中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

国際デジタル競争力ランキングで、日本は32位。ライバルはマレーシアとタイ

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今回は、国際デジタル競争力ランキングについてご紹介します。

 

IMDの国際デジタル競争力ランキングの2023年版が公表になりました。国際経営研究所(International Institute for Management Development)は、スイスのローザンヌを拠点とするビジネススクールで、かつてMBA経営学修士号)プログラムがフィナンシャルタイムズやフォーブズ、エコノミストなどの評価で1位になったこともある、世界最高峰のMBAプログラムのひとつとされています。

このIMDが毎年、世界64カ国のデジタル競争力ランキングを公表しています。日本のメディアでも、ここ数年「日本の順位がまた下がった」と報道をされています。2023年最新版での日本の順位は第32位と昨年から3つ下がりました。この国際デジタル競争力ランキングは2013年から公表されていて、その時の日本の順位は20位でした。そこから約10年で12位もランキングを下げたことになります。

しかし、「日本の順位がまた下がった」という話をされても、読者のみなさんも面白い話には思えないと思います。「日本は衰退している」という話はそろそろうんざりされているのではないでしょうか。特にこのメルマガをお読みのみなさんは、日本が停滞をしていることはずっと前から感じていて、それをどうにかしたいという思いでさまざまな情報に接し、ヒントをつかもうとされていると思います。

そこで、今回は「ただ順位が下がった」というだけでなく、日本のどこに問題があるのかを探り、どこを補えばいいのかを考えます。

 

もうひとつ、ご紹介したいのが、アジアの状況です。中国だけでなく、アジア各国のデジタル競争力があがってきています。その中で日本のポジションはどうなっているのかを確認しようと思います。

特に注目をしていただきたいのがマレーシアです。国際デジタル競争力の順位では、日本はマレーシアと抜きつ抜かれつの競争をしています。最新版ではマレーシアは33位で、日本はかろうじて1位上にとどまりました。マレーシアでは、ITを国策による基幹産業と位置付け、1996年にマルチメディア・スーパー・コリドー(MSC)を設置しました。これは首都クアラルンプールの中心地と国際空空港の間の15×50kmの長方形の地域を集中的にインフラ整備を行い、外資のIT企業を積極的に誘致をしてIT産業に力を入れてきました。国内IT産業の規模という点では日本よりもまだ小規模ですが、国際競争力になると日本とほぼ同じレベルになっているのです。

「日本の国際デジタル競争力上でのライバルはマレーシアです」ということを私はずいぶん前から人に会うとお話をしていますが、ほとんどの方が「この人、何言ってんの?」という顔をします。まさか日本がマレーシアと同じレベルだとは誰も思っていないわけです。IMDのレポートだけで「同じレベル」と断言していいかは別として、私たちのアジアに対する見方がそうとうに歪んでいる実例になっていると思います。私の言葉に理解を示してくれたのは、クアラルンプールに駐在している方でした。その方は、ようやく同じ思いの人を見つけたとばかりに、マレーシアのITの先進性をいろいろ教えてくださいました。

 

また、要注意なのがタイです。タイは以前はアジアの中でのIT後進国でしたが、毎年順調に順をあげ、2023年版では35位、日本のわずか3つ後にまで迫ってきています。日本が下り調子、タイが上り調子ですから、来年か再来年には、日本はタイにも抜かれるという事態が起こる可能性があります。

さらに、ダークホースがベトナムです。ベトナムはIMDの調査に参加をしていないために順位はわかりませんが、テクノロジー系の企業が続々と登場してきています。EMS(製造請負)企業の誘致にも積極的で、鴻海科技グループのEMS企業「富士康」(フォクスコン)は、ベトナムバクザン省iPadMacの製造工場を稼働させています。立訊精密(ラックスシェア)もベトナム北部の工場でAppleWatchの生産を始めています。

また、優秀な企業も登場してきています。EV製造のビンファスト(https://vinfastauto.com/en/)は、すでに米ナスダック市場に上場をし、米国と中国でのEV販売を始める準備に入っています。性能については私には評価ができませんが、格安EVではなく、高級EVを米国と中国で売ろうとしています。そのことから、決して「安かろう悪かろう」の技術力ではないことがわかります。

また、Bkav(ビーケイブhttps://www.bkav.com/home)も注目をしておくべきIT企業です。ベトナムには大量の中国の家電製品、電子製品が流入する中で、国産のスマートフォン「Bphone」やスマートホームシステムなどを開発して販売しています。このBkavの核心チームは、2017年にiPhone Xで、初めて顔認証システム「FaceID」が発表されると、そのわずか48時間後にはハッキングをして大きな話題になりました。

 

https://www.youtube.com/watch?v=i4YQRLQVixM

▲BkavのFaceIDを破ったことを示すデモンストレーション。技術力はともかく、熱量がすごい会社。

 

その手法は、登録者とそっくりの立体マスク(仮面)をつくって突破するというものです。その後、Bkavは、突破するまでの経緯を説明するオンラインセミナーを開催し、私も視聴しましたが、試行錯誤の熱量に圧倒される内容でした。ベトナム国内には、このBkavのファンが大勢います。

ベトナムでは、このように目立った活躍をするテック企業が生まれてきています。では、産業全体、国全体ではどのくらいの水準なのかと言われるとよくわからないところがあります。国全体で見れば、日本より下であるとは思いますが、かなり肉薄されていないとも限りません。

 

このデジタル競争力ランキングのレポートは、以下のリンクからダウンロードすることができます。

 

https://www.imd.org/centers/wcc/world-competitiveness-center/rankings/world-digital-competitiveness-ranking/

▲IMDのデジタル競争力のレポートは無料でダウンロードできる(英語版のみ)。

 

なお、このレポートを読む時は2つのことを頭に入れておく必要があります。

ひとつは、デジタル“国際競争力”ランキングであるという点です。デジタル力ランキングではありません。特に、日本と中国はIT技術力は高いのに、海外展開が進まないため、「国際競争力」になると国内の実力よりも低い評価になってしまいます。しかし、ITは言語の壁があるとはいうものの、仕組みは万国共通の部分が多いために、海外展開をしないというのは宝の持ち腐れです。日本と中国はここが大きな課題になっています。

2つ目は、インフラの普及度などの統計を評価指標に使っているため、人口が少ない小さな国ほど高く評価される傾向があることです。世界ランキングでも北欧諸国が上位にきています。アジアで言うと、シンガポール、台湾、香港が上位にきています。しかし、小国はインフラの普及がしやすいことから、デジタルを積極的に活かす戦略をとっています。小国であることを活かせる方法で国際競争力をつけようというのは合理的な方針です。

例えば、スマホゲームの世界では、国際競争が進んでいます。ここ最近で世界でヒットしたゲームには「Subway Surfers」(デンマーク)、「Pou」(レバノン)、「Hill Climb Racing」(フィンランド)、「My Talking Tom」(キプロス)、「怪盗グルー」(フランス)、「Angry Birds」(フィンランド)、「Clash of Clans」(フィンランド)、「PUBG」(韓国)、「原神」(中国)など、さまざまな国のゲームスタジオが入り乱れています。特に目立つのが北欧諸国で、外貨を稼ぐことのできる重要産業になりつつあります。

今回は、IMDのデジタル競争力ランキングの東アジアの状況をご紹介し、日本と中国について、どこに強みがあり、どこに課題があるかを見ていきます。

 

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