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郵便局がカフェになる。50万カ所の拠点をもつ中国郵政がポストコーヒーでカフェに参入

2022年2月17日、中国の郵便事業を担う中国郵政が、アモイ市の国貿ビルに「郵局珈琲」(ポストコーヒー)を開店した。中国郵政によると、郵便局など関連施設の多角化の試みのひとつであるという。全国に50万カ所の拠点をもつ郵便局がカフェを始めることで、一気に中国最大のカフェチェーンが出現する可能性もあると封面新聞が報じた。

 

50万カ所の拠点をもつ郵便局

中国も郵便事業は小包(宅配便)を除いて、通常の郵便事業は減少の一途にある。それでいて、全国に9000カ所の仕分けセンター、5.4万カ所の営業支局、42万カ所の郵便業務拠点という大所帯になっている。当然経営は厳しいが、このような資産を売却することはできない。小包事業のサービスが低下をしてしまうからだ。

中国郵政は、元々は国営企業だが、現在は中央企業に分類される。これは国務院国有資産監督管理委員会が所有する企業のことで、エネルギーやインフラ関連の元国営企業97社ある。民間の株式会社の仕組みを取り入れ、国有企業でありながら、投資や事業展開をしやすくしたものだ。

そのため、中国郵政は、業務拠点で、郵便事業とは異なるビジネスを展開をさまざま行なってきた。雑誌や飲料を売るキヨスク化なども行われている。今回のポストコーヒーもその一環であるという。

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▲アモイ市に開店したポストコーヒー1号店。元々はアモイ市国貿郵便支局だったが、郵便局としての機能も維持される。

 

郵便局からの転換ではなく、郵便局との併設

しかし、全国で50万カ所近い拠点をもつ中国郵政であるだけに、うまくいけばあっという間に中国最大のカフェチェーンが出現するのではないかと話題になっている。現在、最も店舗数の多いカフェチェーンは、瑞幸珈琲(ラッキンコーヒー)の5500店舗で、その次がスターバックスの5400店舗となっている。中国郵政がすべての営業拠点でカフェ事業を行うことはないにしても、数字だけでは100倍の資産を持っている。

このアモイの1号店も、元々はアモイ市国貿郵便支局だった。面白いのは、カフェに転換をしたのではなく、従来通りの郵便事業も行なっていることだ。

扱っている飲料はコーヒーだけでなく、ミルクティーなども用意され、カフェとしての方向性はこれから探っていく段階だという。

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▲ポストコーヒーのミニプログラムのメニュー。モバイルオーダー、デリバリーにも対応している。雲南産のコーヒー豆とピーナツバターを使った「好事花生」がイチオシドリンク。ラテアートには中国郵政のロゴが描かれる。

 

Z世代から中国郵政公式グッズに注目が集まる

また、若い世代から注目されているのが中国郵政グッズだ。中国郵政のコーポレートカラーであるグリーンを使ったエコバッグ、ノート、ペンなどの公式グッズで、さらには郵便局員のフィギュアなども盲盒(マンフー、ブランドボックス=箱を開けるまでどれが入っているかわからないシリーズフィギュア)として発売され、注目が集まっている。

すでにポストコーヒーのミニプログラムが公開されており、モバイルオーダーとデリバリーに対応をしている。中国郵政は今後の展開についてはコメントをしていないが、北京、上海などの主要な一線都市、二線都市に展開するのではないかと見られている。

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▲玩具系の公式グッズが若い世代から注目を浴びている。公式フィギュアはブラインドボックス(開けてみるまでどれが入っているかわからない)として発売されている。

 

「郵便も出せるカフェ」になる可能性

中国郵政がドリンク事業に進出をしたのはポストコーヒーが初めてではない。2021年6月には、福建省でミルクティースタンド「郵的茶」(ポストオキシゲンオブティー)を開店している。

運営をしているのは福建郵的茶餐飲管理だが、この会社の51%の株を保有するのは中国郵政の子会社で、現在福建省にこのミルクティースタンドを展開中だ。

郵便局をカフェやミルクティースタンドに転換をするのではなく、郵便事業を温存したたまカフェ事業を行うというのがポイントだ。郵便事業そのものは衰退をしているため、スペースもスタッフも多くは必要としていない。その余ったリソースをカフェに転用する。

営業拠点が膨大であるため、一気に拡大をする可能性もあると、カフェ業界は揺れている。数年で、「コーヒーも飲める郵便局」ではなく「郵便も出せるカフェ」になっているかもしれない。

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▲中国郵政が飲料スタンドに参入をした郵氧的茶。郵便局の転換ではなく、新店による展開。