お寺カフェがにわかにブームになっている。寺院の境内にカフェが設置されている。遊びすぎ、商業主義的だという批判もあるが、若者たちはカフェをきっかけに寺院に足を運び始めていると金錯刀が報じた。
にわかに人気となったお寺カフェ
スターバックスと瑞幸珈琲(ルイシン、Luckin Coffee)が地方都市への出店を始め、地方都市まで浸透をしていたケンタッキーフライドチキン(KFC)も9.9元のコーヒーの販売、さらには地方都市に特化した激安カフェ「幸運珈」(シンユインカー、ラッキーカップ)も拡大し、地方でのカフェ競争が激化をしている。
その中で、思わぬ人気を得ているのがお寺コーヒーだ。寺院が境内の施設やスペースを利用してカフェを始めるというもので、浙江省杭州市永福寺、北京市潭柘寺、上海市龍華寺、福建省南普陀寺、上海市玉仏寺、浙江省台州市龍興寺、アモイ市普陀寺など、各地の寺院に広がり、いずれも若者の人気スポットになっている。
スターバックスの霊隠寺店がきっかけに
寺院に関連した最初のカフェはスターバックスだった。杭州市霊隠寺店だが、観光地にもなっている霊隠寺店の門前町の中にはあるものの、境内の中にあるわけではなかった。この店舗は2022年4月に閉店をしてしまった。
この霊隠寺から100mほどしか離れていない隣のお寺「永福寺」は、境内の中にカフェ「慈杯」を開店した。入り口の慈杯という文字は、永福寺の月真大僧侶が揮毫したものになる。
また、コーヒーの名前も独特で、それぞれに禅の概念を表したものだという。
永福寺のカフェの人気に火がつく
慈杯のカップは仏教画のようなデザインになっており、春節にはおみくじつきのカップを採用するなど遊び心にも富んでいる。カップのカバーの裏にもおみくじがついているバージョンもあった。
慈杯は大人気のカフェとなり、お寺業界はカフェブームに走った。お寺が主体的にカフェをオープンすることもあれば、カフェの運営企業がお寺と交渉してカフェを開く権利を獲得することもある。
北京市郊外の潭柘寺は、晋代(265年-420年)に建立された非常に歴史がある古刹だ。故宮よりも歴史のある場所になる。ここにもカフェ「加福」がオープンした。さまざまな寺がカフェをオープンし、どこも人で賑わい、お寺カフェブームとも言える状況が生まれた。
批判はあるものの、仏の道にはかなっている
神聖な宗教施設であるのに遊びすぎたという批判もある。寺院がお金儲けに走っているという批判もある。杭州市の法喜寺では、釈迦三尊を萌え系イラストで図案化した布バッグを発売し、若者の間で人気となっている。これもふざけすぎだという批判もあった。
しかし、若者たちは慈杯のコーヒーを飲む目的で永福寺を訪れるようになり、コーヒーを飲むついでに参拝をしていく。それで仏教に興味を持つ人がいるのだから、仏の道にかなっているという人もいる。
不人気だった寺院も、若者の人気を獲得
北京市に雍和宮というチベット仏教寺院がある。北京観光では必ずと言って組み込まれるほどの観光スポットだが、地元の人はほとんど訪れない。観光のオフシーズンになると、平日は人影もまばらで、週末にようやく少し賑わう程度になっていた。
ところがこの雍和宮は、今では、若者が押し寄せる人気スポットになっている。お寺カフェなどで、仏教界側が若者との距離を縮めたことにより、撮影スポットとしてにわかに人気になった。春には桜、桃の花が咲き、秋には銀杏並木が境内を彩る。
さらにチベット寺院では、長く太いお線香を使ってお参りをする。これが日常を忘れることができ、日頃のストレスが抜けていくと評判にもなり、参拝には長い行列ができるようになっている。
カフェで若い世代に意識をされるようになり、撮影スポットとして人気となり人がくるようになり、参拝で心を整えられることに気がついてもらえる。そもそもがお寺は、秘仏のご開帳や縁日などで人を惹きつけ、仏教を広めてきたのだから、カフェを運営することぐらいは、まったくおかしなことではないという人もいる。お寺カフェブームにより、お寺と市民の距離感が変わり始めている。