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運転免許証もアプリに。電子運転免許証の施行から2年。2割の運転手が利用

中国の運転免許証のアプリ化が進んでいる。提示を求められた時に、紙の免許証ではなく、スマホアプリで提示ができるというものだ。しかし、施行して2年、誤った使い方をする人も増え、改善が進められていると電動車小行家が報じた。

 

約2割の人が使っているアプリ運転免許証

中国の運転免許証のアプリ化が進んでいる。2021年9月より、北京、長春、南寧など28都市で始まった運転免許のアプリ化=電子化は、12月には全国に広げられ、2022年4月時点で1.1億人が利用をしている。運転免許保有者が約5億人いるため、20%ほどの人がアプリ版運転免許証を使っていることになる。

この電子運転免許証を利用するには、交通局の公式アプリである「交管12123」アプリの中から申請をする。電子免許証申請のコーナーから申請をし、自分の顔を撮影すれば、24時間程度で発行される。

▲アプリ免許証は全国で施行して2年になる。現在、運転免許取得者の約2割が利用している。

 

アプリ免許証が解決した3つの問題

この電子免許証は3つの問題を解決した。

1)提示の利便性:警察官に運転免許証の提示を求められた時は、現物の運転免許証の代わりとなる。アプリを起動して開くだけでよく、免許証をどこにしまったか探す必要がない。

2)確認の利便性:警察官が免許証を確認するときは、これまでは専用端末に番号などの情報を手入力するか、免許証自体を撮影して情報を読み取り、センターに違反歴などを問合せする必要があった。しかし、電子免許証ではQRコードが表示されるため、これをスキャンすることで、警察官が必要とする情報を取得することができる。

3)書式の統一:免許証は各地方政府の交通局が発行をするため、地域によって書式が微妙に違っていた。運転手が他の地域に行って免許証を提示した場合、地元の警察官は確認に時間がかかることがあった。電子免許証では、全国で書式が統一をされたため、このような問題も解消される。

▲電子免許証のサンプル。アプリを開くと免許証情報が表示される。免停になるとQRコードが赤くなる(右)。警察官は専用端末でQRコードを読むだけで、違反歴などの照会ができる。

 

間違った使い方も広まっている

電子免許証の制度が始まって約2年、誤った使い方をしている人も見られるようになった。山西省太原市交通警察では、このような誤った使い方の中で、多いものを4つ挙げ、注意喚起を行った。

 

1位:スクリーンショットを使ってしまう

電子免許証を提示するには、「交管12123」アプリを開き、そこから電子免許証を選んで提示しなければならない。あるいは、電子免許証表示へのショートカットをあらかじめ設定しておく必要がある。

この操作が煩わしいからと、電子免許証のスクリーンショットを撮っておき、それを警察官に提示するという人が増えている。一部のSNSで、便利な方法として広まったからだ。しかし、QRコードは開いた時に生成をされる仕組みになっており、スクリーンショットの電子免許証は無効なものになる。太原市交通警察では、電子免許証表示のショートカットを設定しておくことを勧めている。これであれば、ワンタップで表示できるようになるからだ。

 

2位:QRコードが赤の状態では運転はできない

違反などが積み重なり、免停になると、電子免許証のQRコードは赤く表示される。この状態でも電子免許証は表示はできるが、免許証としては一時的に無効状態になっている。電子免許証が表示されるため、問題ないと勘違いをして運転してしまう人がいるが、発覚をした場合は違反となり処罰の対象となる。

 

3位:電子免許証も更新をしなければならない

電子免許証は、原本ではなく、あくまでも代用であり、原本は紙の免許証になる。紙の免許証は6年または10年で有効期間が切れ、更新をする必要がある。免許書を更新した場合は、電子免許証も再度申請し直す必要がある。この電子免許証の更新を忘れてしまう人が多い。

 

4位:紙の免許証も携帯をしなければならない

電子免許証があっても、原本の免許証が不要になるわけではないので、運転をする時は常に携帯しておかなければならない。特に問題になるのが交通事故を起こした時だ。交通事故の処理にあたる警察官は、まず当事者の免許証を押収する。身元確認や逃亡防止、運転の一時的な制限をするためだ。この押収をするのはもちろん、原本の紙の免許証ということになる。万が一、原本の免許証を携帯していないと、電子免許証があっても免許不携帯ということになる。

▲警察官に提示を求められた時も、アプリ免許証で代用することができる。原本の免許証はなくさない場所に大事にしまっておくことができる。

 

施行して2年、アプリ免許証の改善は続く

電子免許証そのものは施行から2年が経過をし、取得する人が増えているが、提示をする機会が多くないために、更新を忘れてしまったり、提示の仕方を忘れてしまっている人が見受けられる。交通警察では、より使いやすい電子免許証にするために、改善などに対する意見を広く募集している。