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急速に変化する東南アジア消費者の意識。アジアの食品市場で起きている6つの変化

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今回は、アジアの食品市場に起きている6つの変化をご紹介します。

 

今、世界経済で注目すべきは東南アジアです。欧米+日本のような先進国はもはや大きな成長をすることは難しく、特にコロナ禍では大きく落ち込み、かなり傷んでいます。2021年のGDP成長率は景気のいい数字が並びまましたが、比較対象となる2020年が大きく落ち込んだためであり、コロナ前に戻っているとは言い難いものです。国際通貨基金IMF)の予測によると、米国、ユーロ圏ともに2022年、2023年は厳しい数字が並んでいます。

IMFが発表した2022年4月の世界経済見通し。2022年以降、世界の経済成長は低迷するが、アジアの新興国発展途上国は成長をすると予測されている。

https://www.imf.org/ja/Publications/WEO/Issues/2022/04/19/world-economic-outlook-april-2022

 

一方、アジアの新興国発展途上国の成長率予測は非常に高いものになっています。今後、高度成長が期待できるのはインドを要する中央アジア中南米、アフリカなどですが、IMFの予測数字は渋いものになっています。まだ、成長に必要な基盤を整えるのに時間がかかるようです。

一方で、東南アジアは本格的に成長時代に入っています。中国企業は自国経済が頭打ちになっていることもあり、積極的に東南アジアに投資、技術提供を行い、東南アジアの成長を加速させています。

 

東南アジアが成長をするということは、東南アジアの市民の生活も豊かになっていくということです。以前は身近で手に入る食材を食べるしかなかったところに、食材を選べるようになってきます。これにより、さまざまな食品に対する消費トレンドが生まれてくることになります。

今回は、そのような食品に対する6つのトレンドをご紹介しますが、その多くは、ほとんどの方が想像できるもので、意外なところはほぼありません。では、なぜ取り上げるのかというと、みなさんに日本のガラパゴス感を感じていただきたいからです。

今回、食材に対するアジア各国のさまざまな統計をご紹介しますが、アジア各国は食材に対する意識が大きく変わっているのに、日本だけほとんど変化をしていません。もちろん、それが悪いことだとは思いません。何を食べるかは、それぞれが好きなものを食べればいいのであって、流行だからといってなじんだ食習慣を変える必要はありません。

また、日本の食環境はかなり以前から安全面や多様性が進んでいて、多くの人がそれなりに満足をしていて、特に大きな不満はありません。ですから、新しいトレンドにも敏感にはならない傾向があります。これは別に悪いことでもなんでもありません。

 

しかし、問題は、私たちは、ついつい日本の感覚で海外、特にアジア圏を眺めてしまう傾向があるということです。日本の食環境が保守的なのだから、アジアでもそうだろうと思ってうっかりしていると、気がついたらアジアでは食環境がものすごく変化をしていたということが起こり得ます。

これは、食関係のビジネスに携わる方にとっては、大きなチャンスを見逃すことになりますし、私たちが誇る伝統文化である日本食、日本料理をアジアに売る時にも、アジアの人たちから見たらトンチンカンな売り方をすることにもなりかねません。

中国の製造業やテクノロジーについて、韓国の音楽や映画について、私たちはどこか甘く見ていて、気がついたら背中も見えない状況になっていたという失敗をしているのですから、東南アジアに対して、同じ誤ちをするわけにはいきません。

私たちが毎日食べる食べ物は、自分が好きなものを食べればいい。でも、アジアを見る時には、食環境に大きな変化が起きているという目でしっかりと見ることが重要です。

 

例えば、国際経営開発研究所(IMD)が毎年発表している世界競争力ランキング(https://www.imd.org/centers/world-competitiveness-center/rankings/world-competitiveness/)という指標があります。最新の2022年版では、日本は第34位ですが、1992年までは1位であり、日本はここまで凋落したという主張をする時によく引き合いに出されるデータです。

なぜ、日本が1位から34位まで落ちているかについては専門家の方の解説を読んでいただくとして、このデータに見逃せない事実があります。それは、日本はアジアの中でも競争力が低下をしているということです。アジア圏のトップは、シンガポール(3位)で、香港(5位)、台湾(7位)、中国(17位)、韓国(27位)と続きます。この辺りまでは多くの方が納得するではないでしょうか。

しかし、まだ日本より上の国があります。マレーシア(32位)、タイ(33位)と続いて、ようやく日本が登場します。つまり、もはや日本の競争力はマレーシアやタイに負けているのです。「そこまで落ちたのか」ではなく、東南アジア各国が急速に競争力をつけてきているのです。

さらに日本の下にはインドネシア(44位)が迫りつつあります。インドネシアは人口2.7億人で、しかも平均年齢が30歳という若い国です。このメルマガでも数度ご紹介したTokopediaやGoJek(両社は合併をしてGoToとなりました)などのユニークなテック企業も生まれてきています。日本のライバルは、もはやマレーシア、タイ、インドネシアなのだということを多くの方に認識をしていただきたいのです。

コロナ禍により、休暇に東南アジアに行くこともできなくなっています。また、観光に行ったとしても、多くはツーリストエリアの中で行動をし、なかなか現地のリアルな生活、経済に触れる機会というのは多くはありません。そのため、10年前、20年前の東南アジアのイメージのままアップデートしないで、東南アジア市場を見てしまうという危険性があります。東南アジアの消費者は急速に変わりつつある。その事実を再認識する必要があります。

今回は、東南アジア市場での食材に関する6つのトレンドをご紹介します。

 

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