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ジャック・マーの次のねらいは、食料問題とエネルギー問題を一挙に解決すること

ジャック・マーが出資をした企業「一米八海洋技術」に注目が集まっている。事業内容はまだわからないものの、海洋発電と養殖、農業を事業内容にするのではないかと言われている。以前から、ジャック・マー自身が口にしていたように、クリーンエネルギーと食料の問題を一気に同時解決しようとしている可能性があると虎嗅が報じた。

 

ジャック・マーの次の活動は海と農業

2023年7月20日に、杭州市で登記された「一米八海洋技術」という企業に注目が集まっている。なぜなら、この企業の株主は2023年3月に香港で創設されたばかりの「一米八」(80%)だが、アリババの創業者、馬雲(マー・ユイン、ジャック・マー)も株式の10%を保有しているからだ。厳密には、ジャック・マーが所有する「大井頭弐拾弐号」を通じての間接投資になる。また、アリババの経営陣の1人である胡暁明が5.5%を保有している。

さらに、一米八の下には、一米八海洋技術だけでなく、一米八農業技術も設立され、胡暁明以外にも、アリババやアントグループから幹部として参加をしている。つまり、実質的には、アリババからスピンアウトした企業であり、そのリーダーはジャック・マーということになる。一米八海洋技術は、ジャック・マーがアリババを引退した後の新会社ということになる。

▲海は風があり、資源がある。ジャック・マーは、風力発電太陽光発電とスマート漁業を組み合わせることを考えていると見られている。

 

スマート漁業にねらいを定めたジャック・マー

ジャック・マーは、この一米八海洋技術で何をしようとしているのだろうか。ジャック・マーは、日本やタイ、オランダなどで、海洋養殖技術を積極的に視察をしていた。その行動と企業名から、海洋養殖技術の開発をする企業ではないかと推測されている。

実際、ジャック・マーの海洋養殖への挑戦はこれが初めてではない。2020年9月には、45%の株式を保有する海南雲鋒管理集団を通じて、耕海牧洋を設立し、2億元を投資し45%の株式を所有した。耕海牧洋は14億元を投じて、海南省儋州市でスマート漁業プロジェクトをスタートしている。現在、2.68億元の第1期投資を完了し、さまざまな研究実証施設が今年2023年の11月から稼働する予定になっている。

スマート漁業とは、IoT、AIなどのテクノロジーを使って漁業の生産効率を向上させ、持続可能な漁業を確立するというものだが、その技術はまだまだ未成熟で、これからさまざまな技術開発が必要となる。

サウスチャイナ・モーニングポストは、ジャック・マーに近い匿名の消息筋からの情報として、次のような報道をしている。ジャック・マーは世界各国の養殖技術、水産技術、農業具術を視察し、それを中国に持ち帰り、中国で新たな組み合わせを模索して、次世代のスマート漁業、スマート農業を開発することを目指しているという。

▲オランダで農業施設を視察するジャック・マー。その成果を中国に持ち帰り、スマート農業、スマート漁業、再生可能エネルギーの分野で起業をしようとしていると言われている。

 

海洋発電にも進出か

ジャック・マーのもうひとつの関心事が、海洋風力発電と海洋太陽光発電だ。中国でも海洋を経済利用するには、「海域」を確保することが必要になるが、これを「水面」「水域」「海底」「海底土」の4つの層に分離をして、個別に利用できるようにしようとする動きがある。例えば、水面で太陽光発電を行い、その下の水域で別の事業者が、漁業者が漁をしたり、養殖をしたりすることが可能になる。

現在、一米八海洋技術が新エネルギーに関してどのような事業を始めるのかは公表されていない。しかし、多くのメディアが、一米八海洋技術は、スマート漁業と海洋発電を組み合わせたところでの事業を展開するのではないかと見ている。

太陽光発電パネルの下で養殖を行う。太陽小発電パネルがちょうどいい日除になり、エビの養殖に適した環境をつくってくれるのだという。

▲中国の発電施設は火力がすでに半分近くになり、風力、太陽光といった再生可能エネルギーが30%に達している。ジャック・マーはクリーエネルギーと食料の両面で社会に貢献しようとしている。