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「宵越しの肉は売らない」豚肉やさん「銭大媽」が上場へ。一方で、過大な負担を抱える加盟店

銭大媽が香港に上場を申請している。しかし、加盟店の負担が大きなフランチャイズの運営に加盟店オーナーからの不満もあがっていいる。上場を果たしても、この問題を解決しなければ銭大媽はすぐに失速することになると地縁歴史档案館が報じた。

 

宵越しの肉は売らないで急成長した豚肉小売「銭大媽」

「銭大媽」(チエンダーマー)は、「宵越しの肉は売らない」という方針を掲げ、成功をした豚肉小売チェーンだ。中国では豚肉の新鮮さが重視をされるため、多くの人が新鮮さにこだわる。銭大媽では、夜7時をすぎると割引が始まり、その割引率は時間とともに高くなっていき、夜11時30分にはタダになる。それでも利益が出るのは、多くの店で夜8時前後には売り切れて閉店してしまうことと、それが「宵越しの肉は売らない」ことの証明になっていて、消費者からの信頼を得ることができるからだ。このようにして、銭大媽は3000店舗を展開する豚肉小売チェーンに成長をした。

▲銭大媽の店舗。「宵越しの肉は売らない」は銭大媽の有名なコピーになっている。

▲新鮮な肉が安く買えると、新しい店舗が開店すると行列ができるのは珍しい光景ではなくなっている。

 

ある老婦人の質問から拡大をした銭大媽

銭大媽は2012年に広東省東莞市で創業された。創業者の馮翼生(フォン・イーシャン)は東莞市長安区にある菜市場の中に豚肉店を開いた。商売はそれなりにうまくいっていたものの、生活に必要なお金を稼ぐことは簡単ではなかった。

ある時、カゴを持った老婦人がやってきて、こう尋ねた。「お宅では昨日の肉を売ったりしていないだろうね?」。

もちろん、誠実な馮翼生はそんなことはしていなかった。「心配いりません。宵越しの肉なんか売りませんよ。うちのお客さんはみんなよく知っています」。

すると、その老婦人は、肉をよく確かめ、満足したように大量に買っていった。

馮翼生は気づかされた。いくらこちらが誠実な商売を心がけていても、お客さんは言われなければ気がつかない。なぜ伝える工夫をしなかったのだろう。馮翼生はすぐに「宵越しの肉は売りません」と書いた横断幕を店舗の壁に貼った。すると、面白いように豚肉が売れ始めた。

馮翼生は深圳市に店を借りて、「宵越しの肉は売らない」豚肉小売店を開店した。この時に、あの老婦人に感謝をする意味で、店名を「銭大媽」に改名した。この方針が深圳の市民に受け、次々と支店を出していき、フランチャイズ化も行った。

2015年にはエンジェルラウンドとして和君投資から1300万元の投資資金を獲得した。これで銭大媽の本格的な成長が始まった。

2019年には獲得した投資資金が10億元を超え、2020年には3000店舗を突破した。上場が見えるところまで成長をした。

▲銭大媽の全店舗で行われている割引制度。午後7時になると1割引になり、30分ごとに割引率があがり、午後11時30分になると全品無料になる。多くの場合、午後8時前後で売り切れて閉店になる。

 

大きすぎる加盟店の負担が問題に

ところが、大きなつまづきをすることになる。2021年に中央電子台の「正点財経」という報道番組が、華々しい成長をする銭大媽の背後にある闇を暴く調査報道を放送したのだ。銭大媽本部は儲かっていても、フランチャイズの各店舗は苦しんでいるという内容だった。この番組に対して、SNSでは「豪華な毛皮のコートに下に、血を吸うシラミが隠れている」というコメントまでついた。

その内容は、一言で言えば、高額のフランチャイズ費用が徴収されているというものだ。加盟をするには初期加盟費として7万元を支払う必要がある。また、わずか50平米の店舗なのに改装費用が28万元も取られる。さらにこの他に30万元ほどのさまざまな費用が、店舗を開く時に徴収される。合計で65万元(約1300万円)にもなる。

また、1店舗あたり6人の店舗スタッフを雇用することが求められる。月給が3500元から4000元程度だとしても、月に2万1000元はかかる。さらには、開店してしばらくは集客のために、割引販売をすることが本部から求められる。この損失分は本部が補ってくれるわけではなく、店舗負担になる。

もともと豚肉販売は利益が薄く、大量に売って利益を出す薄利多売商売だ。そこにこれだけの初期投資を求められると、なかなか黒字に持っていくことができない。つまり、銭大媽は各店舗のオーナーに損をさせて、本部だけが儲かる仕組みになっていると批判をされた。

https://tv.cctv.com/2021/09/01/VIDEfCj0gC6TRoMrk9ZMcMHj210901.shtml

▲銭大媽の問題を取り上げた中央電子台の番組「正点財経」。成長するチェーンの陰で、加盟店が苦しんでいる問題が取り上げられた。

 

加盟店オーナーの反乱が始まった

消費者から見た銭大媽は、新鮮な肉を安く売ってくれる信頼できるチェーンだが、問題は早い時間に売り切れてしまうことだ。仕事が終わって銭大媽に買いに行っても売り切れて閉店をしていることが多い。

この問題を解決するために、銭大媽本部はフランチャイズオーナーに近隣に複数店舗を出店することを勧めた。通りに面した店舗では早い時間に売り切れてしまうが、裏通りに面した店舗ではまだ売り切れていないことが多い。そこで、来店客を裏通りに店に誘導することで、立地の悪い場所でも家賃が安い分、商売になると勧めた。しかし、複数店舗を出店したオーナーの多くが、損失を拡大させるだけになってしまった。

このような状況の中で、銭大媽としては最悪のことが起こり始める。宵越しの肉を販売してしまう店舗が現れ始めたのだ。店舗オーナーとしては損失を少しでも減らしたいというやむにやまれぬ不正だが、ブランドの信用力は大きく傷つけられることになった。

▲銭大媽は新鮮な豚肉を売る。店舗で食肉加工をするため、店舗スタッフも6人が必要になり、加盟店の負担は大きい。

▲銭大媽の加盟店の中には、実際の売上などをSNSで公開する人も現れた。加盟店の負担の上に銭大媽の売上は成り立っていると批判されている。

 

上場ができても多難な銭大媽のフランチャイズ

銭大媽の上場申請が受理されるかどうかが注目されている。フランチャイズビジネスは、本部と加盟店の利益が衝突をする関係にあるために、その運営は簡単ではない。本部の利益を確保しようとすると、加盟店の利益が削られ、離反が起きるだけでなく、不正行為が始まり、ブランドの信用が棄損をすることになる。銭大媽は、上場ができてもできなくても、フランチャイズの仕組みを大きく改善することが必要になっている。