北京市バスでは、廃バスと廃止路線のバス停を利用して、移動店舗サービスを始めた。市民からは安くて便利だと大好評だ。しかし、あまりに安すぎるため、周囲の商店からは民業圧迫だという声もあがっている。3年300店舗の拡大計画がどうなるのか注目されていると餐飲老板内参が報じた。
到着したバスは八百屋さん
北京市の地下鉄、六芳駅近くに不思議な八百屋がある。大きなキッチンカーのような店舗で、よく見ると改造バスなのだ。どこからともなくやってきて、歩道に横付けするように止まって、ひさしになるシャッターを開けると、八百屋になる。このようなバス店舗が北京市のあちこちに出没するようになった。
北京市バスが運営する公式八百屋
このバス店舗を運営しているのは、北京のバスを運営する北京公交集団。実際は北京領鮮全城管理諮詢有限公司が運営をしている。このバス店舗の正式名称は「公交便民駅桟」というものだ。
チャージ可能な専用カードが用意され、現金やスマホ決済で店頭チャージをして買い物をすると、会員価格で購入することができる。会員価格はかなり安く設定されているために、人気になっている。
廃止路線のバス停と廃バスを利用した店舗
このバス店舗は北京公交のうまい廃物利用になっている。北京市でも地下鉄が発展をし、シェアリング自転車も普及をし、バスの経営は苦しくなっている。人気路線は相変わらず混雑をするものの、利用が少ない路線の利用者が減るという二極化が起きている。利用者の少ない路線は採算が取れなくなるため、本数を減らさざるを得なくなる。すると利便性が下がり、ますます利用されなくなるという悪循環が起きている。これにより、廃止をしなければならい路線が生まれ始めている。
一方、バス車両は常に更新をしなければならない。北京市では、すべてのバスを電気自動車(EV)に置き換える計画を進めていて、ほぼ完了をした。大量の燃料車バスが退役となった。また、北京市では早くからバスのEV化を進めてきたため、初期に導入したEVバスの退役も始まっている。このような廃バスを利用して、移動店舗に改造している。
一方、バス路線の廃止により、バス停も廃止になっているケースがある。郊外では歩道にバス停のスタンドを置くだけなので、スタンドを撤去してしまえばバス停はなくなるが、都心部では交通の妨げにならないように、歩道を削ってバス停を確保していることが多い。このようなバス停が廃止になると、車道に無駄なスペースが残ることになる。
バス店舗は、このような退役したバス、撤去されたバス停を利用して営業をしている。
将来はコーヒー、クリーニング、朝食なども提供
領鮮全城では、コーヒーの販売やクリーニングの受け渡し、デリバリー、朝食店などに対応することも検討しており、3年で300店舗を出店し、北京第5環状道路内のすべての区をカバーしたいとしている。
ただし、課題もある。北京公交は国営企業であり、業務範囲は公共交通に限られているため、本来は生鮮小売業を営むことはできない。そこで、営利目的ではなく市民に対する福利厚生として利益を出さない形で生鮮食料品を提供している。これで国家発展改革委員会の許可が下りた。そのため、他の小売店やスーパーと比べて価格が安く、人気になっている。
しかし、周囲の小売店からは民業圧迫だと不満の声があがっている。バス店舗は利益も出さない、家賃もないため、価格競争ではまったく勝てないからだ。そのため、出店場所については周囲の小売店と協議をしながら進めている。一方で、消費者からは、物価高のおり歓迎をされている。住民の方から出店してほしいという陳情が出るほどだ。バス店舗がどのくらいのペースで増えていくのか、注目されている。