重慶交通大学の易志堅教授の研究チームが、砂漠緑化に貢献する大きな発見をした。砂と土の違いは粒子の大きさだけでなく、結合関係の違いが重要だというものだ。これにより、セルロース接着剤を砂漠に混合するだけで緑化ができる可能性が生まれていると新華社が報じた。
簡単ではない砂漠の緑地化技術
新疆ウイグル自治区の和田県郊外に、重慶交通大学の「砂漠土壌化」基地がある。ここでは砂漠を緑化する研究が行われているが、砂漠の緑化は世界でも難しい挑戦のひとつだ。
最大の問題は、粒子の粗い砂のままだと、いくら水を注ぎ込んでも、土壌の下に流れてしまい、植物を育てるのにじゅうぶんな水分を保持してくれない。一方、豊かな土壌は粒子の細かい土であり、さらに粒子同士が結合をするため、水分を保持し、さらには植物の生長に必要な養分まで保持してくれる。
砂を土に変える。これが砂漠の緑化、土壌化にとって通ることが避けられない技術になる。
砂と土の違いは粒子の大きさよりも結合関係
重慶交通大学の易志堅教授は、顆粒物質の力学を研究していた2009年に、顆粒物質が離散状態から、流体状態、固体状態に変化をするのに、顆粒同士の結合関係が大きく関係していることを発見した。
易志堅教授は、新華社の取材に応えた。「この発見をしたことで、土壌と砂の違いは粒子の結合関係の違いなのだと気づきました。砂漠を土壌に変えられるかもしれないと思い、興奮をして眠れませんでした」。
土壌の粒子には独特の結合関係があり、それにより柔軟性、保水性、養分保持性、通気性などが生まれ、植物の根が生長できる空間を提供している。また、ある程度の支持力もあるため、植物を保持し、植物が成長していける環境になっている。易志堅教授は、砂漠の砂を土壌に変える研究を始めた。
砂に接着剤を混合することで土になる
2013年、易志堅教授のチームが開発したのは、植物セルロースを材料にした接着剤だった。砂に適切な量の接着剤と水を混合すると、砂漠の砂粒子は、天然の土壌と似たような力学特性を持つようになる。水分を得ると、離散状態から流体状態に変化をし、水分が蒸発をすると固体状態に変化する。この変化は可逆的なもので、砂漠の砂が水分、養分、空気を保持するようになり、植物の生育に適した土壌となる。
それ以来、易志堅教授のチームは国内外の10ヶ所以上、合計面積3万ムーで、技術検証と経済的な検証を行なってきた。
砂漠に接着剤を混合させることで緑化ができる
この技術による砂漠土壌化のコストは、1ムーあたり2000元から3000元程度だという。しかも、土壌化を行うと微生物が増え続け、自然に土壌の特性が改善されていくことも確かめられた。
変換作業は、セルロース接着剤を砂に追加をしていくという簡単なもので、大規模な機械化、自動化も可能だという。接着剤を追加後、土壌が育つまである程度の時間は必要になるが、接着剤を追加した直後から砂を固定することができ、表層土壌の流出や砂塵などの被害を抑える効果が期待できる。
2022年12月には、英国のウィリアム王子が立ち上げた「Earthshot」賞(https://earthshotprize.org/)で、ファイナリストにも選ばれた(https://earthshotprize.org/winners-finalists/desert-agricultural-transformation/)。
易志堅教授のチームは、国内の砂漠緑化に取り組むだけでなく、国外にも技術提供を行なっている。砂漠の拡大を食い止める決め手の技術になる可能性も生まれている。