中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

ロボタクシーに続いて、ロボバスを実戦投入する長沙市

湖南省長沙市が、自動運転の都市になろうとしている。4月19日、百度の自動運転ロボタクシー「dutaxi」が全面開放され、4月30日には315路線のバス路線に自動運転車が投入されたと智能相対論が報じた。

 

ロボタクシーが全面開放。誰でも利用できる

長沙市では、昨2019年9月から45台のロボタクシーが試験営業を始めていた。長沙市民であればモニター登録をすれば誰でも自由に利用ができる。この試験営業がが4月19日から全面開放された。つまり、誰でも事前登録なしに利用ができるようになった。自動運転可能範囲も50平方キロから130平方キロに拡大され、長沙市民の行動範囲をほぼカバーできるようになる。百度のミニプログラム「dutaxi」を利用すれば、誰でも乗車することができる。

f:id:tamakino:20200720102345j:plain

▲2019年から長沙市を走っているL4自動運転ロボタクシー。全面開放され、誰でも利用できるようになった。

 

f:id:tamakino:20200720102616g:plain

▲ロボタクシーの路肩からの発車の様子。後方の安全確認もし、人間と同等かそれ以上にスムースだ。

 

ロボバスも営業投入

ロボタクシーに続いて、長沙市は4月30日に、315路線に自動運転バス=ロボバスを正式投入した。運転席に監視員が乗務するものの運転はせず、安全確認を行い、緊急時に手動運転に切り替える。試験営業ではなく、正式営業となる。長沙市は、ロボタクシーとロボバスが走る自動運転の都となった。

f:id:tamakino:20200720102334j:plain

▲10台のロボバスが投入された315路線。交通信号と通信をして、バスの通過時に青になるように設定されている。

 

ロボバス導入に取り組んできた長沙市

長沙市では、バスの自動運転にも早くから取り組んできた。2018年11月28日からは、自動運転モデル路線を設置、7.8kmの路線に11のバス停を設置したL3自動運転バスの運行を行ってきた。L3は一定の条件下での自動運転で、バス路線を自動運転に適した環境に整備することで、ロボバスの運行を可能にしていた。

しかし、この路線は自動運転の実証実験の色彩が強く、投入されたロボバスは4台のみ。2019年末になっても、ロボバスの走行回数は600回、累計走行距離は3万kmにすぎない。

しかし、今回の315路線は、一部を自動運転に適した環境に整備したものの、既存のバス路線をロボバスが走行することになる。この315路線には10台のロボバスが投入される。

315路線は15kmの長さで、28のバス停、24の交差点がある。沿線にガイド用の設備を設置し、交差点の信号もロボバス対応のものに改められた。沿線の設備では、バスの位置、速度などを把握し、交差点の信号では車両位置、速度、乗客数、バスの状態などを把握し、バスの位置によって、交通信号のサイクル時間を調整し、バスが優先的に交差点を通過できるようにしている。

f:id:tamakino:20200720102338j:plain

百度は自動運転人工知能「アポロ」をベースに、運行管理なども行う「ACE交通エンジン」を開発した。長沙市を始めとして国内10都市が参加を表明している。2035年までに公共交通の完全自動運転を目指している。

 

百度と提携して自動運転の長沙モデルの確立を目指す

長沙市では、中国で最も自動運転が進んだ都市を目指す「頭羊計画」を推進している。この計画によると、今後3年で7444台のロボバスを投入することになっている。交差点の交通信号と通信をしながら、オールグリーンによる円滑なバス運行をする「長沙モデル」を確立して、他都市の規範とする計画だ。

百度では、自動運転人工知能「アポロ」や道路からのデータ処理など、都市のタクシー、バスなどの運行を制御する「ACE交通エンジン」(Autonomous Driving、Connected Road、Efficient Mobility=自動運転、コネクティッド道路、高効率モビリティ)という考え方を打ち出し、2035年までに完全自動運転の実現を目指している。

長沙市はもちろんこの「ACE交通エンジン」に参加をしている。さらに、南京、北京、保定、滄州、雄安など国内の10余りの都市も参加をしている。ロボタクシー+ロボバス+ACEを組み合わせた長沙モデルが、他都市にも広がっていく可能性がある。