞を引き起こし、問題を起こしている。

北京地下鉄の運行サービス管理部のシニアエンジニア、蔡宇氏は言う。「地下鉄ネットワークの乗客には不均衡が見られ、郊外駅から乗客が増え、都市の中心駅で大きな混雑を生み出しています」。

広州市地下鉄の乗客数の統計。3号線が突出して多く、これが3号線の乗り換え駅での混雑の原因となっている。

 

導入される大小交路方式の運行

この問題に対応するために、「大小交路」と呼ばれる運行方式が採用をされている。この大小交差路は、ひとつの路線のうち、最も大きな客流がある場所を特定して、折り返し運転をしてしまうというものだ。

▲南寧地下鉄が行っている大小交路の運行方式。これにより、運輸能力は約42%向上したという。

 

需要の多い部分だけ折り返し運転し本数を増やす

広西チワン自治区の南寧地下鉄では、2021年4月から、大小交路の運行方式を採用した。南寧地下鉄1号線は、石埠から火車東駅までを結んでいるが、途中の朝陽広場、火車駅、広西大学が乗り換え駅となり、火車東駅は長距離列車の駅であるため、火車東駅から広西大学の利用客が多い。一方、広西大学から石埠の間の利用客はそれほど多くない。

そこで、利用客の多い火車東駅から広西大学を小交路として折り返し運転を始めた。つまり、火車東駅を出発した列車は、終点の石埠までいく列車と広西大学までしか行かない列車の2通りがあることになる。火車東駅から広西大学の小交路では、列車が早く循環をすることになるため、同じ列車台数を利用客の多い場所に効率的に使えるようになり、輸送能力があがることになる。南寧地下鉄では、この大小交路による運行を始めて、地下鉄1号線の輸送能力は42%向上したと発表している。

この大小交路運行方式は、広州、上海、北京、深圳という4大都市だけでなく、20以上の都市で採用をされている。

▲南寧地下鉄では、広西大学から火車駅までの3駅間の乗客数が以上に多い。そこでこの区間で折り返し運転をする小交路と、全路線を運転する大交路の2通りで運行をしている。小交路部分では本数が増えることになる。