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北京ハイテク地区「亦荘経済技術開発区」の明と暗。近代都市を裏で支える人たち

北京市のハイテク地区「亦荘経済技術開発区」の整備が進んでいる。大手テック企業が拠点を置き、道路には百度無人ロボタクシーが走っている。しかし、どのような都市であっても、それを支える膨大な人手が必要になる。そのような人々は隣接をした馬駒橋に暮らしていると原来一人が報じた。

 

ハイテク都市を裏で支える人々

北京市で最も整備が進み、最大のテックパーク「亦荘経済技術開発区」(イージュアン)。EC京東の本社や、ディスプレイの京東方、メルセデスベンツなどの工場があり、道には百度無人ロボタクシーが走っている。

しかし、そのハイテク都市を支えるには膨大な人手が必要になる。亦荘経済技術開発区に隣接をした馬駒橋はそういう人手の拠点となり、先端地域からは想像がつかない時代に取り残された地域になっている。

▲亦荘経済技術開発区は、北京市が整備を進めているハイテクパーク。大手テック企業が拠点を置き、道路には無人ロボタクシーが走っている。美しく、衛生的で、高給を得ている人々が暮らしている。

 

朝食は歩きながら食べる

馬駒橋の朝は早い。朝4時には人々が起き出し、安価な朝食を出す店が営業を始める。多くの人が、このような店や露店で包子と豆漿を買い、歩きながら食べる。それが馬駒橋での定番の朝食だ。目的地は、この辺りで最も賑やかな金馬商場の交差点だ。ここに日雇い仕事の手配師が集まってくるからだ。

人が集まってくると、手配師は大きな声で仕事の募集を始める。「学校の仕事。疲れない。1日180元。昼食つき」。集まった人々は手配師の声を聴きながら、少しでも条件のいい仕事を探そうとする。

▲馬駒橋は朝4時から動き出す。多くの人が露店で朝食を買い、歩きながら食べる。

 

朝5時からその日の仕事を探す人たち

気に入った仕事が見つかると、手配師に条件を確認し、自分の身分証を渡す。これが仕事の契約となる。身分証は、仕事が終わったのち、その日の日給とともに返却される。

このような人足集めは朝5時頃から始まるが、6時をすぎても仕事が決まらない人々は焦り始め、殺気だってくる。なぜなら、多くの仕事が7時から始まるため、この時間になっても仕事が決まらないと、その日は遊ぶことになってしまうからだ。その日の仕事がないということは、手持ちのお金が尽きればその日のご飯は食べられないということになる。

▲人々は金馬商場交差点に集まってくる。ここに手配師がやってきて仕事の募集をするからだ。

 

部屋はあるのに路上で寝る人々

この馬駒橋では、夏になると路上で寝ている人をよく見かける。ホームレスではない。部屋は借りているが、家賃が高いため、エアコンやトイレのない安い部屋しか借りられない。夏は暑くて寝られないので、外に出て寝るのだ。

コロナ禍以降、家がない本当のホームレスも増え始めているという。エアコン、トイレなしの部屋でも月600元は必要で、エアコンがある1人部屋であると1000元以上になる。1日の賃金は180元から200元程度。家賃を節約するために、家を借りずに、路上で寝て、仕事に行く人も現れ始めている。

雨が降ったり、冬の気候が厳しい時はどうするのか。外で寝るのが無理な場合は、1日単位で借りられる部屋にいく。一晩15元から20元で眠れる部屋を提供してくれる。

▲夏の間は路上で寝る人は珍しくない。部屋はあってもエアコンがないために、暑い時期には寝ていられないのだ。

▲馬駒橋には一晩単位で借りられる部屋がいくつもある。路上で寝る人は気候が厳しい時は、このような部屋を借りて眠る。

 

都市を支える現代の農民工

馬駒橋にはこのような生活をしている人が10万人近くいる。このような人々の多くは農村から出稼ぎにきた人たちだ。彼らは高い教育が受けられなかったことを後悔している。そのため、農村に残した子どもには高い教育を受けさせたいと考えている。そのためには、現金が必要になる。その学費を稼ぎに北京にやってきている。

構造としては、従来からの農民工そのままだ。都市を建設、維持をするには多くの人手が必要となるが、都市で暮らす人はもはや誰がその仕事をしているのかは考えなくなっている。高い報酬をもらい、設備の整ったオフィスで働き、快適なマンションで寝る。不衛生や乱雑な景色は都市の中から排除をして、美しい生活を享受している。

しかし、そのすぐ横では低賃金でつらい仕事をこなして、1日1日を生き延びなければならない人々がいる。その都市の明と暗は、何千年もの間、大きく変わっていない。