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アリババがついに社区団購に本格参入。フーマNBの商品ラインナップは既存社区団購の10倍

フーマフレッシュを運営するアリババが、ついに社区団購に本格参入をした。フーマフレッシュのインフラを活かした「フーマNB」だ。参入時期では他のテック企業に遅れをとったものの、豊富な商品ラインナップと短時間配送で追い上げを図っている。社区団購の業界地図が大きく書き換えられることになる可能性が高いと電商報が報じた。

 

アリババがついに本格参入「フーマNB」

アリババがついに社区団購(シャーチートワンゴウ)に本格進出をした。社区団購は「前日注文、翌日配送、店舗受け取り」を基本にした生鮮食料販売ビジネス。

近隣の個人商店が加盟店となり、近所のお店に取りにいけばよく、団長(加盟店店長)と顔見知りであるため、さまざまな融通を利かせてくれる点が受け、農村や地方都市から広まっていった。生活協同組合と同じコンセプトで、地方の個人商店の品揃えの少なさを補うことが主眼だった。

この社区団購がコロナ禍により注目をされ、テック企業が続々参入をしている。「多多買菜」(拼多多)、「美団優選」(美団)、「橙心優選」(滴滴)の3社が有力で「新三団」と呼ばれる。以前から存在した旧三団=興盛優選、十薈団、同程生活のうち、すでに同程生活が破綻をするなど、業界の激しい競争による整理も始まっている。

そこに、新小売スーパー「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)を擁するアリババがいよいよ参入してきた。業界再編が一気に進むのではないかと見られている。

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▲フーマブランドの社区団購「盒馬隣里」(フーマNB)。NBとはNeighbor BusinessともNeighbor & Burbsの略であるとも言われる。

 

すでに350店舗を展開する「フーマNB」

アリババは2021年5月から、内部で「NBプロジェクト」として、この社区団購の準備を始めていた。NBとはNeighbor Businessの略で、近隣ビジネスの意味だ。そのため、アリババに近い人の間では、このプロジェクトが社区団購であるという想像はついていた。

そのプロジェクトが「盒馬隣里」(フーマNB)で、開始時にすでに350店舗を展開している。上海、北京ではすでに100店舗を超えている。

ただし、他の社区団購とは、フーマフレッシュと連携をしているという点が大きな違いだ。都市の中心分は30分配送のフーマフレッシュで、郊外は翌日受け取りのフーマNBでカバーをするという戦略だ。

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▲北京のフーマNBの配置。市の中心部は新小売スーパー「フーマフレッシュ」でカバーをし、周辺部分を「フーマNB」でカバーするという戦略のようだ。

 

生鮮ECの5倍、社区団購の10倍の商品ライナップを実現

フーマNBには、他の社区団購よりも優れている点が2つある。社区団購の最大の利点は、前日注文であるために、出荷時には販売数が確定をしているという点だ。一般の店舗に配送をするには、需要予測をして、欠品も起こらず、売れ残りも出ないようにしなければならない。それに比べて、社区団購はあらかじめ販売数が確定をしているため、理屈上は欠品も売れ残りも出ずに配送計画を立てることができる。

しかし、それでも生産地から消費地まで翌日配送をするのは簡単ではなく、各社区団購とも商品種類(SKU=Stock Keeping Unit)を抑え、実現をしている。フーマNBではこのSKUを大幅に拡大をして、2万SKUの商品が翌日受け取りできるようになっている。

新三団のSKUは1万SKUに到達しておらず、今年になって美団優選が1000SKUから2000SKUに拡大したことを発表したほどだ。

この2万SKUは、生鮮ECをも凌駕している。生鮮ECの「叮買菜」(ディンドン)は1万2500SKU、「毎日優鮮」(メイリー、ミスフレッシュ)では4300SKU、翌日配送品で2万SKUに対応をしている。

社区団購を超えて、生鮮ECに対しても競争力のあるスペックになっている。

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▲すでに上海、北京を中心に350店舗を展開している。

 

配送時間を短縮し、朝昼食にも対応

また、一般の社区団購は、前日夜12時までに注文をすれば、翌日午後4時以降店舗受け取りが可能になるが、フーマNBの場合は、翌日朝8時以降受け取りが可能になる。一般の社区団購は、夕食の食材を買うのが基本になるが、フーマNBは昼食はもちろん、場合によっては朝食の食材にも間に合う。フーマフレッシュで鍛え上げられた物流配送網をうまく利用しているのだと思われる。

これにより、客単価が大きく違っている。新三団の平均客単価は10元程度と言われているが、フーマNBの場合は30元を超えているという。

アリババが社区団購に本格参入をするのは、他のテック企業に遅れをとったが、遅れた分、他の社区団購を凌駕するものとなっている。今後、社区団購の競争が次の段階に進むのは必至だと思われる。