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ビリビリ配信者が続々と配信を停止。原因は収益性の低下。ビリビリ文化は消えてしまうのか

ビリビリの人気配信者が続々と配信停止を宣言する事態が起きている。理由は収益性の低下だ。特に、知識系動画など、企業タイアップ案件が取りづらい分野の配信者の配信停止が目立っている。ビリビリ文化が消えてしまうかもしれない事態になっていると国是直通車が報じた。

 

配信者の活動停止が続くビリビリ

中国の動画共有サイト「ビリビリ」が揺れている。人気の配信主が次々と配信を一時的に停止すると発表しているのだ。理由は収益低下だ。ビリビリは、視聴者が弾幕をつけられる動画共有サイトで、日本のニコニコ動画の影響を受け、中国のオタク層の聖地にもなっている。「Bサイト」という略称でも呼ばれ、続く配信主の配信休止にSNS「微博」(ウェイボー)では、「B站停更潮」(ビリビリ更新停止トレンド)という言葉が検索ランキングの上位に入っている。

▲ゲーム関連の動画配信をして人気だった靠瞼喫飯的大王。突然「動画の更新を停止します。縁があればまたお会いしましょう」という動画を配信し、ビリビリから去ることを宣言した。

 

ムービーの短時間化により長い動画は避けられる

ビリビリの配信主は、2つの方法で収益を図っている。ひとつは広告収入やビリビリからのインセンティブなど、動画の配信による収益だ。もうひとつは固定ファンを顧客として投げ銭や物販などのビジネスを行うことによる収益だ。

知識系動画を配信し、50万人のファンがいる「阿炭」が国是直通車の取材に応えた。阿炭によると、収益化に関しては楽観的な気持ちではいられないという。昨年からビリビリは再生数に対するインセンティブの調整を始め、多くの配信主の収益が低下をしているのは事実だという。

自動車やデジタルグッズ、美容などの分野では、企業が広告案件を依頼してくることが多いが、阿炭のような知識系分野では広告案件を依頼する企業は多くなく、こちらの収入もあてにはならない。

動画の販売、ライブ配信での投げ銭、物販などで収益を補う方法もあるが、それが可能なのは一部の大型配信主であって、阿炭の場合はそのようなビジネスを構築する時間と能力がなく、現実には難しいという。

また、阿炭はショートムービー「抖音」(ドウイン、中国版TikTok)の影響も大きかったという。ビリビリの動画は5分以上の長いものが多い。しかし、今では15秒のショートムービーがビリビリでも配信されるようになっている。すると、多くの人は手軽に見られるショートムービーを見てしまい、長い動画を避けるようになってきている。これにより全体の再生数が低下をしているという。

 

高年齢化が進むビリビリの配信主と視聴者

また、70万人のファンを獲得している科学系知識配信主「一只姜茶茶」は、ビリビリ利用者の年齢層が高くなっているとも言う。ビリビリはスタートして14年になり、当時20歳だった若者も34歳になっている。企業が広告予算を投じたいのは20歳代向けのコンテンツであることが多いため、配信主の多くが広告案件を獲得しづらくなっているという。

一只姜茶茶は、現在半年間の配信休止を決めている。理由は簡単で、配信をするためのチームを養うことができなくなったからだ。「動画を作成するために、2人のライターと2人のビデオ編集者を雇用しています。その報酬や社会保険料、オフィスの家賃を収益の中から負担しなければなりません。だいたい月に7万元(約140万円)かかります。科学系知識動画であるため、スタッフは大量の資料を読まなければなりません。原稿は5000字から1万字になります。作業量はほんとうに多いです。これを毎週2本動画を配信しています。やったことがない人にはこのたいへんさはなかなかわかっていただけないと思います」。

 

チームは無理でも個人は生き延びられる

長年ビリビリを見続け、評論をしている「561X」という視聴者は、別の意見を持っている。それは動画内容の革新さが失われているというものだ。例えば、今回配信休止を宣言した「靠瞼喫飯的大王」は、2015年に登場して、ゲーム分野で人気の配信主となったが、それから8年間、ビデオのスタイルがほとんど変わっていない。要するにマンネリになっていて、再生数は下降傾向にあった。

阿炭は言う。「セルフメディア業界はまだまだ模索段階にあり、今回の問題はごく些細なことにすぎないのかもしれません。今後、今人気となっているショートムービーでも同様の問題が起きることになるかもしれません。結局、重要なのは動画の内容なのです。今回、配信休止をしたのは多くがチームで動画制作を行なっている配信主たちです。一方、個人の配信主は生き延びられる。そこから革新的な動画が登場する可能性は残されています」。

▲ビリビリでは広告はバナー広告(右上)のみで、動画の間に入るインストリーム広告は認めていない。そのため、常に収益を上げることに苦労をしてきている。

 

視聴者の感覚も変わってきている

ビリビリは、創業時からの視聴者との約束で、バナー広告以外の広告を採用していない。動画再生中に突然挿入されるインストリーム広告などは、視聴体験を損なうからだ。特にアニメ番組の途中で、インストリーム広告が入ったりすれば、ビリビリの視聴者は大いに怒るだろう。しかし、配信主が依頼を受けて、挿入する場所を考慮したインストリーム広告なら許容されるのではないかという議論は以前から続いている。

また、多くの配信主が口にしたがらないが、コミュニティーの雰囲気が悪くなってきていることを指摘する配信主もいる。以前は広告案件のタイアップ動画を配信しても、「ご飯を食べさせてやれ!」(配信主が広告収入を得ることを許容し、からかう言葉)というコメントが多くついたが、現在では罵倒するような全否定のコメントがつき、炎上状態になることも増えている。

「広告を排除する」というのはオタクの聖地として素晴らしいポリシーであり、視聴体験を快適なものにするが、視聴者の中でそれが絶対正義のようになってしまっている。

合理的な方法で広告を増やし、配信主の持続的な収益化を考えるべき時期にきている。