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蘇州、上海で話題になる日本式コーヒー。日本式とは深煎り、ハンドドリップ、木造内装

カフェ競争が激化をしている上海では、さまざまな特徴を持ったカフェチェーンが登場してきているが、その中で「日本式深煎りコーヒー」をウリにするチェーンが上海市蘇州市に8店舗を展開し、人気になっていると咖門が報じた。

 

蘇州で人気となる日本式カフェ

人気になっている日本式カフェは「黒葉」(ヘイイエ)。店舗のスタイルや味が今までにはなかったものであることから、人気となり、毎月4000人ペースでオンライン会員を増やしている。

蘇州市の黒葉コーヒーは、十全街の中にある。ここは蘇州の古い街並みが残っている場所で、近年は、若い世代が洗練された飲食店やカフェを開くようになり、観光客だけでなく、地元の若者も集まってくるエリアだ。ここに黒葉コーヒーは、木目を活かし、すだれや風鈴という日本元素(日本要素)を取り込んだインテリアで人気となっている。ネットでは「十全街の小京都」と呼ばれている。

▲インテリアは自然木を基調にし、ドアも木造。静かな街並みを借景したインテリアになっている。この感覚が日本式だと感じられている。

 

ハンドドリップは日本のイメージ

味は、深煎りコーヒーのハンドドリップ。これがなぜ日本式なのか。欧米ではエスプレッソマシンを使ったエスプレッソコーヒーがはるかに多い。ところが、日本では、早い時期に喫茶店文化が広がったためにペーパードリップやサイフォンといったハンドドリップコーヒーが主流になっている。つまり、海外から見ると、ハンドドリップであるだけで「日本っぽい」ということになるのだ。

さらに、黒葉コーヒーでは、酸味を感じる豆を排除し、最初の口あたりでは苦味が感じられ、それから甘みを感じ、旨みが余韻となるという味づくりをしている。酸味が抑えられ、苦味が強いというのも、海外では「日本っぽい」と見られているようだ。

黒葉コーヒーの創業者である李正方氏は、この「日本式」の味が、予想以上に中国人にも合ったという。オープン時から人気となり、リピーターになってくれる客も多く、オンライン会員は月に4000人ペースで増え続けているという。

▲ハンドドリップは、コーヒーを淹れる姿がひとつのパフォーマンスになっている。ドリップすると、コーヒーの香りが店内に広がる。

 

20種類の豆を深煎り、ハンドドリップで

黒葉コーヒーは20種類以上の豆を用意し、来店客が選べるようになっている。焙煎はすべて深煎りで、ハンドドリップで提供される。エスプレッソやコーヒー以外の飲料も用意されているが、多くの来店客は深煎り、ハンドドリップという日式コーヒーを目当てにやってくる。このような日式コーヒーは、他店ではあまりなく、ニッチな存在であったことも黒葉コーヒーの人気の要因となっている。特にコーヒーの味にこだわりたい若い世代の心をつかんだ。

▲深煎り、ハンドドリップは、海外では日本のコーヒーのイメージになっている。

 

静かな街角にひっそりと佇む黒葉コーヒー

そして、十全街から始まった黒葉コーヒーは蘇州市上海市に店舗を展開し始めた。しかし、客流の多いショッピングセンターなどを選ばない点も、黒葉コーヒーのブランドイメージの構築に役立っている。

十全街と同じように、静かで洗練されて静かな街角の中にひっそりとある。そういう場所が選ばれている。

また、店舗の中にはコーヒーカップを展示した棚があり、その中から好きなコーヒーカップを選ぶことができる。こういうこだわりも「日本式」だと認識されているようだ。

▲磁器のコーヒーカップが陳列されていて、来店客は自分の好きなカップでコーヒーを飲むことができる。

 

カフェの多様性が生まれている中国の大都市

カフェ業界は競争が熾烈になってきているが、中国のコーヒー消費量は決して大きいわけではない。全体の量としてはまだまだ少なく、人口一人あたりの消費量では「その他」に分類されてしまうほど少ない。

それでもカフェが飽和状態に見えるのは、大都市に集中をしているからだ。スターバックスを始めとする中国のカフェは現在地方都市への展開を始めている。また、大都市部ではベトナムコーヒーやココナッツラテ、中国茶とコーヒーのミックス飲料など、新しいコーヒーの飲み方が模索されるようになっている。日式コーヒーもそのような新しいコーヒーの飲み方として注目をされるようになっている。

▲米国農務省による各国の2022年のコーヒー消費量。中国は大都市はコーヒー先進都市になっているが、全体の消費量はまだまだ少ない。単位:60kg千袋。