中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

ソーシャルEC「拼多多」がアグリテック(農業テクノロジー)を積極支援をする理由

2021年5月に開催された世界知能大会の中で、第1回中国農業ロボットイノベーションコンペが開催され、20の製品が入賞した。このコンペにはソーシャルEC「拼多多」が支援をしている。拼多多は、以前からアグリテックを積極的に支援をしており、それにより自社のビジネスを拡大しようとしていると今日新農人が報じた。

 

初めて開催された農業テクノロジーコンペ

2021年5月20日から23日まで、天津市で第5回世界知能大会が開催された。その中で、スマート農業サミットフォーラムが開催され、農業関係のロボットやスマートシステムの展示が行われた。フォーラムは、この活動を拡大し、初めて「第1回中国農業ロボットイノベーションコンペ」を開催した。

このコンペには、国内の大学、研究所、テック企業などが195の製品を出品し、中国工程院、中国科学院などの研究者からなる審査員が20の製品を選び、最終審査を行い、一等賞などを選出した。

f:id:tamakino:20210701110525j:plain

▲南京農業大学のチームが出品したキノコとりロボット。画像解析でキノコを認識し、カサの部分を崩さないように収穫をする。

 

画像解析により果柄の部分を摘みとるイチゴ収穫ロボット

第1回の一等賞に選出されたのは、中国農業大学のチームが開発した「採摘童」だった。これは畝仕立てで栽培されたイチゴを摘み取るロボットだ。

イチゴは非常に傷つきやすい果物で、ロボットアームや道具で実に触れただけで傷が入ってしまう。そのため、摘み取りは人間の手作業でしか行えなかった。画像解析により、果実と果柄を認識し、果柄の部分をつまみカットすることで、果実を傷つけずに収穫できるというもの。

f:id:tamakino:20210701110532p:plain

▲果柄の部分を画像解析で認識し、果実を傷つけずに収穫をするイチゴ収穫ロボット。中国農業大学のチームが開発。

 

トマト栽培の全プロセスを自動化するシステム

もうひとつの一等賞が、北京農業スマート設備技術センターが開発したトマト栽培システム。複数のロボットを組み合わせ、トマト栽培のほとんどの過程を自動化する。作付けから農薬散布、巡回、授粉、摘み取りなどを行う。すでに、このシステムは、山東省の寿光スマート農業テクノロジーパークで運用が行われている。

特に運輸ロボットは、自律走行の機能が備えられ、器具などが置かれている栽培ハウスという特殊な環境の中で、障害物を避けながら、自動でルートを算出し、農産物の運搬を行う。自動で充電も行う。この運搬ロボットだけでも、農家の大きな助けになると、注目が集まっている。

f:id:tamakino:20210701110537p:plain

▲北京農業スマート設備研究センターが出品したトマト栽培の全自動化システム。複数のロボットを組み合わせて、作付けから農薬散布、巡回、授粉、摘み取り、出荷までを行う。すでに、山東省の寿光スマート農業テクノロジーパークで運用が行われている。

 

アグリテックに注目をするソーシャルEC「拼多多」

このコンペに参加しているのは、大学や研究所などの非営利機関ばかりだが、その中で、ソーシャルEC「拼多多」(ピンドードー)が民間企業としては唯一協賛をしている。

拼多多は、中国の多くのテック企業が利益を追求する狩猟的であるのに対し、地方の中小企業や農家を育てる農業的な手法をとっている。ビジネス競争力に乏しく、販売を拡大できない地方の中小メーカーや農家の生産物を扱い、SNSとグループ購入という仕組みで、プロモーションや宣伝の負担を減らすことで、低価格で大量に販売することを可能にしている。

また、拼多多は積極的に、農産物生産者に対し支援を行い、より低コストで高品質の製品を生産できるように指導も行っている。これにより、拼多多はさらに低価格で高品質の製品を販売できるようになり、拼多多のビジネスの拡大にもつながる。

2020年には拼多多独自に「2020多多農研科技大賞」を始めていた。

また、拼多多は農業分野の国内外の研究機関との共同開発、協賛なども行なっている。農業のイノベーションは、拼多多を中心に展開していくことになるかもしれない。

拼多多は家電や電子製品の製造者に対しても、積極的に支援をしている。これも拼多多で扱う製品の品質向上を目指したものだ。拼多多は、自社で扱う商品の生産者を育てようとしている。その意味では、拼多多は農業的なECの運営を行っている。

f:id:tamakino:20210701110528j:plain

▲ソーシャルEC「拼多多」が、このコンペに協賛をしている。農産物をECの主力商品のひとつとしている拼多多は、アグリテックに注目をしている。

 

f:id:tamakino:20210701110542j:plain

▲拼多多は独自でも「多多農研科技大賞」を開催している。拼多多では、農業に限らず、製造者、生産者に品質向上の施策を積極的に行い、商品を提供してくれるサプライヤーの質の向上を図っている。