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既存スーパーがそろって減収減益の危険水域に。店頭販売だけではもはや生き残れない

各スーパーの2021Q1の財務報告書が出揃い、関係者に衝撃を与えている。そろいもそろって減収減益となり、わずかな黒字は維持しているものの危険水域に入り、もはや店頭販売だけに頼るビジネスモデルが通用しないことが明確になった。アリババは新小売スーパー「盒馬鮮生」のO2O基幹システムの外販を始めた。スーパーはこのようなO2Oシステムを導入して、業態を改革していくことが避けられなくなっていると電商在線が報じた。

 

既存スーパーが軒並み減収減益の危険水域

既存スーパーが軒並み苦境に立たされている。2021年Q1の財務報告書が出揃い、ほとんどのスーパーが売上、利益とも前年同時期から大きく減少していることが明らかになった。赤字になっているのは人人楽のみで、他のスーパーはぎりぎり黒字を維持したが、このまま手をこまねいていると、赤字転落は必至だ。

昨年同時期の2020Q1は、新型コロナの感染拡大が最も厳しい時期で、生活必需品を買いだめする人が多く、スーパーは軒並み好調だった。その反動はある。しかし、現在の不調の理由はそれだけでなく、構造的なものだ。

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▲既存スーパーの2021Q1の営業収入は、軒並み10%弱の減収となってしまった。比較対象になっている2020Q1はコロナ禍の影響で業績が好調だったこともあるが、逆リバウンドをしてしまった。スーパーはコロナ禍という好機を活かせていない。

 

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▲利益に関しては惨憺たる状況。赤字転落をしたのは、人人楽のみで、他社はぎりぎり黒字を維持したが、赤字転落への危険水域に入っている。

 

スーパー苦境のライバル1:社区団購

ひとつは、社区団購(シャーチートワンゴウ)の普及がある。社区団購は生鮮食料品や日用品をスマホで注文して、近隣の加盟店に取りにいくというのが基本。「前日予約注文、翌日配送、店舗受け取り」というビジネスモデルで、アリババ、テンセント、京東、拼多多、美団、滴滴といったテック企業がこぞって参入して、シェア争奪戦を展開している。

社区団購は、前日予約というのが大きなポイントになっている。スーパーなどでは販売量は販売を終えてみないとわからない。そのため、販売量を予測して発注をしなければならず、卸業者は、販売予測に基づいて商品を適正配分するという重要な役目を担っている。しかし、社区団購では前日予約制であるために、出荷前に販売量が確定するため、卸業者の存在が不要となる。これにより、流通コストが大幅に下げられ、低価格での販売が可能になる。

その価格に魅せられた消費者や、テック企業が激しいシェア争奪戦を展開しているため、過剰な優待施策が行われているため、スーパーの顧客が奪われてしまった。

 

スーパー苦境のライバル2:新小売

しかし、スーパー苦境の原因は社区団購だけではない。大潤発の林小海CEOは、電商在線の取材に応えた。「この5年間、大潤発の利用客数は毎年5%ずつ減少しています。顧客がスマホで注文するということに慣れてきたからです。新型コロナの感染拡大で、その傾向は強まり、社区団購の登場によりさらに強まりました。このオンライン注文の流れはもはや不可逆なものになっていると認識しています」。

既存スーパーは手をこまねいていたわけではない。2016年から始まった新小売、生鮮EC、社区団購に対抗をするため、近隣に宅配をする到家サービスを始めているところが多い。スマホで注文すると、30分から2時間程度で宅配をするというものだ。

 

スーパー苦境の理由1:宅配サービスを活用できない

しかし、これがなかなかうまくいかない。スーパーは到家サービスを始めたと言っても、新小売スーパーのように「オンライン売上が60%以上」という状態にはなれない。あくまでも店舗が主体であって、到家サービスは付加サービスという位置付けだ。

このため、自前の配送チームを構築することができない。配送件数が多くないのに、配送スタッフを待機させることはできないからだ。そのため、美団やウーラマなどの既存の即時配送サービスに委託をすることになるが、当然ながら手数料は高くつくことになる。到家サービスでは、多少の配送料を販売価格に乗せるもの、高額にすることはできない。スーパーの到家サービスの多くは、配送すれば配送するほど赤字が膨らむ構造になっていると思われる。

これにより、スーパー内部でも、到家サービスを拡大するモチベーションが生まれないという悪いスパイラルに陥ってしまっている。

 

スーパー苦境の理由2:顧客に対する洞察不足

さらに、スーパーは顧客に対する洞察が不足をしている。スーパーの多くがオンライン会員制度を持っていないか、持っていたとしても、ただポイントなどをつけるためにものになっており、プロフィールや購入履歴から消費者特性を分析し、個別にアプローチをしていくということができているスーパーは皆無に近い。

これまで、スーパーは陳列棚しか見てこなかった。陳列棚に商品を並べると、匿名のお客がやってきて、商品が消えていく。早く消える商品がいい商品で、いつまでも売れ残る商品は悪い商品だ。陳列棚が空いたらそこに商品を補充することだけを考え、その向こうにいる顧客の顔を見ようとしてこなかった。

これがスーパーの苦境の根本的な原因だ。消費者から見ると、スーパーに行くのは食料品を買う必要があるからで、スーパー自身に魅力があるからではない。だとしたら、行き先は社区団購の加盟店でもいいし、新小売スーパーでもいい。若い世代は、スマホの中で注文し、宅配してもらうという考える。

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▲584都市1037店舗を展開する永輝は、スーパーの優等生だった。都市型スーパーとして固定客をつかみ、新小売や無人配送への研究開発も積極的に行なっている。その永輝までが-98.51という大幅な減益となった。

 

アリババがフーマフレッシュの基幹システムを外販

アリババは「象」(アオシャン、Aelophy、https://www.aelophy.com)というクラウドシステムの販売を始めた。「翼を広げた象」という意味のネーミングだ。小売業向けのO2O基幹システムで、在庫管理から宅配配送管理などにも対応する。

アリババのスーパー業態事業部の責任者で、象CEOの周天牧によると、このシステムは、新小売スーパー「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)、スーパー「大潤発」などで実際に使い、5年間をかけて改善を積み重ねてきた。最大の特徴は、会員顧客の管理と分析機能が備わっていることだ。顧客の粘性(リピート率)、アクティブ度などが分析をでき、特定の顧客に電子クーポンを配布するなど個別のマーケティングが可能になる。

 

O2O基幹システムの競争が始まる

同様の小売業向けのO2O基幹システムは、京東到家、ウーラマ、美団、淘鮮達の4つが有力で、小規模なものまで入れると8000種類以上が販売されている。その中で、アリババの象は、フーマフレッシュの実績という絶対の自信を持ってこの領域に参入した。大潤発、フーマフレッシュという現場で5年間使い、実践で鍛えてきた。

さらに、2020年半ばから、邯鄲陽光、浙江人本、旺中旺、四川吉選、台州華聯など地域チェーンスーパーでの試験運用を行ってきた。アリババによると、試験運用中のスーパーでは、平均して、すでにオンライン注文数は25%増え、5.5億元(約95億円)の売り上げ増になったという。すでに60の小売チェーンとの契約が決まり、店舗数換算で7500店に導入されているという。

スーパーは、もはや「店頭売上だけ」という旧来型のビジネスモデルでは存続そのものが危うくなっている。かといって、自力でO2Oシステムを構築するのは手に余る。このようないずれかのO2Oシステムを採用し、オンラインに進出していくことが必須になっている。テック企業の間では、このようなO2Oシステムの開発、販売の競争が激化することになる。