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人気のライブコマース「開窯大事」、貴重に思えた陶器はすべて仕込みだった。ライブコマースの騙しのテクニック

ライブコマースはもはやエンターテイメントとショッピングを兼ねたコンテンツになっているが、業者の競争が激しくなり、あの手この手で売ろうとし、騙しとも呼べるテクニックが使われるようになっている。しかし、多くの視聴者は許容をし、騙し騙されの部分も楽しんでいると海報新聞が報じた。

 

ライブコマースで売上を伸ばすさまざまな工夫

ライブコマースはもはや日常のものとなり、多くの人が夕食後寝るまでの間、ライブコマースを見て買い物をするようになっている。販売業者も競争が厳しくなり、さまざまな工夫を凝らすようになっている。

一般的な手法は、思い切った価格のタイムセールだ。タイムセールをやることを告知しながら商品の紹介をすると、消費者はよく聞いてくれる。それから、破格の価格でタイムセールを行うと商品がよく売れる。タイムセール対象商品で利益が出なくても、他の商品まで買ってくれる。さらには購入をしてもらうことで、メールや通知などでプッシュ情報を送ることができるようになる。

最近、目立つようになっているのが、ライブ放送としても楽しめるライブコマースだ。しかし、そのうちのいくつかには、消費者を騙す罠が張られている。

 

人気の窯を直接開ける陶器のライブコマース

最近、人気になっているのが「開窯大事」と呼ばれるライブコマースだ。販売される商品は茶碗などの陶器だ。陶器の窯を開け、そこから陶器を出してきて、ライブコマースで見せながら販売をする。

この陶器は、円筒型のブロックを積み重ねた状態で焼かれている。これをひとつひとつ開けていくところをライブ中継をする。これがなかなかドラマチックなのだ。ひとつのブロックを開けると、美しい陶器が顔をだす。しかし、それが売り物になるかどうかはわからない。釉薬が流れて、ブロックとくっついてしまっていることが多いからだ。これを取ろうとすると、陶器が割れてしまったり、高台の部分が欠けたりしてしまう。当然ながら、このような商品は売り物にならず、廃棄されてしまう。

うまく、欠けがなく、売り物になる商品は10個に1個ぐらい。そういう商品が取れると、販売業者は水を入れて、ランプをかざし、陶器の美しさを見せて、300元、400元といった価格で販売をする。多くの人が、売り物になる陶器の数があまりにも少ないことに驚き、偶然にも欠けがない陶器が得られると、多少高くてもそれだけの価値があると思い込んでしまう。

▲ライブコマースで人気の開窯大事。窯からブロックを取り出し、1段目を開けると中から焼き上がった陶器が出てくる。しかし、欠けていたりして10個に1個ぐらいしか売り物にならない。

▲ブロックを開けると割れてしまっている。完全品が出てくることは少ない。それだけに貴重に感じる。

 

すべては仕込みの演出だった

しかし、これがトリックなのだ。そもそも、この陶器たちは、電気窯などで大量生産されたもので、販売価格は0.6元程度の安物なのだ。これをわざわざブロックの中に入れて、釉薬によく似た粘着剤を使って、あたかも窯の中で焼いたように見せている。多くの陶器は、割れたり、高台がブロックに接着をされて、失敗作にされるが、一定割合で接着をせず、売り物にする陶器を混ぜておく。

このようなものを用意しておいて、窯を開くライブコマースを行い、単なる安物をあたかも価値がある陶器であるかのように錯覚をさせて販売をしている。0.6元のものを400元で売るのだから、600個に1個売れる陶器が出れば元がとれることになる。

法律的にもこのような販売方法は問題はない。価格をいくらにするかは自由であり、司会は「この窯で焼いたもの」など、後で問題になるようなセリフは巧妙に避けている。消費者も安物であっても、価値があると思って大切にするのであれば、それはそれでいいことだ。そのため、開窯大事のライブコマースを見て、陶器を買って喜んでいる人がたくさんいる。

▲完全品が出てくると、非常に貴重に感じられ、紋様も素晴らしく感じられてしまう。

▲水を入れ、ペンライトを入れて、紋様を浮かび上がらせる。家宝にできるのではないかと思うほど素晴らしい陶器だと錯覚してしまう。実は電気窯で焼いて仕込まれた安物。

 

ヨードで汚してビタミンCで脱色

衣類洗剤などでもトリックが横行している。醤油などを衣類にかけ、商品の洗剤が溶かされた水につけると、あっという間に醤油のシミが取れるというものだ。これは古典的なトリックで、醤油の瓶に入っているのはヨードだ。色味は醤油によく似ている。洗剤が入っている洗面器の水にはあらかじめビタミンCが溶かされている。すると、ヨードとビタミンCは反応をし、ヨードは無色透明のヨウ化水素になる。これであたかも醤油のシミが取れたかのように見えるのだ。

 

安物の茶葉も、クズを取り除き、高級茶に見せかける

また、茶葉の販売などでは、安物を高級茶に見せることも普通に行われている。安物の茶は、扱いも雑であるため、茶葉が折れたり、千切れたりしているため、見ただけでもわかる。しかし、ライブコマース販売業者は、このような壊れた茶葉を丁寧に取り除き、再パッケージしてライブコマースで使う。司会がパッケージを開け「こんなきれいな茶葉ですよ!」と言われれば、高級茶であると錯覚してしまう人もいる。元々安価な茶葉に高い価格をつけ、それをタイムセールで元値程度で販売すると、多くの人がお買い得だと錯覚をしてしまう。

 

騙し、騙されも楽しむライブコマース

このようなライブコマースの騙しのテクニックは、消費者を騙すものであり、消費者保護の観点からは問題のある販売方法だが、意外に消費者も当局も寛容であるため、厳しい規制がかかるというような話は出てきていない。このような錯覚を誘う騙しのテクニックは、賢い消費者であればじゅうぶん見抜けるはずで、騙される方も悪いという意識がどこかにあるようだ。

最近、よく使われるようになっているネット用語が「智商税」だ。これはIQ税という意味で、「間の抜けた人は損をする」といった意味合いで使われる。ライブコマースはこのような業者側の騙しのテクニックも含めて楽しむコンテンツになってきている。このような騙しのライブコマースは、SNSなどですぐにカラクリが暴露される。それも知らずに買ってしまう人は、IQ税を取られることになるのだ。